欽八先生 きつねうどんの唄

夏川冬道

第1話

「欽八先生! きつねうどんの唄を知りませんか?」

 昼休み、図書委員の竹内亜季に突然、きつねうどんの唄について聞かれた、図書委員会顧問の小野寺欽八は面食らった。

「きつねうどんの唄ですか……なんですかそれは?」

「わたしが子供の頃、図書館バスかなんかで読んだんですよ……たしかそんな感じのタイトルの詩だったと思うんですけど……欽八先生なら知っているかなって思って」

「ごめんなさいね……図書委員会の顧問教師でも知らない本のほうが多いんで」

 欽八は亜季に陳謝した。

「そういうものでしょうか……」

「まぁ、僕が今、図書委員会の顧問をやっているのも巡りあわせがあったからなもんで……きつねうどんの唄とたまたま縁がなかっただけだから気にしないほうがいいよ」

「いや、欽八先生は本に詳しいと思って聞いてみたのですが、欽八先生にもしらない本があったのですね」

 亜季はしょんぼりした顔をした。

「でも、きつねうどんの唄なら一つ知っている唄がありますよ」

「何ですか!」

「赤いきつねと緑のたぬき♪」

 そう言うと欽八と亜季は、笑いあった。


◆◆◆◆◆


 きつねうどんの唄に関しての話はこれで終わりだったが欽八はきつねうどんの唄のことがすごく気になった。そこで欽八は週末を利用してきつねうどんの唄について調べるために図書館に行くことにした。

 図書館につくと欽八はすぐカウンター係に軽く会釈して、切り出した。

「実はきつねうどんの唄を探していまして、何か知っていますでしょうか?」

「きつねうどんの唄ですか……? 少し探してみますね」

 そう言ってカウンター係はいったん席を外した。これから調べものをするのだろう。

 欽八はしばらく待ちぼうけを食らった。仕方ないので欽八はカウンターの本を数えながら待っていた。

 少し後にカウンター係がにゅっと出てきた。

「きつねうどんの唄はありませんでしたがきつねうどんの詩はありましたよ」

 そういってきつねうどんの詩が乗っている詩集の本をカウンター係を出した。

 それを見て欽八は思った。

(赤いきつねと緑のたぬきではなかったなぁ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

欽八先生 きつねうどんの唄 夏川冬道 @orangesodafloat

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ