第5章:2298年 10月26~29日

資料⑤

ファイル名:異形変異個体() 個体名「ヒロシ」の生態考察

作成日時 :2301年、6月9日 17:56:31

作成者  :こよみ中佐

提出先  :中央大藩国ちゅうおうだいはんこく真理省しんりしょう所属 「王の頭脳」パラケルスス研究主任

機密レベル:4、一部5(最高機密。大王ヤズデギルド4世及びごく一部の側近のみ閲覧可。例えば私とかな! byパラケルスス)


 以下の記録は2298年10月26日、12時より神国日本の京都御所、清涼殿せいりょうでん内極秘会議室「裏鬼門うらきもん」にて開催された会話の一部を私の記憶を基に再現したものである。

 


「これまでの戦闘記録と25日に送られてきた『曲直瀬まなせレポート』。これらを検証した結果……結論から言うとヒロシの能力は『既存のあらゆる生物種の力をカスタマイズした上で引き出すこと』ではないかと思われます。今のところその数がどのくらいなのか、そもそも上限があるのか、などはまだ不明ですが」

「それって強いのか? 私の『念力』の方がかなり使い勝手がいいと思うのだけど」

「うん。普通はそう考えるよね。でもヒロシの場合、組み合わせができる可能性がある、ということが何よりの強みだと俺は考えてる」

「? 単に力が強くなるとか、水の中で呼吸できるようになるとか、そうゆうことでしょ? 組み合わせたって強くなるとは思えないんだけど」

「まあ、麻里まりのその気持ちもわかる。だが……を甘く見ない方がいい。例えばこのを見てくれ」


~記憶映像⑤「金浦きんぽ要塞防衛戦」を閲覧中~ 


「この場面で<停止>っと。さてこの女がグズグズに溶解したの、全員確認したな?」

「うへぇ。中々グロいだよねー」

「確かにな。幸いにもこの件は翠玉国皇帝陛下翡紅がある程度を見抜いてくださってな。おかげでヒロシの能力について確証を得られた」

「といいますと?」

「チョウセンアサガオ、マンチニール、カエンタケ。これらの植物に含まれる毒をブレンドしたもの。これで彼女に幻覚を見せ、抵抗させなくした上で毒素を注入。体内に激しい炎症を起こさせ、体のあちこちを急速に壊死させた。それを外から見るとあたかも溶解したように見える、というわけだ」

「………………」

「次はこの記憶映像だ」


~記憶映像①「桜宮さくらみや様暗殺未遂事件」を閲覧中~ 


「この場面で<停止>っと。ここ、の表面を見てくれ。ヒロシが噛みついている箇所の色が急速に変化しているだろ。そしてこれを機に急速に弱っていって──最終的にヒロシがした。全く、鮮烈なデビュー戦だよ」

「ええ。私も、ナタリヤもこの出来事はよく覚えています。なにせ目の前で起きたのですから。天野さん、これも何か生物の力、特性によるものなのですか? とは、とても思えませんが……?」

「ご明察の通りです桜宮様。と言いたかったのですが、存在するのです。金属を食べる生物は」

「そうなのですか!?」

「ええ。私も京都府立図書館跡に残された僅かな資料を紐解き、ようやく見つけました。恐らく好気性こうきせい微生物の鉄酸化細菌の生態を利用したものでしょう。正確には彼らの多様な代謝たいしゃ反応によって金属イオンの溶出ようしゅつ、電子の流れを変化させ腐食を促進する現象、通称を意図的に引き起こした。なので厳密には食べているわけではないのですが」

「そのような生物もいるのですね……。まさか、先のおっしゃった『既存のあらゆる生物種の力をカスタマイズした上で引き出すこと』というのは」

「はい。もうお判りでしょう。単に力が強いとか、空を飛べるとか、水の中で呼吸ができるとか──。例えばボツリヌスという名の菌は『ボツリヌストキシン』という毒素を生み出します。この毒素は世界有数の猛毒でして、仮にですよ。ヒロシがこれを0.1グラムでも作れば、我々神国日本人を皆殺しにできるでしょう。極めて短時間のうちに」

「そ、そんなこと、絶対にひーくんはしないよ!」

七癒なないさん、もちろんそれは私もそう思います。ですが今の話を聞くとつい、こう考えてしまうのです。彼が味方で良かったと。こんなこと言うのは、とても礼を欠くとわかってはいるのですが……怖いです。恐ろしいのです。その『能力』が、万が一にも我々に対して使われたらと考えると」

「ぶっちゃけウチも同じ考えだよ」

「ぼつりぬす? のくだりを考えると、正直言ってとなり得るのでは?」

「私達はとんんでもない奴を持ち帰ってきたんだな……」

「私は『千里眼』で初めてその雄姿を見た時、彼こそが我々の救世主である! と感じましたがねぇ」

「なあ、正直な話、いいか? ヒロシってなのか? いやさ、伊吹山の戦いの時あいつを戦場付近まで連れて行ったの、俺なんだけどさ。見ちゃったんだよ。戦場のすぐそばまで来たとき、何の前触れもなく突然起き上がってさ。その時、目が合ったんだけどよぉ、こう思ったんだ。『ナニカが無理やり人の皮をかぶっているだけなんじゃないか』ってな」

〈わ、私は……その……、だと思います。根はいい子のはずです。ちょっと不気味なところもあるけど、怖がる必要なんて、ないです!〉






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1.つまり僕の能力の上位互換、ってこと? 自信なくしちゃうなぁ 

  アーサー

2.1>> それいったらアタシもそうじゃないですかぁ。というか上位互換なんてレベルじゃない気が(汗)あ! ひょっとして先輩の無敗神話も崩れちゃいます?              

  ハルスネィ・リーパー

3.2>>いや、コイツは人間じゃないから、俺の専門外。ノーカンだノーカン。

  ガイアン・アブスパール

4.ふぇぇ……師匠でも勝てないなんて。

  アルカマ

5.オレもいちど、ガチでりあってみたかったなぁ。そーすればいろいろとと楽しいおもい出になったのに。

  呂玲ロィレン

6.5>>そんなことより呂玲ちゃんはもっとパソコンの使い方を覚えるべきだね。変換、出来てないよ?

  アーサー

7.6>>e!?  ん? なんでちがうもじが出てたんだ? あーもうぜんっぜんわっかんねぇ! もっとわかりやすくつくれよ! この(以下は規定に反した文字群が確認されたので削除されました)

  呂玲

8.しかし、ヒロシ殿のことは……本当に残念に思います。

  アヴラル・マズダ

9.一度ワレも手合わせしたかったものだ。戦闘バカの呂玲や赤影せきげとは違うぞ。単純な興味だこれは。

  ジェルギオス

10.9>>まーた超武闘派文官が色気出してる。序列2位が文官って絶対間違っているだろ。最高判事なんて辞めてプシィティグハーン大王直属軍団にでも配置換えするべきだろ。

  ガイアン・アブスパール

11.10>>そーだそーだ! って誰が戦闘バカだコラ!(このコメントはマズダが入力しております)

  呂玲

12.10>>激しく☆同意だね!

  アーサー

13.あわわわ、み、皆さんこれ以上ジェルギオスご主人様を茶化さないでください! ボクの後ろで凄いオーラ出してめちゃめちゃキレ……あ。「1位の座をかけて再び勝負だ!」って言いながら壁突き破って飛んでいっちゃいました……また補修しなきゃ。

  アルカマ

14.さぁ~てと、任務に行ってくるかぁ。あ~忙しくてたいへんだなーつらいなー

  ガイアン・アブスパール

15.9>>なんかさらりとあたくしの悪口も書き込まれているんだが。

  赤影

16.何!? あの野郎が死んだ!? 嘘だろおい。せっかくこの俺が倒すって決めた相手なのによぉ!

  匿名希望

17.16>>なんということを! ヒロシは我輩の永遠の好敵手ですぞ! 横取りはいけませんなぁ!

  アスラ

18.16、17>>あの、済みませんが2人共。この国に所属する以上、仮に再び会うとしたなら味方同士ですよ? なに内ゲバしようとしているんですか。

  アセビ

19.16>>それ以前にwなんで「匿名希望」なのさ超ウケるwバレバレだよ。

  ブレイン

20.19>>うるせぇぞコラ!

  匿名希望(エージェント416、ですこの人は アセビ)

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