第471話 ロレッタの受難
王国歴五百一年、四月一日。
大事な発表が行われるため、貴族達は王宮に呼び出されていた。
とはいえ、ほぼすべての貴族がどんな話かがわかっていた。
――ロックウェル王国への侵攻。
国を挙げての大攻勢となる。
かつてない規模になるだろう。
ただ剣を向ける相手が、実は国王のジェイソンだというのも前例のない事である。
誰もが歴史に残る一大事を前にして興奮していた。
この興奮の前には、噂で流れている新人事など些細な事だった。
興奮していないのは、クーパー伯爵やフィッツジェラルド元帥などの、損な役回りを担わされた者達くらいだろう。
彼らは目の前にある問題に対処しなくてはならない。
興奮している余裕などなかった。
(面倒事を人に押し付けられるって楽でいいな)
もちろん、アイザックは余裕のある側である。
クーパー伯爵とフィッツジェラルド元帥が貧乏くじを引いてくれたおかげで、新婚生活を楽しむ余裕すらあった。
いや、正確には楽しむだけではなかった。
(でも俺も余裕ぶってはいられない。パメラとばっかりイチャついていたらリサの立場がない。ちゃんと両方を立てる必要があるから難しいんだよな)
二人の妻を娶ったのだ。
序列ではパメラが上だが、だからといってリサを蔑ろにしていいというわけではない。
まだ初夜を過ごしていないとはいえ、彼女もアイザックの妻なのだから。
しかし、リサの事は意識して行動しなければならなかった。
どうしても身体的関係のあるパメラに意識が向いてしまうせいだ。
こうして余裕でいられるのも、ゴメンズをある意味信用しているからだ。
大臣や将軍になったとしても、彼らに何ができるというのか。
アイザックと違い、今まで準備もしてこなかった彼らは仕事の引き継ぎだけで手一杯になっているはず。
他国の大使とも挨拶程度の事しかできていないはずだ。
アイザックに心配があるとすれば、すでに帰国した使節団に関するものだった。
(リード王国の状況を報告されると困るな。せめて半年くらいは大人しくしておいてほしいところだ。仕掛けが上手くいけばいいんだけど……)
ジェイソンの結婚式が終わると、まもなく各国の使節団は帰国した。
彼らの目的は、ジェイソンの卒業祝いと結婚式への顔出しだったからだ。
リード王国の貴族は入学式が終わったあとに帰領するが、他国の者は王族のいない入学式に顔を出す必要はない。
だから用事が済めば、あっさり国へ帰っていった。
残りたくなかっただけかもしれない。
アイザックも彼らの立場であれば、駐在大使にあとを任せてさっさと帰っていただろう。
残れとは言えなかった。
(まぁ、それももうじき解決する。ジェイソンさえなんとかすれば――)
アイザックが色々と考えているうちに、ジェイソンの登場となった。
彼が玉座に座るまでの間、アイザック達は片膝をついて待つ。
「面を上げよ」
ジェイソンの声に従い、アイザック達は顔を上げた。
玉座にはジェイソンが座り、彼の隣にはニコルが座っていた。
二人の周囲には、ゴメンズが立っていた。
(これなら、俺が何もしなくても貴族の不満を煽れてたな……)
アイザックが気になったのは、ニコルだった。
彼女は気恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに一同を見下ろしている。
――男爵家の小娘が偉そうに!
そう感じる者は、かなりの数に上るだろう。
せめて王妃にふさわしい人物と思われているのなら不満も抑えられただろうが、ニコルは王族どころか貴族としても不安を感じる立ち居振る舞いをしている。
それも王立学院でトップクラスの成績を取っていた才媛とは思えないくらいに。
勉強はできても礼儀がなっていないだけに、彼女を王妃にふさわしいと思う者はいない。
それだけに、彼女の視線に反発を覚える者が多いだろう。
アイザックが裏工作をするまでもなく、ジェイソンとニコルの二人だけで国が崩壊していたかもしれない。
そう考えると、ニコルは煽りの才能を持っているようにしか思えなかった。
「噂で聞いている者もいるだろう。ウィンザー侯とウェルロッド侯が高齢のために職を辞する。そのため、後任の宰相にクーパー伯を任命する。空席となった外務大臣の後任にはマイケル・ブランダー。法務大臣の後任にチャールズ・アダムズを任命する事にした。また、軍にも新しい風を入れるために、フレッド・ウィルメンテを将軍とし、ダミアン・フォスベリーを騎士団長とする」
これは噂で流れている内容と同じなので、誰も驚きはしなかった。
今まで働いてきた者にねぎらいの言葉と、新しく任命された者達に拍手が贈られる。
――しかし、肝心なものが贈られなかった。
今までの功績を考えれば、ウィンザー侯爵には公爵位が贈られるはずだった。
だがジェイソンは、それには触れなかった。
ただ一言「ご苦労だった」と声をかけただけである。
これにはウィンザー侯爵も――怒らなかった。
彼はただ、ジェイソンの言葉にうなずくのみである。
エリアス救出のためとはいえ、ジェイソンにここまでの事をされて耐える彼の姿に貴族達の同情が集まる。
しかし、ウィンザー侯爵は、エリアスのために耐えてはいなかった。
(こいつはまもなく終わる。束の間の栄光に酔いしれるがいい)
彼が耐えられていたのは、ジェイソンが玉座から引きずり降ろされるのがわかっているからだ。
どこまでやるのかまでは知らされていないが、アイザックならば厳しい報復をしてくれるだろう。
ならば、待つだけだ。
――ジェイソンが地に這い、屈辱に塗れる姿を見られる日を。
ジェイソンが調子に乗れば乗るほど、さぞかし晴れやかな気分になれるだろう。
そう思えば、ジェイソンの態度はいいスパイスにすら思える。
周囲の心配とは裏腹に、ウィンザー侯爵には余裕があった。
だが、その余裕の表情も剥がれてしまう事件が起きる。
「さて、本題に入ろう。我が国は他国を犠牲にしながら、長年の平和を享受してきた。今、その対価を支払う時がきたのだ。我らは圧政に苦しむロックウェル王国国民を、悪辣な支配者から解放するために行動する」
これは周知の事実だった。
アイザックが貴族を説得していたため、各地方領主は国元に伝令を送り、出兵の準備を進めている。
その動きは、知らされていない貴族達も察していた。
それでも「やはり戦争を始めるのか」という衝撃を受ける者もいた。
しかし、本番はこのあとにあった。
「だが、その前に処さねばならぬ者がいる! 連れてこい」
(処罰しないといけない者? お前らか?)
アイザックが首をかしげていると、扉が開かれて罪人が連れてこられた。
(ロレッタ! ニコラスも!)
罪人は、ファーティル王国の者達だった。
ロレッタやニコラスといった留学生だけではなく、駐在大使までもが罪人のように貴族の間を歩かされていた。
「エンフィールド公……」
アイザックの近くを通る時、ロレッタ達が助けを求める視線を投げかけてくる。
「陛下、これはいったい……」
「私が説明しよう」
アイザックが説明を求めると、マイケルが割って入ってきた。
「ロレッタ・ファーティルは、他の者達と共謀し、リード王国を乗っ取ろうとしていたのだ」
「なんだって!」
(俺以外にも、そんな事を考える奴がいたのか!?)
アイザックは大きな驚きを受ける。
しかし、今のリード王国の内情を知れば、チャンスだと考えるのも理解できる。
やはり王家の混乱は、他国の介入を呼んでしまうのだろう。
「違います! そのような事はしておりません!」
「王女たるものが見苦しい。法務大臣の手によって証拠はあがっているのだ」
マイケルがフフフッと余裕の笑みを見せる。
「先王陛下に養女として迎えるように願い出ていただろう。ジェイソン陛下を亡き者とし、リード王国を乗っ取らんとする企みの第一歩だとわかっているのだぞ!」
彼だけではなく、チャールズまでウキウキとしているようにすら見えた。
大臣となって、いきなり手柄を立てられるからかもしれない。
それとも、ニコルの前で格好を付けられたからだろうか?
この話はアイザックも聞いていないので、思考が止まってフリーズしてしまっていた。
当然、他の者達も「こんな話は聞いていないぞ」と大いに戸惑っていた。
モーガンやウィンザー侯爵は、この状況のまずさをよくわかっているだけに、めまいすら感じていた。
「そのため、ロックウェル王国に攻め込む前に、ファーティル王国を攻め落とす! ファーティル王国が存在すれば、ロックウェル王国を攻め落としたとしても飛び地となってしまう。これぞ好機! 同盟国を裏切らんとする悪辣なファーティル王国を併呑する名分を得た今、まとめて攻め滅ぼしてやろうぞ!」
ジェイソンの言う事にも一理ある。
同盟国とはいえ、ロックウェル王国との間にファーティル王国があるのは邪魔だ。
彼らが心変わりすれば、ロックウェル王国を攻めている軍の補給が簡単に途絶えてしまう。
邪魔される前に攻め滅ぼした方がいいというのは、アイザックにも理解できる。
そのための名分として、ロレッタを使うのも理解できる。
だが、大きな問題があった。
――本当に他国を攻める気などないというものだ。
本当にロックウェル王国を攻めるつもりがあるのなら、この意見に賛同したかもしれない。
しかし、アイザックにはその気がない。
むしろ、ジェイソンを倒したあとに国際問題を残される厄介事でしかなかった。
「養女の話は、先王陛下から持ち掛けられたものです」
ファーティル王国側も黙ってはいない。
このような状況に置かれて震えているロレッタの代わりに、大使がジェイソンに反論する。
「そう仕向けたのだろう」
「違います! リード王家には年頃の姫がいません。先王陛下はロレッタ殿下を養女として迎え、エンフィールド公に降嫁させようとお考えでした。そうする事で、ジェイソン陛下の治世をより安定したものにしようとお思いだったのです! 先王陛下に確認していただければ、すぐにわかるはずです」
(なんだって! あのおっさん、そんな事を考えていたのか! やけにロレッタを推してくるなと思ってたんだよ!)
大使の反論に対して、ジェイソンではなく、アイザックが大きく反応した。
アイザックとロレッタを結婚させる事で、両国の関係を強化する。
そこまではわかっていたが、養女にしようとしていたとまでは知らなかった。
(リード王国の王女になったロレッタとの結婚を断れば、こっちが無礼者として非難されただろう。親子揃って余計な事をしやがる)
驚きの声を出さずに済んだのは、アイザックも多少なりとも成長しているからだろう。
昔であれば、ツッコミの声が漏れ出ていたはずだ。
「すでに篭絡済みというわけか。父上もつまらぬ問題を残してくれたものだ。戦の前に、貴様らの命を供物として神に捧げてくれる! 幸いな事に、国庫には余裕がある。ファーティル王国を目標に加えても問題がない程度にはな」
(はぁ!? ちょっと待て、アダムズ伯はどんな予算計上したんだ? ギリギリじゃなくて、余裕でいけますとかいう報告書を作ったんじゃないだろうな!)
アイザックは呆気にとられる。
しかし、いつまでも呆気に取られているわけにはいかない。
この状況をなんとかしなければならなかった。
――自分が王になった時のために。
あと、自分が報告書の捏造を頼んでいたので、その失点分は取り返しておきたかった。
「陛下、お待ちを!」
さすがにファーティル王国に攻め込めば、他の同盟国もリード王国に不信を抱く。
同盟国という壁に守られていたのが一転、全方位を敵国に囲まれるという状況になりかねない。
そんな危険な国を治めたくないし、住みたくもない。
そのためにも、ロレッタ達はなんとか助け出さねばならなかった。
「ロレッタ殿下やニコラス達の助命をお願い致します」
「……なぜだ? いくらエンフィールド公の親しい相手だからといって、リード王家を乗っ取らんとする輩を無罪放免にするわけにはいかんぞ」
今のジェイソンでも、アイザックの言葉を一蹴はしなかった。
やはり、味方だと思われているのが大きいのだろう。
表向きは従ってきた甲斐があるというものだ。
「いえ、助けてほしいわけではございません。殺さずに、生かして利用するべきだと申し上げたいのです」
「ほう、どのような使い方をするつもりだ?」
ジェイソンは興味深そうにしている。
その一方で、怯えていたロレッタ達が少し落ち着きを取り戻す。
アイザックの言葉は、そのまま受け取ってはいけないとわかっているからだ。
「きっと助けてくれる」という期待が、彼らを落ち着かせていた。
「ロレッタ殿下がご幼少のみぎり、そこにいるニコラスと婚約されていたという話はご存知でしょうか?」
「本人から聞いて知っている。それがどうした?」
「その縁談を復活させましょう。そして、ファーティル王国の西半分をソーニクロフト侯爵家に与える代わりに、寝返るように説得するべきです。ロレッタ殿下とニコラスを結婚させる事で、ソーニクロフト侯爵家がファーティル王国の半分を治める名分とする。こうする事で、ファーティル王国侵攻の足掛かりを確保できるだけではなく、戦後の統治も楽になります」
まずはロレッタ達を救う必要がある。
そのため、アイザックは彼女らを生かしておく理由を作った。
アイザックの提案に、ジェイソンがいつもの含み笑いを返す。
「フフフッ。たしかソーニクロフト侯爵家は、ウェルロッド侯爵夫人の生家だったはず。親族を助けたいのだな」
「その気持ちがないとは言いません。ですが、陛下は世界を見ておられるはず。ならば、最初の一歩をしくじるわけにはいきません。幸いな事に、ソーニクロフト侯爵家には先の戦争で恩を売っております。説得も容易でしょう。殺してしまえばそれまでですが、生かしておけば使い道はございます。私に預けてはいただけませんか?」
この提案は悪いものではない。
いきなり攻め込んで抵抗されるよりも、国境の守りを任されているソーニクロフト侯爵家を寝返らせた方が侵略は早く終わる。
アイザックの言う事にも一理あった。
「それに、ニコラスは王妃殿下と名前が似ています。これはきっと天啓ではないでしょうか?」
「マイケル、どう思う?」
「……やるだけやらせてみてもいいのではないでしょうか?」
ジェイソンに尋ねられたマイケルは不機嫌そうだった。
せっかく、自分の意見が通ろうとしていたところを、アイザックに邪魔されたからだろう。
ニコルの前でいい格好をしたかっただけかもしれない。
「陛下。外務大臣殿と話があるので、そちらにいってもよろしいでしょうか?」
「いいだろう」
アイザックは許可を取ると、冷静に、落ち着いた足取りでマイケルに近寄った。
そして、彼を殴り飛ばす。
「何をする!」
「何をするだと? ジュディスさんの時と同じような事をしやがって! 大臣になったから、さっそく王妃殿下にいいところを見せようとしたんだろう!」
「べ、別にそんな事……」
マイケルが目を逸らす。
その態度が、事実を物語っていた。
「ロレッタ殿下がリード王国の乗っ取りを考えていたというのなら、もっと多くの物証を集めろ。他国の王族に対して、言い掛かりに近い罪を着せるなどもってのほかだ。そんな事をすれば、リード王国が他国にどう見られると思う?お前一人の名が傷つくだけじゃない。国王陛下や王妃殿下の名誉までもを傷つける事になるぞ!」
「それは……」
マイケルも「ニコルの名誉を傷つける」と聞いて、自分のやった事の愚かさを実感した。
「お前の思いつきの行動がどこまで影響を与えるのかをよく考えろ! 目に見える結果を残したいという気持ちを抑えろとは言わない。けど、もう子供じゃないんだ。自分の行動が陛下のためになるのか、国民のためになるのかを考えてから実行しろ!」
アイザックは、マイケルの肩に手を置いた。
「まだ大臣になったばかりなんだ。焦る必要はない。まずは一年、地道にやって経験を積め」
「しかし……」
「人である以上ミスを犯すのは仕方ない。大事なのは同じミスを繰り返さない事だ。これはお前のためを思って言ってるんだぞ」
「かもしれないが……」
マイケルが渋る。
アイザックとしては、しばらく大人しくしてほしいので、最終手段を取る事にした。
「王妃殿下は、どう思われますか? 新任の大臣が何か大きな事をしようとすれば、不安を感じたりされませんでしょうか?」
「うん、そうだね。社会経験のない人が、いきなり大きな事に挑戦するのは無謀だと思うよ」
「そんな!」
ニコルに突き放され、マイケルの顔は血の気を失った。
「陛下。臣下の進言を聞き入れるのも王としての器。人を信じる姿は魅力的に映ります。しかし、なんでも聞き入れてもいいというわけではございません。どのような意見でも、一度は他の者に相談してみるべきでしょう。私ならば、いつでも参上いたしますので、お気軽に申し付けください」
「耳の痛い意見だ……。だが、聞き入れるべき意見でもある。わかった、今後は気を付けよう」
ジェイソンは、アイザックの意見を聞き入れてくれた。
しかし、その信頼性は低い。
また「ニコルのためになる」と思えば、暴走するだろう。
そう思ったので、アイザックはフレッドに視線を向ける。
「フレッド。騎士として陛下をお止めするべきだったな。王としてふさわしい行動か、ふさわしくないかを伝えるくらいはできただろう?」
「あぁ……、そうだな……」
フレッドは悔しそうな表情を見せた。
一番の親友である自分が言うべきだった事を、アイザックにすべて言われてしまった。
「なんで俺は何も言えなかったんだ」と、悔やんでも悔やみきれない。
「では、陛下。ロレッタ殿下一行を、ウェルロッド侯爵家の預かりとする。そして、私が裏工作を行うという事でよろしいでしょうか?」
「そうしてくれ。大使はどうする?」
「大使殿ですか……」
アイザックは、ファーティル王国の大使を見る。
(うーん、みんな引き受けるとか言うと、怪しまれそうだしなぁ……。でも、見捨てるわけにもいかないし……)
「私の策に必要なのは、ロレッタ殿下達だけです。大使殿は必要ありません。とはいえ、大使殿もファーティル王国内において重要な人物です。大使館員と共に、大使館で軟禁といった形で様子を見てはいかがでしょうか?」
「マイケル、それでいいか?」
「結構です」
「ならば、エンフィールド公の言う通り、大使館に閉じ込めておこう」
大使は安堵のため息を吐いた。
アイザックに必要ないと言われた時はどうなるかと思ったが、大使館内に軟禁されるだけならまだ耐えられる。
最悪の事態は避けられただけよかったと、前向きに考えていた。
「本日の発表は以上でしょうか?」
「あぁ、そうだ」
発表が終わったとわかると、アイザックはクーパー伯爵に視線を送る。
送られたクーパー伯爵は「自分に終わらせろと言っているのだ」と受け取った。
「元々はロックウェル王国が目標であったが、目標がファーティル王国に変わろうとも、進む方角は同じく東。ロックウェル王国への通り道で戦う事になっただけである。皆の者、慌てずに対応せよ」
クーパー伯爵が最後を締めると、ジェイソン達は出ていった。
アイザックは「ふー」と大きな息を吐く。
(数か月どころか、就任発表後すぐにとんでもない爆弾を落としていきやがった……)
ゴメンズは、アイザックの想像の斜め上をいく。
ニコルのためとはいえ、本当に一年もの間、大人しくしてくれるのかが不安で仕方がなかった。
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