揺蕩ウ箱ノ中ニイル猫ノ短編集 その壱。

閉ジテイタ箱(改訂前)。

イレブン・ディメンション

やぁ。まぁ、はじめまして。

どうどう、落ち着いて、突然わけわかんない奴が出たからと言ってブラバしないで!


多分初めまして、だよね?

なら『僕』のことは置いておいて、解説を。


これからのお話は暫く「閉じられた箱」のお話なんだ。

だから、往々にして間違いがある。


「空いた箱」の時を楽しみにしていてくれたまえ。

ふふふ。







 この世界はすべて舞台

 されば人間悉く役者に過ぎぬ。

 世間という舞台の袖を忙しく往来し

 唯各々の役割を演じているだけに過ぎぬ。

 ──『お気に召すまま』 ウィリアム・シェイクスピア






 …………困ったなぁ。

 どうやって善玉と悪玉を見分ければいいんだろう?

 は途方に暮れながら付近のガラクタに腰を下ろした。


 時は2298年、11月2日。


 その場所はかつてこの列島に存在した国家で、初めての公立公開図書閲覧施設であった。最もその情報はであった。

 度重なる戦火により施設の殆どが無惨にも焼け落ち、倒壊し、存在したはずの貴重な資料の殆どが朽ちている。

 彼が今座っているもそういったものの成れの果てが積み重なっているだけであった。


 彼は手慰みにその中からまだ読めそうなものを6mほどの片腕でもって取り出す。

その手つきは奇妙ではあるが洗練されたものであった。

 その本は非常に分厚く、それなりに重そうだが彼はなんとも思わない所作で自信が羽織る黄金色の長衣トガの上に置いた。

 透き通るような、ではなく実際に透き通っている空色の片手でもってペラペラとページをめくる。

 すると、彼の目はある単語とその意味についての文章を捉えた。

 



アンケート【enquête フランス】

(調査の意)調査のため多くの人に一定の様式で行う問合せ。意見調査。また、その調査に対する回答。「―をとる」




 その記述に彼は笑みを浮かべ肌を輝かせる。

 なるほど、なるほど! わかったぞ! これを行えばいいんだな!? いやぁ、「RNACmmnmnc」の講座を受けといてよかったなぁ。


 つまりCmmnmnc-cntncoということか。それなら超簡単だ。


 彼は呵々かかと笑い出した。

 何秒も。

 何分も。


 すると、唐突に「風よ!」という勇ましいの掛け声と共に突風が辺り一面を包み込む。

 突風が収まると同時に一人の少女が飛び込んできた。


 美しいカラスのような色の髪をツインテールに結んでおり伝統的な巫女服と戦国時代の甲冑を組み合わせたような服を装備している。

 もっともツインテールの片割れは切断されているし、服の一部は所々ちぎれてが覗いている。

 まあ無理もない。

 丁度外では神国日本と械国日本の生き残りをかけた最終戦争が始まっているのだから。

 あのヒロシとかいう面白い変異種もいるのかな?

 そう思っていると少女の厳しい声が辺りにこだまする。


「そこの妖魔! 答えなさい! 一体何者ですか!」


 …………相変わらず難しいcntncoだなぁ。えっと、確か…………こう? だったかな?


 彼は170cmほどの身体を立ち上がらせながらCmmnmncaaionした。


「わたしかい? 私はヨグの僕というんだ。ちょうどよかった。アンケート、とらせてよ」


 そして彼は6mの腕を彼女の方向へ向けて言い放つ。


「分解・再構成」


 彼女は知らない。

 これより彼女は、

 見ることになる。

 聞くことになる。

 話すことになる。


 宇宙の開闢かいびゃくを。



                      イレブン・ディメンション END



追記

文中の記載は以下より引用しました。

『広辞苑 第六版』 新村出 編

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