けもの化ウイルスに感染した彼女たちのコンタミ～探偵のミミはネコの耳

第13話 犯人の正体

ネコの国のお姫様の名前はティッシュと言うらしい。

そのティッシュさんが話してくれた事件の詳細はこうだ。

事前に言っておくとティッシュさんが話してくれたことは事前に知っていたこと以上の情報は無かった。けれど、話してくれたことに意味があるのであって、決して無駄なことではないと僕は思う。

事件時、ティッシュさんと夫のサビさんはベランダで朝食をとっていたらしい。

朝食のメニューは焼き魚、白米、味噌汁、おひたしだったそうだ。ベランダで食べる朝食は洋食のイメージが強いが何故だか典型的な和食だった。

テッシュさんは旦那さんと楽しく談笑しながら朝食を食べていると、徐々に自分が自分ではなくなるように感じ、気が付くと旦那さんがベランダから落ちて死んでいたらしい。

ティッシュさんは以上のことを泣きながら、時間をかけて話してくれた。

その次にエンゴロー巡査が事件の補足をしてくれた。

警察の調査によるとマタタビは味噌汁に混入していた。寧ろこっちのほうが重要なのかも知れない──マタタビは味噌汁以外に含まれていなかった。

マタタビは家中の何処にも存在しなく、勿論テッシュさんと旦那さんもマタタビを持っていなかった。つまり、外部からの犯行でマタタビが味噌汁に入れられたということ。

何者かが味噌汁にマタタビを密かに混入し、それを食べたティッシュさんが自身の夫をベランダから突き落として殺害した。

探偵が言うには、いくらティッシュさんが突き落として殺害したとしても罪にとられることはないそうだ。何故なら、彼女は国民から絶大な人気を誇るプリンセスであり、事件の数日前に市場でマタタビ事件で起こった事も含めて、国民の多くは彼女の無罪を求めているからである。一部の国民はそれだけでは足らずに、ティッシュ姫をこんな目に合わせたマタタビ事件の犯人に対して、また、マタタビ事件を引き起こした犯人を捕まえられない政府に対して、今にも暴動が起こりうる程に強く憤慨している。

僕はてっきり国民はマタタビの恐怖から政府に不信感を抱いてると思っていたが、それは見当違いだったようだ。国民は恐怖というより、怒りから不信感を抱いている。

ティッシュさんを無罪にするだけでは国民の怒りか収まらず、一連のマタタビ事件の犯人を捕まえなくてはならなくなった政府は、偶々この国に迷い込んだ僕をテロリストに仕立て上げたってことらしい。

政府は僕をテロリストをでっち上げ、処刑することでその怒りを鎮めようとした──

ってことらしい。

正直、僕をテロリストに仕立て上げた政府はムカつくが、それ以上に元凶である犯人に対して腹を立てている。

だけれど、腹を立ててるだけではしょうがないので、僕たちは事件の起こった現場に向かおうとしよう。

なんせ、証拠を探し出さなければと僕と探偵は厳しい状況なのだから。これで全てのマタタビ事件を調べたことになるが、一つもマタタビ事件の手掛かりがない。もし、事件現場で証拠が見つけられず、事件を解決出来なければ、僕は政府の思惑通りにテロリストとして罪に問われてしまう。

僕と探偵はティッシュさんに礼を言ってから病室を出ようと扉を開ける時に、ふと、僕はティッシュさんに伝え忘れたことを思い出して振り返った。

「もしかしたら妊娠してるかも知れないので、体調にはお気を付けて下さい」

僕の一言で僕以外の全員の動きが止まった。それこそ、ゾーンに入ったように・・・・

けれど、実際にゾーンに入った訳ではなくて、皆は驚いて動きを止めている。

静寂の中で一番に声を発したのは探偵だった。

「ど、どうして、そう思ったんだね」

探偵は慌てたように僕に尋ねた。

「えーと、ティッシュさんの裸を見てしまった時に、乳頭と腹部が膨らんでいるのが見えたから、妊娠してるのかなぁって・・・・・・・」

と僕は自信なさげに答えたが、ティッシュさんがネコの妊娠兆候とぴったりと当てはまるのでそう思っただけで、必ずしも妊娠していると断言したわけではない。

それなのに、そんなにも驚くもののだろうか。

当の本人であるティッシュさんなら未だしも、探偵とエンゴロー巡査もこんなにも驚く理由が分からない。

理由を聞こうにもエンゴロー巡査は走ってどこかへ行ってしまったので聞きようがないし、探偵は何か考え込んだように髪の毛を指の先に巻き付けていた。

僕はエンゴロー巡査が何処に向かったのだろうと思い、僕は扉を出て廊下を見渡すとエンゴロー巡査が医者を連れて戻ってきた。

医者はエンゴロー巡査から事情を聞くと腰を抜かしていたが、直ぐに診断を始めた。

診断結果は妊娠四週間。

どうやら僕の予想は正しかったらしい。

僕はティッシュさんに「おめでとうございます」と言ったが彼女の顔は晴れやかではない。

その理由は考える必要もなかった。

「プリンセス、貴女がマタタビ事件の犯人だね」

それは探偵はティッシュさんを一連の事件の犯人だと結論付けたからだ。

作者の一言

ネコを飼っている人なら、何故ティッシュが犯人かが分かるかも知れません。

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