第2章:2298年 10月24日

資料②

 ファイル名:ヒロシ君用 一般教養、歴史、神国日本の成り立ち 個人用メモ

 作成日時:2297年、7月14日 17:50:15

 作成者 :暦特務少尉


 メモ 神国日本の歴史編


 ●西暦2140年~2250年頃


 今から150年ほど前の日本は各地に「豪族」と呼ばれる人達が治める小さな国々がたくさんあってそれぞれが対立しあう群雄割拠の時代だった。

「異形生命体」の脅威が存在しているにもかかわらず。


 数十年後、それら小国の集まりは統廃合を繰り返し10程の国々となっていた。

 それと同じタイミングで生まれつき様々な超能力を持つ子供たちが生まれる。

 彼らはやがて異形生命体を駆逐する強力な戦力となり住民から崇められていった。


 やがて極めて強力な能力を持つ超人である桜宮菊華が登場。

 彼女を中心として諸国は団結し統合し、新国家「神国日本」として名乗りを上げた。


 桜宮様を君主とし、それまであった諸国の長は十干支じっかんしと名を変え、桜宮の補佐を行うことになった(彼らは世襲制せしゅうせいである)。


 社会は超能力者=超人を中心としたものになっていった(ヒエラルキーの頂点)。

 ただ、これによって普通の人間との間に溝ができてしまう(これについては当時の世界をまとめるには絶対的な「力」が必要だったから仕方ない側面もあると思う)。


 比叡山にて日本列島及び世界各地に瞬時に移動可能な転送装置を発見。

 たまたま繋がった先にあった翠玉国と国交を樹立。交易を始めた。

 主に混沌汚染警戒区域で発掘される旧時代の廃材を輸出し、代わりに翠玉国から食料などの生活必需品を輸入した。


 正確な日時は不明だが、日本列島を横切るような形で直径1000mはあるという謎の未確認飛行物体UFOが観測された。

 それは北から現れ、やがて西の方角へと飛び去ったという。



 ●2253年~2297年


 比較的穏やかな時代が続いていたが、2253年、7月8日に突如相模湾、熱海市に黒船・白船の2隻が襲来する。


 彼らは自らを第四帝国の使者と名乗った。そしてこうメッセージを送ってきた。


「今まで閉じられた世界で暮らしてきたお前たちにはわからないだろうが、我々はかつて存在した理想郷エデンの如き素晴らしき世界からやって来た。超能力などという不確実なモノに怯える者どもよ、我らの元へと来い。「平等祝福」を授けてやろう」


 この言葉に興味を持った民達は小舟で彼らの元へと行き、周囲の心配をよそにちゃんと戻ってきた。ただし脳を除く全身を機械化されて。当時の超能力者の力をある程度、平等に使える状態で。

 当時の超人は常人よりも力が強い、というような今の私達に比べると単純なものが多かった。機械化で代用できるほどに。


 この出来事が契機となりそれまでの治世で不満を持った者達が武装蜂起、さらに十干支の中でも機械化の技術に心酔した者達(織田、伊達、北条、松平、浅井の5人)が反旗を翻し、1年ほどで神国日本は内戦状態となった。


 反乱軍は自らを「械国かいこく日本」と名乗り始める。


 戦況は誰もが平等な力、技能を持ち、誰もが優秀な兵士となることができるという点と、時として黒船・白船から期間限定で彼らの本国から多数の強力な武器、兵士を貸し与えられるという点で械国が有利に進んだ。


 内戦は時たま襲来する異形生命体との戦いで小休止を挟みつつ進行し、40年以上が経った。

 今や神国日本の領土は京都とその周辺の僅かな土地のみとなっている……。

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