第350話 忘れていた思い出
「ま、待てっ! なぜそのような事を……。そなたはロレッタからハンカチを受け取ったのではないのか? ドラゴンを大人しくさせた見返りとして、ロレッタとの婚約を求めるはずだったのだろう?」
「えっ!」
今度はアイザックが驚く番だった。
どこからロレッタとの婚約話が出てきたのかがサッパリわからない。
(いや、待てよ。ハンカチにドラゴン……。あっ! バレンタインデーか!)
ここにきて、アイザックもようやく思い出した。
この世界のバレンタインデーは、卒業間際の女子が男子に贈り物を送り、男子が女子に家族から婚約の許可を得るというもの。
結婚適齢期の人間だけが関係するイベントだ。
だから、アイザックも縁がなくて、バレンタインデーを商売の機会くらいにしか考えた事がなかった。
そのせいで、今まで忘れてしまっていたのだ。
(くそっ、せめて二月十四日に渡してくれれば……。季節外れのプレゼントなんてわかんねぇよ。だいたい、今まで俺に縁がなかったイベント……じゃない! あったよ、縁が!)
アイザックは四年前の事を思い出した。
――卒業直前まで婚約者を見つけられなかったリサが、誰も受け取ってくれなかったハンカチをアイザックにくれた事を。
(まったく甘酸っぱくねぇぇぇ! そりゃ、あんな思い出忘れるよ!)
あの時のリサからは、まるで前世の自分のような切なさを感じられた。
だから、アイザックも自然と記憶の奥底にしまっていたのだろう。
今まで完全に忘れてしまっていた。
(あれ? それじゃあ、今の状況ってまずいんじゃ……)
ハンカチを受け取ったのはロレッタだけではない。
――パメラ。
――アマンダ。
――ティファニー。
――ジュディス。
彼女らからも受け取っている。
それが意味するものは――
五人の女性に婚約を申し込まないといけない。
――という事だ。
「みんな仲良く僕の奥さんになってね」と言って受け入れてもらえるだろうか?
そんなはずがない。
「とんでもなく、女にだらしない男だ」と軽蔑されるに決まっている。
(お前が余計な事を人前で言わなければ、まだなんとかなったっていうのに……)
アイザックはエリアスを恨みがましい目で見る。
彼が大勢の前で「アイザックはロレッタからハンカチを受け取っていた」と暴露しなければ、個別に対応できていた。
しかし、彼が暴露したせいで、その方法が取れなくなってしまった。
だが、これはエリアスを責めるのも酷というもの。
すべてが理想的な形に進んでいたところに、まったくもって想定しない形で最悪の要求を叩きつけられてしまった。
本来、ロレッタの件は秘密にしておくべき事だったが、つい漏らしてしまうほどの衝撃を受けてしまったせいだ。
こうなってしまったのは「遠慮せず言うがよい」と言われて、本当にあのような事を人前で言ってしまったアイザックが原因である。
「……どうした? もしや、アン王女と騎士ホワイトの話を知らなかったというわけではなかろう?」
あのアイザックがバレンタインデーの話を知らないはずがない。
だが、頭が良すぎるが故に、誰もが知っていて当然と思っている簡単な事を学び損ねたという可能性もある。
――本当に知らないのか?
――それとも、しらばっくれているのか。
そのどちらかだろうと、彼は考え始めていた。
黙り込んだアイザックに、エリアスが疑惑の目を向ける。
「いえ、知っておりました」
「知らずに受け取った」と言い訳する方が安全だったかもしれない。
しかし、アイザックはとっさに知ったかぶりをしてしまった。
窮地に追い込まれたと思ったせいで、正常な判断ができなかったのだ。
言葉にしてから後悔するが、もう遅い。
より不利な状況から言い訳をしなければならなくなってしまった。
「ほう。ならば、なぜハンカチを受け取ったのだ?」
エリアスがすかさず問い詰める。
彼としても、ここが正念場である。
アイザックのような功臣に「お前の命令、もう聞けないから」と言われてしまえば、王としての名声が地に落ちる。
褒美として要求された「命令の拒否権」について、うやむやにしておかねばならなかった。
そこで、ロレッタのハンカチを受け取った事に話題を逸らす事にした。
単純に疑問だったし、上手くいけば拒否権についてうやむやにし、ロレッタを娶らせる事ができるかもしれないからだ。
だが、これは逆効果だった。
アイザックは本当に「心配してくれて嬉しい」という程度の認識しかなかった。
だから、五人からハンカチを気楽に受け取ったのだ。
責任を持って彼女達の想いを受け取ったわけではないので、突然降って湧いた責任から逃げ出す事に必死になっていた。
そうなると、責任を誰かを被せるのが楽な逃げ方になる。
(……考えていたプランを実行して、話している間に責任を押し付ける方法を考えよう)
「それを説明するには、先ほど褒美として申し上げた命令の拒否権について触れねばなりません。少し長くなりますがよろしいですか?」
「……よかろう。説明せよ」
拒否権に触れるのは嫌だったが、この状況で「やっぱなし。別室行こうぜ」などとは言えない。
王国中の貴族が、このやり取りを聞いている。
――ロレッタとの婚約よりも拒否権や謝罪を要求するとは、陛下は何をしでかしたんだ?
そう思われる可能性に気付いたからだ。
ロレッタと婚約すれば、将来的にファーティル国王になれる可能性もある。
普通の人間なら、婚約を選ぶはずだ。
それを捨ててまで拒否権を求めるという事は、よほどの事情があるという事。
別室で話を済ませれば「権力で強引にアイザックを押さえ込んだ」と思われて、自分の立場が悪くなる。
ロレッタの件を表沙汰にして苦しんだのはアイザックだけではない。
エリアス自身も、自分の迂闊な行動で苦しむ羽目になっていた。
「まず、陛下にドラゴンの対処をせよと命じられた時の事です。私は自信がないと申し上げました。ですが、ジェイソン殿下が私ならできると仰られ、陛下はその意見に賛同されました。四月の始業式の事件で、私は殿下の命令を断る許可を得ていました。なのに、陛下に『隣人を助けるべきだ。それに問題でもあるのか?』と言われれば、私には断る事などできません」
アイザックの言葉を聞いて、エリアスは自分のしでかした事に気付いた。
ジェイソンの言葉だけなら断れたものの、テンションの上がった自分が賛同したために断れなかった。
拒否権を求めてきたのはそのせいなのだと。
本来ならば、アイザックもエリアスの命令を断る事ができる。
抗議をする事だって、許可を得ずともできるのだ。
モーガンがアイザックへの命令に反発して抗議をしてきた事が、誰にでも意見を述べる権利がある事の証明だ。
しかし、アイザックはエリアスが持った家臣の中で、かつてないほどの忠誠心を持つ若者である。
国王からの命令を断ってもいいなどと考えもしなかったのだろう。
だから「命令を拒否するには、まずはその許可を得なければならない」と思わせてしまったのだとエリアスは考えた。
――だが、エリアスの考えは間違っていた。
アイザックは「もう無茶振りなんてされてたまるか。そもそも、この学生生活が重要なんだから、遠征なんてさせられたらニコルが引き起こす混乱を利用できないじゃないか」と不満に思ったから拒否権を求めただけだ。
王家への忠誠などまったくない。
「あの時、私は死を覚悟しました。ドラゴンなどという未知の相手に、単身立ち向かえと言われたのです。心配してくれた友人達に妹の事を頼むほど死を覚悟しておりました。『狡兎死して走狗烹らる』そんな言葉が頭に浮かんだくらいです。陛下が私の存在を疎ましく思われ、ドラゴンの手によって亡き者にしようとされたのではないかと……。使い捨ての駒にされたと落ち込んでおりました」
アイザックは、できるだけ悲しみの籠った声を意識して出す。
ここまでは考え通りだ。
――周囲の同情を買って、ハンカチを受け取ってもしかたない状況だった。
そう思わせる事で、この場を乗り切ろうとしていた。
「それは違う! そなたの働きは、この国に必要なものだ。ジェイソンが跡を継いだ時……。いや、ウィンザー侯が引退すれば、次の宰相はそなたに任せるしかないと思っていたくらいだぞ。使い捨てなどにはせん」
当然、エリアスは必死に否定する。
アイザックのような功臣を使い捨てにすれば、他の貴族から軽蔑される事がわかりきっていたからだ。
誰が功臣を使い捨てにする者についていくだろうか。
「目立つと謀殺されるから、適当に手を抜いておこう」などと考えられたら、リード王国の凋落を招きかねない。
評価が賢王から愚王に一転しかねない。
これだけは黙って認められるものではなかった。
「かもしれません。ですが、私には陛下の真意がわかりませんでした。今までにも陛下から褒美をいただける機会がございましたが、長期的にリード王国のためになるものを望んでおり、私利私欲で褒美を求めた事はありません。私なりに王家に尽くしてきたと思っていました。なのに、使い捨てにされると思った時は、本当に寂しかったのです」
アイザックはロレッタを見る。
ここからは完全なアドリブだ。
一つのミスが致命傷になる。
胸の鼓動がどんどん早くなっていくのを感じていた。
「そんな時、自分の事を心配してくださる方がいた。無事に帰ってきてほしい。ハンカチをお守りとして持っていってほしいと言われて本当に嬉しかったのです。差し出されたハンカチを断るような事はできませんでした」
「ならば、その気持ちに答えてもよいのではないか?」
「いいえ、それはできません」
ここでアイザックはキッパリと言い切った。
「リサ、ティファニー、バーバラ、カミラ、ドリス――。みんな、中央に出てきてくれないか」
アイザックは十名ほどの名前を呼ぶ。
そして、彼女達を扉から玉座へ伸びる絨毯のところへ呼び出した。
彼女達はなぜこの場面で呼び出したのかわからなかったが、素直に人の間を抜けて出てきてくれた。
エリアスにも理解できず、不思議そうな顔をしていた。
この人選の意味を理解できたのは、アイザックに近しい者達のみだった。
「陛下、彼女達は私の幼少期の友人です。どう思われますか?」
「どう……か。美しいだとか可愛いだとかの意味ではないな。……女ばかりだという事か?」
「その通りです。私が幼い頃の友人といえば、彼女達だけでした。九歳になるまでは、ですが」
彼女達は、アイザックの行動を恐れて離れていった者達だ。
それだけではなく、彼女達も婚約者がいるので男のアイザックから距離を取ったという理由もいくらかは含まれている。
九歳以降は男友達ができるようになった事もあり、自然と疎遠になっていた者達だ。
「私は曾祖父のジュード・ウェルロッドのような立派な者になりたい。そう考えていました。いえ、今もそう考えています。ですが、一つだけできない事があります」
アイザックは彼女達に視線を向ける。
「幼い頃の私の友達は女の子だけ。その事から、女性を政治の駒として考えられなくなったという事です。もちろん、いつかは自分に娘ができて、幸せな暮らしができそうな家と婚約させるという事はあるかもしれません。ですが、今はそんな風には考えられません」
アイザックはエリアスの方に向き直る。
その顔は真剣なものだった。
「ドラゴンの問題を解決した褒美として、特定の女性を求める。それは女性を物扱いしているのと同じです。私はそのようなやり方で婚約を求めようとは思いません。婚約してから『こんな人だとは思わなかった』と失望される事を、私は何よりも恐れます。リサのように長い付き合いがあり、お互いの事を知っている者ならば婚約を求めるかもしれませんが、ロレッタ殿下とは半年ほどの付き合いしかありません。例えどんなに恋焦がれている相手であったとしても、お互いの事をよく知らぬ者との婚約を求めるような事を私は致しません。お互いを知った上で、結婚したいという相手であれば、褒美という形を取らずに婚約を求めたいと考えております。例え故事に習ったものであろうとも、褒美として女性を求めようとは一切思いません」
――ロレッタとの婚約を褒美として求めないのは、自分なりの誠意だった。
アイザックは、そのように言い訳をした。
アイザックの言う事は青臭い。
だが、子供の頃の友達が女の子だけだったという事もあり、女性の気持ちを尊重したいと考えるようになった経緯については理解ができるものだった。
それにアイザックが今まで「好きになった女性と結婚したい」と話していた事とも矛盾しない。
しかし、エリアスとしては理解したくはなかった。
「その考えは尊重したいとは思うが……。それでは先代ウェルロッド侯にはなれんだろう。ロレッタはそなたに最適な相手だ。ここで褒美として求める事はなんら悪い事ではないぞ」
「いいえ、それではいけません」
必死になってロレッタを薦めようとするエリアスだが、アイザックは首を横に振る。
その仕草は、エリアスとロレッタを残念がらせた。
「私がなるべきはジュード・ウェルロッドでも、ウェルロッド侯でも、サンダース子爵でもありません。アイザック・ウェルロッド・エンフィールドでなければならないのです。先代ウェルロッド侯はあくまでも目標であり、何もかも真似をする必要があるとは思いません。貴族としては間違っているのかもしれませんが、そこは他のところで補うつもりです。私は褒美として女性を求めたりは致しません。これが私が褒美として特定の女性との婚約を求めない理由です」
話しているアイザック自身、自分が何を言っているのかわけがわからないが、とりあえず勢いで押し切った。
言ってから「後半だけでもよかったんじゃないか」とも思ったが、あとの祭りである。
しかし「むぅ……」とグウの音もでないエリアスを見て、一応は効果があった事が見受けられる。
今のうちに追撃をしておく事にした。
アイザックとしては、エリアスを徹底的に悪者にする事で、自分への矛先を鈍らせる必要があったからだ。
「拒否権を求めたのは、ジェイソン殿下の意見を陛下が聞きいれたからというだけではありません。陛下も約束を忘れておられたからです」
「なにっ!?」
さらなる攻勢を受け、エリアスは目を丸くして驚く。
ジェイソンの意見を聞きいれた以外にも、アイザックを怒らせるような事があったのかとびくつき始める。
「公爵位を授かった時に、陛下から『二十歳になるまで貴族としての義務を免除する』という許可をいただきました。ですが、あのように命令を出されては義務を果たすしかないではありませんか。義務の免除は陛下から言い出された事。それを反故にされるとわかっていれば、爵位を授かる事を辞退しておりました」
「そ、それは……」
これはエリアスの致命的なミスである。
アイザックに爵位を与えるために、自分から言い出した事だ。
しかも、論功行賞の場で皆も聞いていた。
「そんな事を言ったかな?」と、しらばっくれる事もできない。
あまりにもアイザックの使い勝手が良すぎるので、ついアイザックを頼ってしまったのだ。
「それでは、ドワーフが困っているのを見過ごせと言うのか? そなたならどうにかできると思って命じたのだぞ」
自分のミスに気付いたので、エリアスは話題を逸らそうとする。
アイザックも「ドワーフなんてどうでもいい」とは言えないはずだ。
結果的にオッケーとなれば、ダメージは少なくなるだろうという打算もあった。
しかし、それはそれで墓穴を掘る事になる。
「それがウェルロッド侯への謝罪を求めた理由でもあります。ヴィリー大使の発言は、あくまでも相談といった程度のものでした。ですが、陛下が私に命じられた事で正式な提案となってしまいました。そのような事を、外務大臣であるウェルロッド侯の頭越しに決めてしまうのはいかがなものでしょうか?」
「あっ……」
エリアスは今回の一件で数々の失態をしていた事に気付かされた。
気球で盛り上がったテンションそのままで、その場の思いつきで決断を下してしまったせいだろう。
「一言。たった一言『ウェルロッド侯と相談の上で決める』と仰ってくださればよかったのです。そうしていただければ、ウェルロッド侯の面子は保たれました。ウェルロッド侯は屋敷で仕事の話をされません。噂でも特別何かをしたという話も入ってきません。しかし、それは何もしていないという事ではないでしょう。文官の役割は問題が大きくなる前に解決するというものです。目立つ働きがないという事は、これ以上なく見事に役割を果たしているという事。軽んじられる謂われはありません」
アイザックはノーマンに話した事を引用して、モーガンを庇った。
実際、モーガンが「凄い事をやり遂げた」や「大失敗をした」という噂は聞いていない。
アイザックが知っているのは、ロックウェル王国の前国王であるサイモンの弔問に行った事くらいだ。
それらの事が指し示すのは、日常の業務で済む範囲内で問題を解決しているという事だ。
モーガンの能力に何ら問題などないはずだった。
皆がモーガンを同情に満ちた目で見る。
そしてモーガンに近い者は、エリアスの謝罪を彼がアイザックに頼んだのではなく、アイザックの独断による行動だと理解した。
彼がアイザックの事に関して愚痴っていても、自分の扱いに関しては愚痴っていなかった事を知っているからだ。
「そして、ウェルロッド侯爵家には直系の男が私とサンダース子爵しかおりません。私が死地に送り込まれた事で、ウェルロッド侯の心労は計り知れないものだったでしょう。私はドワーフを助ける事には反対しません。ですが、何か方法がないか検討する時間を取っておけば、印象が大きく変わったはずです。陛下はたった一手間を惜しんだ。その事に対して、ウェルロッド侯への謝罪を求めます」
「……確かに軽率な行動だった。ウェルロッド侯、すまなかった。ウェルロッド侯とサンダース子爵には、後日改めて正式な謝罪を行わせてもらおう」
エリアスも跡継ぎの重要性はわかっているつもりだ。
ウェルロッド侯爵家にとって、重要な跡継ぎを失わせる可能性の高い危険な任務をよく考えもせずにあっさり命じた事を恥じる。
そのため、素直にモーガンに謝った。
「エンフィールド公が、まだ成人していない子供だという事をご理解ください。結婚し、跡継ぎができたあとならば私には異存ございません」
モーガンも意地を張って「絶対に許さない!」などとは言わなかった。
不満はあるが、これからもエリアスに仕えていかねばならないので、意地を張っても立場が悪くなるだけだからだ。
とりあえず、わかってもらえればそれでよかった。
しかし、これでアイザックは終わらせるつもりはなかった。
もう少しエリアスの判断を責めるつもりだ。
(そうしないと俺がやばい)
――エリアスの判断を責める事で、心細くなってハンカチを受け取ったのも仕方ない。
そう思ってもらわねばならないのだ。
当初は――
「エリアスの命令拒否権を貰って、学生の間は遠出させられないようにしよう。そんでもって、爺さんに謝らせて負い目を負わせよう」
――という程度の考えでしかなかった。
だが、今は違う。
エリアスが貴族達の前で話せと言ったせいで、自分の命に危険を感じる状況になってしまった。
五人の中に一人でもヤンデレがいれば「私の気持ちを踏みにじって」と、刺し殺されたりするかもしれない。
(ジュディスとか絶対にヤバい。呪い殺されそうだしな)
この状況を作ったのはエリアスだ。
だったら、彼に責任を取ってもらうしかない。
アイザックは副次的効果として王家の威信も一緒に削る事ができているとは、この時まで思っていなかった。
それだけ、保身に必死になっていたという事である。
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