第22話 マタタビ記念日

「「「マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ!」」」


盛大なマタタビコールが体の芯まで響き渡る。たくさんが声を合わせると、こんなにもエネルギーを感じることが出来るのか。何だか感動する。感動って安直な言い回しかもしれないが、なんだか体だけではなく魂まで震えている──これを感動以外どう表現したらいいか僕には分からない。


「「「マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ!」」」


盛大なマタタビコールに、僕はしばらく圧倒されていた。圧倒されていて見えていなかったけれど、隣にはエノコロ王国の国王が立っていた。


「国民のみんにゃよ。わしはマタタビを合法化してもいいと思っているニャン。反対のものはいるかニャン?」


「「「マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ! マータータビ!」」」


反対の人がいないことが明らかなほど、迫力溢れるマタタビコールが止まらない


「お前たちもそれでいいかニャン?」

王様は未だに写真を必死に集めているネコ達をにらみつけて言う。

いくら地位が高くとも王様より偉い人物はいないのだろう。睨まれたネコ達は慌てて、まるで筋肉が硬直したように直立で立つと、王様のいう事を素早く頷く。


それを見て王様は国民のほうに向きなおし宣言する。


「今日の記念すべき今日より、マタタビは合法化とするニャン!!」


王様の宣言で、今日をもってエノコロ王国ではマタタビが合法化となった。


国民からの歓声が沸く。新たな祭りが始まったように騒がしくなり始める。


「マタタビィィィィィィィィ!!」


叫び声をするほうを見ると、もう既にマタタビで酔っぱらっている人すらもいる。

その酔っ払いネコは僕を無理矢理引っ張り下ろして、他の酔っ払いと共に僕を担ぎ上げて、移動する。どこに連れていかれるのかと思っていたら、僕がお好み焼きを売っていた屋台におもくそ適当に降ろされた。


酔っ払いはだから嫌いなんだ。

こんなことならマタタビを合法化するんじゃなかった。そんなことを思っている僕なんて関係なさそうに酔っ払いは楽しそうだった。


「無毛人のの兄ちゃんや、マタタビお好み焼きを作ってくれよ。一人一枚じゃ足りないたらありゃしない」

酔っ払いは僕にまだ働けと言う。

だが僕は正直もう疲れた。想像もつかない奇想天外の事が続いたし、何よりもう眠い──二徹目は嫌だ。


「いや、でもお祭りはもう終わりじゃないですか、ほら! もう日が明けそうですし」


「いーや、確かに建国記念日は終わったが、今からマタタビ祭りが始まるんだぜ」


僕はお祭りが終わるからと断ったのだけれど、今から新たにマタタビ祭りが始まるそうだ──どうしよう。そうすると、断る理由を思いつかない。

それに、僕がマタタビを合法化したために出来た祭りってことは自業自得とも捉ええる。


仕方ないか


「はぁ、分かりました。作りますよ、その代わりにあなた方も手伝ってください。子供たちは疲れて寝ちゃったので」


「うぃー、お安い御用だぜ。お前らやるぞ~!!」

僕を演壇から引きずり下ろしたリーダー格の酔っ払いの掛け声で、他の酔っ払いもやる気を示す。


「おいおい、突っ立てないで、まずは作り方を教えてくれよっ!」

リーダー格の酔っ払いが僕の肩に腕を回した。


「てっきり、食うだけで何も手伝わないかと・・・・」

なんかこのネコたちDQNぽいから、どうせ一人で働くはめになると思ったがそうではなかった。


「ん~寧ろ、手伝わせてくれよ!──俺たちゃ飯屋やっているからお好み焼きのレシピを知りたいんだよ。マタタビが合法化されたんだぜ、マタタビ料理は人気になるしかないしょ!! そんな訳だから俺たちゃに手伝わせてくれよ、無毛人の兄ちゃん」


酔っぱらっているのに商売のことも考えているなんて大したものだな、と学生の身分で碌に働いたこともない癖に僕は感心した。


「分かりました。まずはですね・・・・


僕はお好み焼きの作り方を教えると、プロの料理人なのも相まって、彼らはすぐにお好み焼きをマスターした。もうすでに僕より上手く焼けるようになっており、食べながらお好み焼きを売れる余裕すらある。だからといって僕が直ぐに休めることにはならず、お好み焼き以外のレシピを彼らに教えるのに駆られて、上がった太陽が再び沈むまでの間、僕は休めなかった。


ようやく休める頃には日が完全に沈んでいた。僕は人気のない暗い路肩に一人で座り込んでおり、落ち着いたことでアドレナリンの分泌が止まったのか、急な眠気に襲われる。


「・・・・・・・・・・うぐっ!」


心地いい爆発音が僕を眠らせなかった。音のするほう、すなわち夜空を見上げると、ぼやけて乱反射する光が目の中を通る。マタタビ合法化を祝して上げられた花火なのだろう。それからも次々と色鮮やかな光が黒空に咲き、そしてゆっくりと消えていく。

誰かと一緒に見る花火は、咲く瞬間が印象的だけど、一人で見ると何だか消えてゆくときを見入ってしまう。


「花火を一人で見るのって久しぶりだ」


感傷的になった僕から独り言が漏れる。


「私もいるんだけどね」


その声に反応して頭を右に向けると、探偵の目が在った。猫耳の探偵、珠玖ミミと目が合った。

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