~Notification~ 脅迫
脅迫とはひとえに脅えた者の武器にすぎない。
──レオナルド・ダ・ヴィンチ
今から丁度200年前。
母なる地球は
果たして今回は、どうなるだろうか。ひょっとして。また、滅びるのだろうか。
少なくとも『今は』まだ、わからない。
2298年 12月25日 AM09:29。
台湾海峡
旗艦、大和型戦艦「信濃」の
かりかりかり。かりかりかり。ぎちっ。
薄暗いその部屋にて噛む音が響く。犠牲になるは音を立てる主の、爪。
人によっては不愉快な音であろうが、詰めているオペレーターの中にその行為を咎める者は、いない。
皆わかっている。
これは
「
「残念ながら、
「そう」
「その、
「大丈夫よ
その話す口は重い。現在の
決して少なくはない。だが、それでも命の天秤は──圧倒的に傾く。
そして決断できるのは、決断することが、彼女の役目。
「
「了解しました」
指令が伝えられるや否や
「両舷微速、前進せよ!」
艦橋から艦長であるロマノフ・ユーリィの、まだあどけない少年の声がスピーカーを通じて流れ出た。
かくして
30分後。
信濃は
艦の周囲を映すディスプレイには己が過去よりランダムに召喚した多種多様な種類の船が映る。一見するとある種の頼もしさ──特に見た目映える戦艦などは──を感じてしまうが、
──仮にジーノチカが見せてくれたNouddxenzsのような化け物が「遷移計劃」の途中で襲い掛かってきたとして、果たして撃退できるかしら。
士気に関わるから言えないけど。普通に無理ね。遥かに洗練された旧時代の軍すら
でも、それでも……
改めて決意する
あの日の夜。神国から救出したごく僅かの面々は皆心身共に虚脱状態にあった中、ティマだけは違った。普段からは想像もできないほどの力を出して、泣き、叫び、支離滅裂を唱え、暴れて。危うく魔法を行使しようとまでした。幸い、
以降の彼女の容態は大半がこの様に呆けているか、もしくは唐突に暴れるか。その時はいつも己の体を用いて慰めて、鎮める。というプロセスが始まってもう2ヶ月。
これまではどうにか何事もなかったが、これからの長い旅路にていつも成功するとは限らない。もし、仮に彼女の怒りを鎮められなかったら。
その時こそ
誤解を恐れずに言うならば今の状況は、真横にいつ爆発するかわからない時限爆弾を置いているようなもの。
だが
──あの時、ティマ達は一体何を見たのかしら。ティマは当然としても、
彼らの記憶が錯乱しているのがその証拠。まともに思い出すと精神が壊れるから、本能的に封印しているんだわ。
風の噂によると
無論彼女とてヒロシの死を悲しんでいる。が、立場が言うのだ。公に感情を露出することは許されない、と。
そして森羅万象を己の信念を成すために骨の髄まで利用しつくすのが政治家というものである。
前途多難しかない一方で、影ある所に光ありというべきか。ほほえましい光景もほんの僅かだが、ある。
目の向きを転じると、
「つまりだな、オレが思うに女というのは……を…………するとイチコロだぜ!」
「ほう、ほうなるほど! 流石は
察するにデートか何かの相談だろうか。ハッキリ言ってどこかズレている気もするけど。こんな他愛もないやり取りが、そして笑顔が、素晴らしいものに感じる。
「で、相手の好みは? そこが肝心なところだぜ」
「そうですな、確か……」
──
だから私には彼らも分け隔てなく守り、安全な地へと運ぶ義務がある。それがこの国の
その時である。
警報音が、鳴り響いた。
「っ、何か!」
「報告します、
「
「何ですって!?」
「えっ、どうして……」
「どうしたの」
「一部の機器が復活しました、正常に動作……しています」
「具体的には?」
「外のカメラとごく一部の通信回線、です」
さらに通信が割り込む。
「信濃に緊急報告、
正面のモニターがブルースクリーンから意味のある映像に切り替わる。無人ドローンによって撮影されているのは、1隻の船であった。
のっぺりとした船体に、ピラミッド型の構造物が1つ。その色は無機質な、黒。
その奇怪な見た目はある単語を連想させた。
「何で、ここに……?」
こちらは第四帝国所属の黒船である。
・そちらに
その
健全な
もしこの通知を受け入れない場合、
もう一度だけ繰り返す。
こちらは第四帝国所属の……
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