第206話 ソーニクロフト解放戦

 一方その頃、ロックウェル王国側の陣地では正反対の事が起きていた。


「ちくしょうがぁぁぁ! なんで、なんで親っさんとシャーリーンが殺されてるんだぁぁぁ!」


 怒りに任せて手近な椅子を壊している男、フォード四天王の一人であるトムだった。

 元々は兵士だったが騎士を捕らえたりするなど、一兵卒とは思えない働きを見せたのがフォード元帥の目に留まり、騎士に抜擢された。

 騎士になってからは常に突撃する部隊の先頭を駆け、どのような困難な状況でも兵士達の十歩前を進んでいた。

 戦場では最初の一歩を踏み出す事が困難である。

 彼は兵士達の前を進み、前へ出る勇気を与える事が役目だった。

「将軍にはなれないが、戦場に必要不可欠な男」として、フォード元帥に重宝されていた。

 そのトムが吠える。


「昨晩の見張りを全員殺せ! あいつらが――」


 このセリフは最後まで口にする事ができなかった。

 残る四天王の一人、エドワード・テスラ将軍に殴られたからだ。


「その先は言わせんぞ。黙れ」

「エド、てめぇ悔しくないのか!」

「悔しいさ。だが、見張りの警戒が甘かった事を責めるのなら、それが元帥閣下の責任でもあるという事も認めねばならなくなる。もうやめろ」


 エドワードは顔全体的に髭を生やしており、ライオンのような印象を与える男だ。

 その実態は見た目とは正反対であり、勇猛さではなく判断力が彼の売りだった。

 味方が崩れそうなら、独自に動いて支援する。

 敵に機会を与えない戦場の火消しとしての役割を任されていた。

 その彼が、今はトムを抑える役回りを演じていた。


 ――今回の事件が起きた原因は、国家を挙げての大作戦だという事。


 通常であれば、同じ部隊の者達は皆が顔見知りだ。

 しかし、今回は違う。

 総力を挙げての戦いなので、全ての兵士が動員された。

 そのせいで戦場で戦うための軍組織の兵士・・・・・・と、治安を維持するための治安維持組織の兵士・・・・・・・・・が入り混じっている。


 ――軍組織側の兵士は治安維持組織側の兵士を知らないし、治安維持組織側の兵士は軍組織側の兵士を知らない。


 これは兵士だけに留まらず、彼らの指揮官となる騎士達も同じだった。

 騎士や兵士といっても、組織系統が違うため顔見知りが少ない。

 そのため「お前は誰だ」と誰何する声が飛び交った。

 最初の頃は誰もが「仕方ない」と思っていたが、段々と鬱陶しくなっていった。


 ――特に騎士達は顕著だった。


 兵士達は統一された鎧を支給されているが、騎士や貴族は自腹で鎧を買わなくてはならない。

 統一されたデザインの鎧ではないせいで、味方かどうか判別がつかない。

 そのため、兵士達に何度も誰何される事になった。

 見張りの兵士がいつも同じならいいのだが、交代で勤務するのでなかなか顔を覚えられない。

 何度も「誰だ?」と聞かれる事に、騎士達はウンザリしていた。

 当然、それは態度に出る。


 ――騎士達が不満に思っている。


 兵士達がその事に気付くと、段々と誰何の声は減っていった。

 誰だって上役に嫌われたくなどない。

 生死に直結する戦場ではなおさらだ。

 わざと危険な任務を命じられたりするかもしれない。


 ――警備が甘くなっていたのは、混成部隊によるものが大きい。

 ――責任は全軍を根こそぎ動員したフォード元帥にある。


 フォード元帥は「戦争を早く終わらせれば問題ない。むしろ、作戦の規模を考えればそこまで手を出す余裕がない」と大目に見ていた。

 実際、リード王国軍が来なければ何も問題は起きなかったはずだ。

 見張りを責めるという事は、フォード元帥を非難するのと同じ事。

 だから、エドワードはトムを止めた。

 だが、トムはまだ納得いかなかった。


「でもよ、悔しいじゃねぇか。親っさん達を殺されてよぉ。お前は悔しくないのか?」

「当然悔しいさ。だが、お前が騒ぐせいで一番悲しみたい者が悲しめない。少し黙ってろ」


 エドワードの視線は、フォード元帥の首とシャーリーンの死体を抱きかかえた男に向けられる。

 彼はフェリクス・フォード。

 シャーリーンの息子であり、フォード元帥の曾孫でもある。

 戦場の経験は少なく、フォード元帥とシャーリーンと比べると物足りないところもあるが、将来を嘱望されている若手将校だ。


「ありがとうございます。テスラ将軍。ですが、大丈夫です。戦場での生き死には世のならい。耐えられます」


 フェリクスは気丈にも耐えている。

 しかし、その言葉をエドワードは信じなかった。

 血縁関係にない自分ですら、かなりの動揺を感じている。

 曽祖父だけではなく、母親まで失ったフェリクスが大丈夫のはずがなかった。

 彼は四天王の面々にとって弟分。

 何かしてやりたかった。


「レオに聞いた事があります。ウェルロッド侯爵家には若くして才気の溢れる若者がいると。名はアイザック・ウェルロッド。その者が噂通りなら、暗殺という手段も躊躇わずに使うでしょう」

「アイザック・ウェルロッド……」


 エドワードは、敵を作る事でフェリクスを立ち直らせようとした。


 ――仇討ちに燃える。


 わかりやすい目標を与える事で、悲しみを少しでも誤魔化してやろうと考えたからだ。

 そうする事で、今すぐには無理でもいつかは前に歩み出せる助けになる。

 自分達の中で一番若い――とはいえ三十代半ば――フェリクスのために、戦場の経験が豊富なエドワードがフォローしていた。


「まずは遅滞行動の準備を整える時です。一度自分の陣地に戻られるといいでしょう」

「でも、レオ将軍もまだ帰ってきてませんよ」


 夜襲に向かった兵士達の一部は帰ってきているが、レオ将軍と多くの兵がまだ帰ってきていない。

 彼らを放置して帰る事に、フェリクスは抵抗があった。


「兵士は帰ってきたものの、レオは帰ってきていない。……そういう事です」

「そう……、ですよね……」


 フェリクスは四天王の面々に可愛がられていた。

 レオの死もなかなか受け入れられそうにない事実である。

 フェリクスは天を仰いだ。


「親っさん達の遺体を国に送ってやろう。そんでもって、態勢を立て直してアイザックって野郎をぶっ飛ばしてやろうぜ!」


 トムがフェリクスの背中を強く叩く。

 彼には礼儀作法もデリカシーもないが、元気だけはある。


「そうですね、まだ戦争中です。悲しむ事はあとでできます。今はこの戦争に勝利するために必要な事をやりましょう」


 フェリクスは、トムに少しだけ元気を分けてもらったような気がした。

 今は「戦争に勝ってみせる事が曽祖父と母への手向けだ」と思えるようになっている。

 悲しむばかりではダメだ。

 大切な者を失ったからこそ、彼らの命を無駄にしない行動をしなくてはならない。

 それに、このままでは自分の命も無駄に失ってしまう。

 きっとそれは曽祖父も母も望んでいない。

 生き残るため、仇を討つためにも今は戦う時だ。


 エドワードは、ひとまず安心した。

 これから酷い戦いになる予感がする。

 一人でも多く動ける指揮官が欲しかったからだ。


「フェリクス様。これから私が指令を出します。当面の間、私の命令に従ってください」


 フェリクスはコクリと首を縦に振った。

 エドワードは将軍である。

 だが、フェリクスはフォード元帥の曾孫で一部隊を任されているものの将軍ではない。

 フォード元帥亡き今、軍の代表者は将軍であるエドワードとなる。


 ここで問題になるのが、二人の立場の違いである。

 フォード元帥が亡くなったので、フォード伯爵家はフェリクスが継ぐ事になる。

 対するエドワードは子爵家の当主。

 しかも、フェリクスは尊敬する元帥の血縁者という事もあり、気を使ってしまう。


 ――軍の序列はエドワードが上だが、貴族としての序列はフェリクスが上。


 フォード元帥が生きていた時には考えすらしなかった問題だ。

 エドワードは、失って初めて偉大な人物のありがたみを感じていた。



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 ソーニクロフトを包囲しているロックウェル王国軍の部隊は大きく四つに分けられる。


 南にフォード元帥の率いていた本隊。

 東にフェリクスが率いる部隊。

 北にエドワードが率いる部隊。

 西にレオの率いていた部隊。


 エドワードはフォード元帥の部隊に撤退の準備を命じたあと、レオの部隊に命令を出しに来ていた。

 伝令で済ませてもいいのだが、自分の部隊に戻る途中でもあったので、自分で直接伝えるつもりだった。

 レオの部下達も動揺しているだろうと思われたので、声を掛けて落ち着かせる意図もある。

 彼らに声を掛けて落ち着かせていたところに、遠くから声が聞こえてきた。


「フォード元帥はリード王国軍が討ち取った!」

「シャーリーン、レオも討ち取った!」

「包囲から、すぐに解放してやるぞ!」


「フォード元帥が!」

「そんな馬鹿な!?」


 レオの部下達が動揺し始める。

 エドワードも「フォード元帥が死んだ事を知られるのはまずい」と思い、死を隠して命令を出していたからだ。

 皆の視線がエドワードに集まる。


「我らを惑わす虚言だ。惑わされるな」


 素早く指示を出して考える暇を与えないようにした。

 だが、ソーニクロフトの兵士達が歓声を挙げる。

 その声がエドワードの企みを無駄なものにしてしまった。

 誰もが不安そうな表情を浮かべている。


「騎兵を出せ。くだらん事を言い触らす奴らを追い払うんだ」


 エドワードの命令に従い、レオの部下達が動き出す。


(くそっ、こちらが嫌がる事ばかりやってくる。これがアイザックとかいう者の考えた事なら、よほど根性のねじ曲がった奴に違いない)


 休む間もなく嫌がらせをしてくる相手を、エドワードは苦々しく思っていた。



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「フォード元帥が死んだぞー」


 リード王国軍の騎兵が叫ぶ。

 アイザックの案により、フォード元帥の死を敵味方問わず知らせる事にした。

 とりあえず、包囲しているロックウェル王国軍に近付いて叫べば、街を守る兵士にも聞こえる。

 今回の籠城戦は「助けが来ないかもしれない」という心理的な負担があった。


 そこに――


「フォード元帥討ち死に」

「援軍が到着した」


 ――という朗報を知らせて勇気づける。


 おまけで、ロックウェル王国軍の士気を下げる狙いもあった。

 怒りに燃える者もいるだろうが、大物が死んだと聞いて動揺しない者などいない。

 これはジュードのおかげでもあった。

 ジュードが死んだ時も、安堵する者が多かったとはいえ、大物が突然死んだ事による動揺の方が大きかった。

 ロックウェル王国軍がフォード元帥の死から立ち直れば手強くなるだろうが、今なら弱体化を狙えるはず。

 フォード元帥の死を言い触らす事は大きなプラスとなるはずであった。


 もちろん、ロックウェル王国軍も黙って見ていなかった。

 余計な情報を叫び続ける騎兵を追い払おうと、百騎ほどの騎兵が出撃する。

 こうなっては仕方がない。

 叫んでいた騎兵達は街道上を西に引き始める。

「二度と近づかせない」という気迫を持って、ロックウェル王国軍の騎兵はさらに追いかける。


 ――それを街道沿いに伏せていた弓兵が打ち抜いた。


 周辺の畑の作物は刈り取られていたが、繁みやくぼ地は数多くある。

 そこに隠れていたのだ。

 数でいえば三十騎ほどしかやれなかったが、それで十分だった。

 アイザックが求めていた結果はただ一つ。


 ――リード王国軍には何か策がある。


 そう思わせる事だ。

「何かがある」と思って警戒し、初動が遅れてくれればそれでよかった。


 騎兵を追い払ったあと、リード王国軍が動き出す。

 まず目指すは指揮官を失ったレオ将軍の部隊。

 数も減っていると思われるので、初戦には最適の相手だった。

 この時、アイザックは何も策を使わなかった。

 代わりに使ったのは数の暴力。


 二万の兵で一斉に五千程度まで減っている部隊に襲い掛かる。

 ただそれだけだ。

 街の包囲をしている部隊はすぐに包囲を解くわけにはいかない。

 下手に動けばソーニクロフトの軍が出撃してくるからだ。

 ある程度、態勢を整えてから動かねばならない。


 ――敵が合流する前に、街を包囲している部隊を各個撃破する。


 それがアイザックの狙いだった。

 幸いな事に、ロックウェル王国軍はまだ街を包囲している。

 野戦に向いた陣形を取っていないので、抵抗は少なかった。

 もし、フォード元帥が生きていれば違っただろう。

 レオ将軍の敗戦を聞いた時点で何か動いていたはずだ。

 フォード元帥の死による動揺と、指揮系統の一時的な乱れがリード王国軍に有利な状況を作っていた。

 これも立ち直る時間を与えなかったおかげだ。


 西側の部隊を壊滅させたところで、ランカスター伯爵の部隊とパートリッジ子爵の部隊がエルフを連れてソーニクロフトの中に入る。

 これは後ほど彼らに活躍してもらうためでもあるし、エルフの安全のためでもある。

 平野部で待機するよりも、街の中の方が奇襲を受けないだけ安全だ。


 ウェルロッド侯爵家の軍は、街壁に沿って南へ向かう。

 次の目標はフォード元帥を失った本隊だ。

 こういう作戦を立てられたのも、トミーが手に入れてくれた地図のおかげだ。

 しかし、そこで思わぬ苦戦を強いられる。


 ――それは魔法の存在だった。


 突然空中に岩が出現し、兵士を押し潰す。

 火球が飛んできて、当たった兵士を焼き殺す。

 風の魔法を使っているのか、見えない何かに体を引き裂かれる兵士。


 これは本隊にいた魔法使いの仕業だった。

 彼らは城攻めがダメになったと理解すると、使わなかった魔力をリード王国軍にぶつけ始めた。


(まるで映画みたいだ)


 アイザックは、魔法を見てそんな事を考えていた。


 ――CGを使った撮影。


 その現場に入り込んだような非現実的な不思議な感覚を覚える。


「魔法は弓と同じだ。敵に接近すれば同士討ちを恐れて撃てなくなる。全軍突き進めー!」


 そんなアイザックの隣でランドルフが叫ぶ。

 アイザックが「親父がこんなに大きな声を出せるとは知らなかった」と思うほどの声量だった。

 その声のおかげで現実に引き戻された。


(西側の部隊と違って、さすがに本隊はしぶとい気がするな)


 馬上からではよく見えないが、敵がなかなか崩れないという事はわかった。

 フォード元帥の仇討ちに燃えているのかもしれない。

 こういう時、ゲームと違って俯瞰視点で戦場を見られないのが辛い。

 リアルタイムで状況を把握できないせいで「自分だったらどういう指示を出すか」という事すら考えられない。

 今のアイザックができる事は、ただ黙って父がどういう指示を出しているのかを見て学ぶ事だけだ。


「人間の魔法を見ていると、ワシでもまだまだ現役で戦えそうだな」

「爺様。人間の争いに手出しをしようとしたら、殴り飛ばしてでも止めるからな」


 マチアスが戦場を見て感じた事を口にすると、クロードが強く睨み付ける。

 彼らがアイザック達に同行しているのは、マチアスが強く希望したためだ。

 夜襲を叩き潰す場面を見た事で、昔を思い出して少し興奮してしまったらしい。

 アイザックはマチアスに功績を譲ってもらったので、同行を許すようランドルフに一緒に頼むしかなかった。

 クロードはマチアスの目付け役として同行させられた被害者だった。


「そうですよ、マチアスさん。エルフの魔法で攻撃してしまうと、後々問題になってしまいます。さすがにそれは困りますので控えてください」


 アイザックもクロードの援護をする。

 段階を踏んで戦争に参加してもらうのならいいが、脈絡もなしに戦われるとアイザックも困る。

 その後のエルフとの関係を考えると、対応できそうにない事態にはしてほしくなかった。


「だが、エルフの魔法は一発で人間を十人や二十人をまとめて吹っ飛ばせる。一ヵ所に集中して、開いた隙間から一点突破とか興味ないか?」

「それは、興味がありますけど……。でも、やっぱりダメです。さすがに実戦に参加してもらうのは僕達だけでは責任を取り切れません」


 マチアス本人が「戦いたい」と言っても、下手に参加させるとアロイスなど村の者達がどう反応するかわからない。

 ガッチリと社会の枠にハメこんでからでないと、直接戦闘に参加させるような真似は怖くてできなかった。


 アイザック達が話しているうちに戦場で動きがあった。

 敵の一角が崩れると、そこから雪崩のように崩壊していった。

 フォード元帥の仇討ちで士気が高まっていたとしても、物理的な数の違いには勝てなかったようだ。

 そんな敗北が濃厚な状態でも、踏みとどまって戦う者がかなりいる。

 アイザックは彼らの事を冷めた目で見ていた。


(生きてさえいれば、また戦えるのに)


 これはアイザックとこの世界で生まれ育った者の認識の違いによるもの。

 騎士や兵士の中には「命よりも名を惜しむ」という者が一定数いる。

「生き残っていれば、いつか雪辱を果たす事もできる」というアイザックの考え方の方が少数派だった。

 もちろん、リード王国軍の兵士が目の前にいるので、逃げるに逃げられないという者もいる。

 そういった者達は降伏し、命を長らえた。


 南側のロックウェル王国軍を倒し、追い払ったところでソーニクロフトの街から荷馬車を引いた兵士達が現れた。

 積荷はたっぷりと水が入った瓶だった。

 連戦を終えたウェルロッド侯爵家の兵士達に一時の休息が与えられる。

 気が付けば日が高く昇り、昼前くらいの時間になっていた。

 水を飲みながら、腰に下げた兵糧袋から乾パンを取り出して食べている兵士の姿も見受けられる。

 ちょうどいいタイミングで休憩が取れたようだ。


 これは街に入ったランカスター伯爵からソーニクロフト侯爵に伝えてもらい、用意しておいてもらったものだった。

 南側の陣地を潰すまでは勝てる見込みがあったからだ。

 問題はここから先だ。

 アイザックの狙い通りにいけば、おそらく勝てる。

 しかし、失敗すればそれなりに被害を受ける事になるだろう。

 まだまだ正念場は続く。


「北側にいた部隊が東側の部隊と合流。こちらに向かってくるのが見えました」


 水を持ってきてくれた荷馬車部隊の騎士が、街壁の上から見えた情報を教えてくれる。


(そりゃあ、負けたまま引けないよな。でも、それが失敗の素だ)


 この時点で八割方、アイザックの狙い通りとなる。

 あとはあいてが引っ掛かってくれるかどうかだ。


 アイザックの作戦は、陣形や素晴らしい機動によって味方の力を120%に引き上げたりするものではない。

 相手の力を50%に下げるという、敵の足を引っ張るウェルロッド侯爵家の血筋らしいやり方だった。


(それにしても、戦争って思ったより簡単だよな。ビビッていたのが馬鹿馬鹿しくなる)


 アイザックの中には、もう「一当てして逃げる」などという考えはない。

「勝ち戦で名を上げてやろう」という事すら考え始めていた。

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