第323話 ニコルへの説教

 牢獄での一件のあと、忘れないうちにセスからナイフを返してもらう。

 ナイフは貴重な切り札だ。

 ランカスター伯爵が到着するまでは、手元に置いておきたい。

 てっきりセスが嫌がるかと思ったが、アイザックが不思議に思うほどあっさり返してくれた。

 ナイフは近衛騎士に預けておき、モーガンが受け取って帰るという事になる。


 そのあと、エリアスから昼食に誘われる。

 アイザックに断る理由はないので、この誘いを受けた。


 ――上機嫌なリード王国の出席者と、しんみりとした教会関係者。


 この対比もアイザックには不思議だった。

 セスはナイフを諦めたからというので理解できるが、ハンスの変化がアイザックにはわからない。

 訳のわからない変化に、アイザックは戸惑うばかりだった。


 昼食の時にエリアスが――


「もう学校など必要ないだろう。いっその事、役職に就いたらどうだ?」


 ――というような事を言った。


 しかし、アイザックは「未熟な学生ですので、学業はおろそかにはできません」と断った。

 これは二割が本音で、八割は「卒業式のイベントに参加できなくなるじゃないか」という理由によるものだった。

 アイザックが固辞するので、エリアスは残念がっていた。


 昼食を済ませると、アイザックはノーマンからカバンを受け取って学校へ向かう。

 その際には、エリアスを筆頭に一同が門まで見送ってくれた。

 ジェイソンですらしてもらった事のない、そうそうたるメンバーの見送りだ。

 遠ざかっていくアイザックの背中を見ながら、エリアスがモーガンに話しかける。


「謀略家だと知られている謀略家は二流。謀略家でありながら謀略家だと気付かれていない者が一流だと聞く。だが、謀略家だと知られている者を相手に、困難な条件付きの仕事をやってのけるのは一流どころではないだろう。そんな超一流の親と孫を持った感想はどんなものだ?」

「……喜ばしい気持ちよりも、困惑が強いですね。他家のように普通の家族であればどうだっただろうと考える事もございます」


 モーガンは正直に胸中を打ち明けた。


 ――ジュードが普通の親であれば、自分達の人生はどうだったか。


 その仮定は昔から考えていた事だ。

 ジュードよりマシとはいえ、アイザックも色々とやらかしている。

 ほどほどに優秀であってくれれば、それでよかったという思いがモーガンにはあった。


「フフフッ、存外ウェルロッド侯も贅沢なのだな。他の家が欲してやまない者を望まないとは」


 だが、エリアスはモーガンの真剣な思いを笑った。

 これは馬鹿にしているのではなく、世の中が上手くいかない事を笑っていた。

 他家であれば、家の発展のためにもアイザックのような子供が生まれる事を望むはずだ。

 エリアスもジェイソンがいなければ、アイザックを婿養子として取り込もうと、年の差婚だろうが気にせず画策していただろう。

 それをモーガンは、あまり望んでいないという。


(それも無理はないか)


 贅沢な悩みではあるが、アイザックのような子供はともかく、ジュードのような親はエリアスも欲しいとは思わない。

 それはエリアスだけではなく、この場にいる者達共通の思いだった。



 ----------



 学校に到着する頃には、午後の授業が始まる時間になっていた。

 敷地内の維持管理を行なっていた用務員に「んっ? こんな時間に登校?」という目で見られる。

 いや、彼だけではなかった。

 教室の窓際の席に座る生徒がアイザックを見ていた。

 アイザックと気付いて見ている者もいれば、用務員同様に「登校? 昼休みに抜け出していたのか?」というような珍しいものを見る目で見ていた。


(嫌だな……)


 大学であれば昼からの授業もあるので、午前中に予定が空くという事もあった。

 それは他の者も同じだったので、午後からの登校は珍しいものではなかった。

 しかし、リード王立学院は単位制ではなく学年制。

 みんな朝から登校するし、体調不良などで午前を休んだら、そのまま学校を休む者の方が多い。

 アイザックのように、律義に午後から出席する者の方が稀だった。


 とはいえ、アイザックも授業だけのために登校したわけではない。

 自分の目でマイケルがどんな様子なのかを確認したかったからだ。

 校舎に入ると、授業が始まって静かな廊下を歩いて教室へと向かう。

 教室の中から教師が授業内容を説明している声が聞こえてくる。


(やだなぁ、やっぱり帰ろうかな)


 授業中に教室の中に入るという行為をためらってしまう。

 扉を開けた時点で注目される事がわかっているからだ。

 しかし、ここで帰るのも格好が悪い気がする。

 アイザックは開き直って、堂々とした態度で教室の後ろの扉を開ける。

 扉を開けると、予想通り教師とクラスメイトの注目を浴びた。


「陛下から登城するようにとのご下命があったため、登校が遅れました」

「あ、あぁ……。詳しくは知らないが、大変だったというのは聞いている。席に着きなさい」

「はい」


 エリアスの名前を出したおかげか、教師からの言葉はあっさりしたものだった。

 アイザックは教室の後ろ側にある自分の席に着く。

 その間、教師を含む教室内にいる者全員の視線がアイザックに釘付けとなっていた。


「アイザックくん」


 隣に座るアマンダが声をかけてきた。


「今は授業中だからあとでね」


 何かを聞きたそうなアマンダを、アイザックは微笑んでやんわりと注意する。

 アイザックもティファニーに「どうだった?」と聞きたいところだ。

 だが、他の生徒の邪魔にならないよう、アイザックも我慢している。

 休み時間や放課後になるまでは我慢するところだ。

 幸いな事に、アマンダは素直に聞き入れてくれた。

 しばらくは教室の中で浮足立った空気が流れていたが、徐々に落ち着きを取り戻す。

 その分、授業が終わるとアイザックの周囲が騒がしくなった。


「いったいどうなってるんだ? 連絡が来ても信じられない事ばっかりだ。噂も流れているけど、どこまで信じていいかわからないし……」


 カイが説明を求めてくる。

 彼はルメイ男爵という爵位を持っているが、同時にマクスウェル子爵家の跡継ぎ息子でもある。

 王都にいるマクスウェル子爵家の代表として、アイザックからの手紙を受け取っていた。

 それでも、ジュディスを取り巻く状況が信じられなかったので、アイザックの口から説明を求める。

 他のクラスメイト達も同様だった。

 アイザックが何を言うのか耳を澄ましている。


「連絡した通りだよ。ジュディスさんが魔女として処刑されそうになって、大司教猊下と共に潔白を証明した。ただ、マイケルやブランダー伯爵家がどういう行動を取るのかわからないから、ランカスター伯が王都に到着するまではフォローをしてほしいんだ。なんでマイケルがこんな行動を取ったのかとかがまだわからないから、僕も詳しい事情がわからないんだ。ティファニー、頼んでいた事はどうだった?」


 アイザックはティファニーに話を振る。

 これ以上の事を今は話しようがないので、少し話を変えるためだ。

 自分が気になっている事を知ろうとしているだけでもある。


「マイケルくんを見かけたよ。っていうか、教室に来てた」

「教室に?」

「うん。それでね……」


 アイザックの近くに立っているニコルに、ティファニーが視線を向ける。

 自然とアイザックもニコルを見た。


「ニコルさんに『ジュディスさんと別れたから、自分と結婚してくれ』って告白してた。断られて帰ったみたいだけど……」

「…………」


(どこかで聞いたパターンだな)


 アイザックはそう思ったが、このパターンはチャールズと同じだという事には気付いている。

 ティファニーが言い辛そうにしていたのは、やはりその事に気付いていたからだろう。

 アイザックを含め、その場にいた全員の視線が今度はニコルに向けられる。


「えっ、なに? なんで、みんな私を見るの?」


 クラスメイトの視線を一身に受けて、さすがにニコルもたじろいだ。


「私が何かしてって言ったわけじゃないよ。マイケルくんが勝手にやった事だから」


 彼女も視線に含まれている意味に気付いたようだ。

 すぐに自分は関係ないと否定する。

 その態度に、アイザックは苛立ちを覚えた。


(こいつを止めたりはしない。けど、やり過ぎるなと注意するくらいはいいだろう)


 これは主に自分のためだった。

 また誰かの処刑騒ぎに巻き込まれるのは面倒である。

 ここで注意しておけば、少しは落ち着くかもしれない。

 そう思うと、アイザックは行動に出る。

 椅子から立ち上がり、真剣な表情でニコルに詰め寄る。


「えっ、ちょっと……。アイザックくん、どうしたの?」


 いつもと違う雰囲気のアイザックから距離を取ろうと、ニコルは後退りする。

 周囲にいた者達は空気を読んで、アイザックとニコルの邪魔をしないように道を空ける。

 やがて、ニコルは壁際に追い詰められた。

 ニコルは横に逃げようとするが、アイザックが壁に手を当ててニコルの逃げ道を塞ぐ。

 そこでアイザックは、ジッとニコルの目を見つめる。


「自分は関係ないと言ったね?」

「そ、そうだよ。全部、私の事を好きになったマイケルくんが勝手にやった事だし……」


 言い逃れをしようとするニコルに、アイザックは腹が立った。

 トゥルーエンドならどのキャラでも、婚約者キャラは酷い目に遭う。

 それは男が全員クズというだけではなく、ニコルに求められたからと考えるのが自然だ。

 白々しい言い訳が、アイザックの感情を大きく揺さぶった。


「勝手にやった? 確かにそうかもしれないな」

「でしょう」

「けど、マイケルが惚れる原因を作ったのは誰だ? 気のある素振りを見せて、マイケルをその気にさせたのは誰だ?」

「それは私かもしれないけど……」


 ニコルの声は弱弱しい。

 この件でアイザックに詰め寄られるとは思っていなかったのだろう。

 目が露骨に泳いでいる。


「だったら、最後まで責任を取れ! 自分は知らないなどと言って逃げるな! 何もしていないのに相手が惚れたのなら仕方がない。でも、自分から接触して惚れさせたんだろう? だったら、自分の行動の責任は自分で取るんだ! 惚れさせるだけ惚れさせておいて、あとは知らないなどという事は許されない行為だとは思わないのか?」


 この時、なぜかニコルではなく、アマンダが力強くうなずいていた。

 しかし、彼女はアイザックの背後にいたので、アイザックはアマンダの仕草に気が付かなかった。


「でも――」

「でもじゃない! すぐに誰かと結婚を決めろとは言うつもりはない。けど、手綱を取るくらいはやっておけ! ティファニーやジュディスさんだけじゃない。チャールズやマイケルだって、学生の間にこんな問題が起きたら学生生活が過ごしにくくなる事くらいわかるだろう? もちろん、君もだ。もう少し自重させる事はできないのか?」


 正直なところ、これは八つ当たりだった。

 卒業式でジェイソンとパメラが別れるというイベントが起きるのはいい。

 だが、こうして在学中に婚約破棄イベントで手をわずらわされるのは勘弁願いたい。

 卒業式までは我慢しておいてほしかった。


 ニコルも思うところがあるのだろう。

 しばし考え込む。


「……卒業したらいいって事?」

「そうだ。卒業を迎えたら、僕達は大人になる。色恋沙汰も自由にすればいい。大人になれば自己責任なのだからね」

「うん……」


 まだ目が泳いでいるが、ニコルはアイザックの目を見つめ返そうとする。

 その目には希望の色が見えた。

 彼女なりに、何か思うところはあったのだろう。

 しかし、反省の色がないので、アイザックは不満だった。

 だが、これ以上は言えない。

「じゃあ、ジェイソンにパメラと別れないように言っておくね」とでも言われたら大問題だ。

 そこは自重してもらわなくてもいい。

 卒業するまでは我慢してくれれば、それでよかった。


「ちゃんと責任を取れる状況になるまで待つ。もしくは、時が来るまで待たせる。誰かに惚れさせるにしても、それが大事な事なんだと覚えておいてほしい」

「わかった。気を付けるね」

「わかってくれればいいんだ」


 ニコルが素直に聞き入れてくれたので、心の中で小さくガッツポーズをする。

 しかし、妙に素直なのが気になるので、アイザックはなぜかと考える。


(……あぁ、これがニコルを庇う行動になるからか)


 アイザックは言い終えてから、この行動がニコルを庇った行動になっている事に気付いた。

 公爵であるアイザックが叱り、ニコルが謝罪する。

 それを受けてアイザックが許せば、他の者はニコルを責められなくなる。

 ニコルを責めれば、許したアイザックの面子を潰す事になるからだ。

 腹立ち紛れの行動が、偶然にもニコルを助ける事になった。

 だから彼女は、素直に注意を受け取ったのだろうとアイザックは考えた。


 アイザックはニコルから離れる。

 そして、クラスメイトに向き直った。


「詳しい情報が気になるだろうけど、口頭では正確に伝えるのが難しい。間違った情報でねじ曲がった噂は流れてほしくない。昨日は貴族派の家には連絡をしたけど、他の家にも追って連絡する。けど、基本的にランカスター伯爵家とブランダー伯爵家の問題だという事は忘れないでほしい」


 まずは「余計なうわさを流すな」「関係のない家が首を突っ込まないでくれ」と注意する。

 次にアイザックは、アマンダを見る。


「ウォリック侯爵に使者を送っていないのは、王党派まで巻き込むつもりがないからです。すでに貴族派の諸侯にはランカスター伯爵家のサポートをしてほしいと連絡している。ここで王党派までランカスター伯爵家の側に回れば、ブランダー伯爵家は退くべきところで退けなくなってしまう。そうなれば、まとまる話もまとまらなくなってしまう。ジュディスさんのためにも、今は王党派に動かないでほしいと思ったからなんだ。事情は説明するから、もうしばらく待ってほしい」

「うん、いいよ。興味はあるけど……。好奇心で根掘り葉掘り聞かれるのは、ジュディスさんも嫌だろうしね」


 アマンダは自身の経験から、こういう時に興味本位で知ろうとするのはいけない事だと知っている。

 それに「アイザックが政治的にダメだというのだから、本当にダメなんだろう」という思いもあった。

 説明してくれるというのなら、大人しくその時を待つつもりだ。


 ここでアマンダが同意したため、他の者達はアイザックに興味本位で聞き出せなくなった。

 先ほどのニコルの時と同じで、侯爵令嬢であるアマンダが納得した事を覆せる者がいないからだ。

 本当はみんなアイザックから話を聞きたいのに、それが難しくなった。

 ここで話を聞けるのはニコルくらいだが、今は大人しくなっている。


(こういう時こそ、空気を読まずに話しかけろよ)


 というのが、他のクラスメイト達の共通の思いだった。



 ----------



 話を聞きたいが聞けないというのは教室の中だけ。

 本当に聞きたい者は、放課後にアイザックから聞ける。

 カイやレイモンド、ポール、ルーカスといった者達がそうだ。

 他にもアマンダやモニカ、アビゲイルが同行している。

 彼らはウェルロッド侯爵家の屋敷に集まり、アイザックから事情を聴いていた。


「そんな事があったんだ……。大変だったんだね」


 アマンダがジュディスを心配する。

 ジュディスもブリジットに付き添われ、この話し合いに同席していた。

 アマンダは気にしていなかったが、他のメンバーは「髪を上げてるっ!」と、ジュディスの髪型に釘付けだった。

 だが、触れてもいいものかわからないので、誰もその事に触れられずにいた。


「でも、アイザックくんも酷いと思うよ。いきなりナイフで刺すなんてさ。神様が助けてくれるなんてわからなかったんだから、絶対ジュディスさんは怖かったと思うよ」


 話を聞いたアマンダが、今度はアイザックを非難する。

 いくらアイザックがやった事でも、これは認められなかった。

 彼女の言葉に他の者達も同意の意思を示す。

 この場で本当の事を知っているのは、アイザックとジュディスだけだ。

 ここにいるのは信頼のできる者だとしても、誰にでも話していい内容ではない。

 どう答えるかアイザックが困っていると、意外なところから助け舟が出された。


「この子が相手なら、そんなの簡単よ」


 ――ブリジットだ。


 彼女は使っていないスプーンを掴むと、柄の部分をゆっくりジュディスに突き立てる。

 スプーンは徐々に胸の谷間・・・・に消えていく。


「ねっ」


 ブリジットは誇らしげにしていた。

 だが、アイザックを見る目がちょっと冷たい。

 アイザックが周囲を見回すと、男性陣は「あぁ、なるほど」という表情をしていて、女性陣はなぜか冷たい視線をアイザックに向けていた。


「人の命が懸かっている状況で、胸をどう使おうか見ていたの?」


 ティファニーがアイザックに尋ねる。

 表情は普段通りなのに視線が冷たいせいで、どこか棘のある言葉のようにアイザックには感じられた。

 アイザックは、その理由を「持つ者と持たざる者の格差のせいだろう」というくらいにしか考えられなかった。


「いや、それは……。神の奇跡が起きたんだよ。大司教猊下の祈りの言葉が届いたおかげさ」


 必死に言い訳をするが、誰もアイザックの意見に同意してくれなかった。

 セスの言葉が神に届いたというよりは、アイザックが小手先の技で誤魔化したと考える方が自然に思えたせいだ。


(くそう、余計な事を言ってくれたな!)


 ブリジットが助け舟を出してくれたが、代わりに酷い風評被害を受ける事になった。

 ジュディスのサイズに関しては興味があったのは事実であるが、表面には出していないのだから、その辺りの事には配慮してほしいところだった。

 ジュディスが恥ずかしそうに胸を隠す仕草をする。


「いや、本当に違うんですって」

「じゃあ、どうやったのか教えてよ」

「だから、神様が――」

「あんたが神様頼りで、なんにも考えずに行動するはずがないでしょう」

「それは、その……」


 アイザックが口ごもってしまった時点で、神頼み以外の何かがあったのは明白になった。

 この場にいた者は「胸の谷間に上手くナイフの刃を隠したのか……」と、ジュディスにしかできない方法をアイザックが使ったのだと思い込んだ。

 この流れを変えられないと思ったアイザックは観念する。


「とりあえず、どう助けたかという話はなしで。神様が助けてくださったという事を覚えておいてください」

「まぁ、こんな解決方法だとは言えないわよね。わかったわ」

「……どうも」


 ニコルが理解してくれた時とは違い、ブリジットの理解はちっとも嬉しくなかった。

 それどころか、悲しみを背負うばかりである。


「あー、えーっと……。問題が片付くまでは、俺も一緒に下校するよ。ブランダー伯爵家がアイザックに何かするかもしれないしさ」


 空気を読んだポールが、強引に話を変えようとした。

 アイザックは「これこそ助け船だ!」と、友人に心の底から感謝する。


「俺もだ。一ヶ月くらいなら部活を休んでもいいだろう。それに、こういう時のために鍛えてるんだからな」


 カイもポールの意見に乗った。

 鍛えているのはアイザックを守る力をつけるためでもある。

 自分の出番が来たと、名乗り出た。


「僕も協力するよ。武器を持った相手を倒せる自信はないけど、アイザックを逃がす隙くらいは作れるだろうし」

「僕も一緒に帰ります」 


 頭脳派のレイモンドとルーカスまでもがアイザックを助けると言ってくれた。


「みんな、ありがとう」


 彼らの気持ちにアイザックは感謝する。

 良い話の流れでこのまま話題をそらそうとしたが、女性陣の「露骨に誤魔化そうとしていない?」という疑問を完全に流す事はできなかった。

 後日「アイザックは、実のところスケベなのではないか?」という疑惑が、彼女達の間でひっそりと語られる事になる。

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