第42話 今はまだ待つ時

 ランドルフは領主代理としての仕事がある。

 ずっとクロードやブリジットと行動を共にはできない。

 なので、クロード達との常識のすり合わせはアイザックに任されていた。

 しかし……。


「エルフとの共同生活……。といっても、特別変わったところはないですね」

「それはそうだろう。昔は一緒に暮らしていたんだから、基本的に似たような習慣や作法のままのはずだ」


 三日ほど経ったが、アイザックとクロードは特別気を付けねばならないところが見つからなかった。

 住む場所が違うので生活様式の違いはあるが、触れてはならない禁忌と呼べるようなものはない。

 あるとしても「関東人は納豆が好きで、関西人は納豆が嫌い」という程度の違いでしかない。

 実際には関東人にも納豆が嫌いな人がいるし、関西人にも納豆が好きな人がいる。

 なんとなくそういう傾向があるかもしれないくらいで、取り立ててどうこういうほどのものではなかった。


「そもそも、俺だってお前くらいの大きさの頃は人間と暮らしていたんだ。ある程度の年齢の奴なら問題無く暮らせると思うぞ。まぁ、住んでいたのはこんなに立派なお屋敷じゃなかったけどな」


 クロードは周りを見渡しながら言った。

 人生とは不思議なものである。

 人間との関係が改善される事は無いと思っていたのに、気が付けば上流階級のお宅へ客人として招かれる事になった。

 国交断絶前は平民達の中で暮らしていた庶民なので、華美な調度品に囲まれるのは居心地が悪い。


「あー、そうですよね。戦争が起きてから二百年だから、それ以上の人は人間と暮らしていたんでした。ハハハ……」


 アイザックは頭を掻き、笑ってごまかした。

 エルフとの交流のために、アイザックとの付き合いがあるグレンが正式にアイザック付きの秘書官として任命された。

 その彼がペンと紙を持って、いつでも意見があった場合に書き残せるようにしているのだが、この三日の間は役目を果たせていない。

 出番があったのが、お菓子と飲み物の注文程度だった。

「エルフが人間の暮らしに慣れているかもしれない」という考えが抜けていたアイザックは、グレンに対して気まずい思いをしていた。


「爺様が言っていた二百年前との物価の違いとかを教えてくれれば、多分人間社会ですぐにでもやっていけると思う」


 今のクロードの言葉を”初めてのまともな仕事だ”と、グレンがすぐさま書き留める。

 二百年前の物価の資料が残っているかはわからないが、昔と今の物価の違いを表にして用意すれば役立つはずだ。

 だが、クロードの言葉にアイザックは何か引っかかった。


「うーん……。あっ! もしかして、出稼ぎの日給は3万リードで良いって決まったのって、今の物価を考えてなかったんじゃ……」


 気付かなくて良い所に気付いてしまったと、アイザックは焦る。

 グレンも「ランドルフ様だけではなく、モーガン様にも教えなければならない」と大いに慌てた。


「それは心配無用だ。会談の前に買い物をしていたじゃないか。さすがに村長も3万リードの価値くらいわかって調印したはずだ。サインしておいて、後で知らなかったと文句を言うのは筋違いってもんだ」


 二人をクロードが落ち着かせる。

 契約書にサインをするという事の意味は、エルフだって当然知っている。

 アロイスもよく理解せず、雰囲気でサインするほど馬鹿ではないはずだ。

 契約に関しては問題は無いと思われる。


「だが、モラーヌ村は良いとしても、他の村とも正式に契約し始めると問題になるかもしれない。口で説明するか、俺達の時のように最初に買い物させてくれるとわかりやすくて助かるな」

「確かにそうですね」


 三日目にして進みだした交流に関する意見交換に、グレンは慌てて紙に意見を書き残す。

 書く事が無いからと言って気を休める事などできない。

 アイザックがクロードやブリジットと話す時に、いつどんな話になるかわからなかった。

 気を抜く事ができない分、かえって疲れるくらいだった。

 現に今も雑談から打って変わって、重要な話題に変わっている。

 こうして話が進んでくれる方が仕事に集中できていいくらいだ。


「交易所ができたら、村ごとに一定の買い物資金を融通するという方向で考えても良さそうですね」


 人間に関しては、税を取り立てるために戸籍が作られている。

 しかし、エルフに関してはどこの誰かを証明する手段が人間側にはない。

 個人に金を渡すのではなく「〇〇村は△名いるから△名分のお金を渡す」という風にした方がいいだろうと考えた。


「私からもお聞きしたい事があります」


 ここでグレンが口を挟む。

 秘書官として、主人の補足も立派な仕事だ。


「昔の通貨はお持ちではありませんか? 場合によっては、両替商を交易所に呼び寄せる事も考慮しなくてはなりません」

「昔の通貨か……」


 クロードは目を閉じ、通貨がどうなっているのか思い出そうとする。


「残っていないと思う。もう人間相手に使えないからと、ドワーフから塩や鉄製品を購入するのに使いきったはずだ。お釣りの代わりに矢尻で受け取ったりしているし、あるとしても少量じゃないかな」

「なるほど。では、今のところは両替商を用意せず、現地で商売する商会の裁量に任せても良さそうですね」


 グレンはエルフの所持金の事を注意点として書くに留めた。

 重要度は低そうだ。

 これは商会への通達だけでも大丈夫だろう。


 金の話になった事で、アイザックの思考も自然と金の方面に向いた。

 

「お金か……。今は街道整備で良いけど、出稼ぎで働く人が増えて一気に整備が進んだ後の事も考えておかないとダメだよね」


 いつまでも街道整備だけをやらせておくわけにはいかない。

 道には限りがある。

 さすがに他国まで遠征させるのには抵抗があるので、代替案を考えておかねばならない。


「エルフの魔法は道作りだけじゃない。怪我や病気だって治せるんだ。治療魔法が得意な奴なら、千切れた手足も元通りに治せるくらい凄いんだぞ」


 その悩みを、苦笑交じりにクロードが答えてくれた。

 アイザックは土木作業に意識が向き過ぎている。

 戦争に使おうと考えないのは良いが、考えが偏り過ぎだ。

 エルフの魔法は他の事もできると、柔軟な思考をしてもらわねば困る。

 アイザックは人間とエルフの友好の懸け橋としての働きを期待されているのだから。


「それは凄いですね! 交流が進んだら、各街に何人か駐在してほしいくらいです!」


 医療の充実は重要課題の一つだ。

 教会に治療魔法が得意な者が集まっているらしいが、病人の数に対して数が足りていない様子。

 しかも、エルフのように千切れた体を治すなどできる者などいない。

 エルフという医療従事者を配備する事ができれば、平民だけではなく貴族の支持も得られるだろう。

 松茸狩りに出かけたお陰で、思わぬ金鉱を掘り当てたようだ。


「いえ、アイザック様。それは無理です」


 しかし、その考えはグレンによって否定される。


「どうして?」

「既存の医者や薬剤師の仕事を奪うからです。それに、教会関係者も良い顔をしないでしょう。得られる物は大きいですが、その分反発も大きくなります。この件に関しては、諦められる事を強くお勧めします」


 ――既得権益。


 社会が形成されている以上、かならずどこかで発生する問題である。

 街道整備は労役という税金のようなものだったので、エルフに任せても文句は出てこなかった。

 しかし、医療活動は既存の職業の領域に踏み込んでしまう。

 当然、その職業に就いている者は反発するだろう。


 特に教会という存在が厄介だ。

 人間社会に浸透し、人を操る力に長けている。

 普段は慈愛を説くくせに、気に入らない相手がいれば「神の敵」というレッテルを貼って誰かに叩き潰させる。

 何の力を持っていない今は対抗しようなどと考えられる相手ではなかった。


「グレンがそう言うなら、仕方ないね……」


 言葉とは裏腹に、良い感じの話を潰されてアイザックは不愉快そうに顔を歪める。

 だが、グレンの進言を受け入れるだけの冷静さはあった。

 彼は性格に尖ったところのない、良くも悪くも常識人だ。

 まだこの世界の常識に完全に慣れたと言えないアイザックにとって、グレンの進言は無視できない。


 しかも「強く推奨する・・・・・・」と言っている。

 実質的に「危ないからやるな」と言っているのと同じ事。

 仕える者に何一つ命令する権限のない秘書官ができる精一杯の強い言葉だ。

 グレンにそこまで言われてしまっては、アイザックも大人しく受け入れるしかない。


(わかっていた事だけど、継承権は第一位以外は持っている意味ねぇな……)


 ランドルフのように明確な後継者であれば、侯爵家の力が使える。

 だが、アイザックのように、ネイサンとどちらが将来の後継者になるのかわからない場合、使える力は非常に限定されたものになる。

 教会や医療関係者全てを敵に回して戦えるような権限は持っていないし、敵に回そうとする事すら許されない。

 これらの改革を行ないたいのならば、国を奪ってからにしなければならないだろう。


「どうせ何かをやるにしても、エルフの全面的な協力を得られなければどうしようもない。今は実際に現場で触れ合う人たちが上手くやっていけるのかを様子見して、他の村からも出稼ぎに来てくれるのを待つしかないね」


 まるで自分に言い聞かせるようにアイザックは言った。

 やりたい事は色々とある。

 しかし、それはエルフあってのもの。

 強要して嫌われては意味がない。 


「正直なところ、挨拶に来る貴族の集団が鬱陶しい。だが、暮らしに関しては不満点はない。これはおそらく出稼ぎ組も同じように思っているはずだ。口コミで徐々に出稼ぎが増えていくと思うから、気長に待っておけ」


 クロードがアイザックを慰める。


「えぇ……。エルフの気長には合わせられないよ」


 一応は慰めの効果はあったようだ。

 アイザックが冗談交じりに返す。


「そこまで長くはないさ」


 人間とエルフでは時間の感覚が違う。

 その事をアイザックも理解しているようだが、念のために補足しておく。


「今年は冬場の活動はしないんだろう? 出稼ぎ組が冬に村に帰れば、他の者に話すだろう。来年からは出稼ぎに出る者が増えると思う。少しずつ任せる仕事を増やしていけばいいさ」

「来年かぁ。待ち遠しいね」


 アイザックはクロードの言葉で納得しようとする。

 グレンもアイザックをフォローする。


「医療関係でなくとも、治水工事などのようにやるべき事はまだまだあります。あれをやろう、これをやろうと焦る必要はありません」

「うん、そうだね。まずはできる事から解決していこう」


 不満気だったアイザックの機嫌が直る。

 元々”小さな事を地道に積み上げて、いつか頂点を目指そう”と考えていたのだ。

 エルフというジョーカーを握ったからといって、整い始めた手を崩して大物手を狙う必要はない。


 アイザックの機嫌が直り、空気が和らいだところで雑談へと戻っていった。


「あっ、これ美味しー」

「アーモンドの香ばしさがいいですよね」

「アーモンドなんて食べ飽きてたけれど、こうして食べると新鮮な感覚になるのね」


 三人が話す横で、リサとブリジットがアーモンドクッキーをつまんでいる。

 そう、彼女達も最初からこの場に居合わせた。

 だが、彼らの話に入れないので、自然と二人で雑談をしながらお茶を楽しむようになっていた。

 紅茶を一口飲んでクッキーを流し込むと、ブリジットがリサに質問する。


「なんだか、小難しい話ばっかり。あの子はいつもあんな感じなの?」


 ブリジットの視線はアイザックに向かっている。

 リサはなんとも言えない複雑な表情をして答える。


「昔から大体あんな感じです」

「本当に変な子ね」


 リサは思わず同意しそうになるが、さすがに本人の前で口に出すのはためらわれる。

「そうですね」の言葉は、紅茶と共に胃の中へと流し込まれた。



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 一か月が経った。

 

 クロードとブリジットもある程度屋敷になじみ始めた。

 出稼ぎエルフ達も、酔っぱらいによる殴り合いの喧嘩が起きたくらいで特に問題は起きなかった。


 変わった事といえば、アイザックにも貴族達がチラホラ顔を見せ始めたくらいだ。


 ――母親の実家の差があっても、本人の実力で継承権を勝ち取るのではないか?


 そう思われ始めたからだ。

 エルフによってもたらされる利権だけではなく、アイザックは普段からクロード達を連れ歩いている。

 無知な子供であれば”エルフの怖さを知らない”と、馬鹿にされていただろう。

 しかし、アイザックは子供とは思えないほど頭が良い。

「エルフの持つ力を知ったうえで、対等に付き合う事のできる豪胆さを併せ持っている」と、高く評価され始めた。


 そして何よりも、ブラーク商会を始めとした様々な商会が屋敷を訪れた時に、アイザックに面会を申し込んでいく事が大きかった。

 彼らはエルフとの交易所に関係する事を話しに来ているのだが、官僚や使用人達はそれだけだとは思わなかった。

 商人は利に聡い。

 ネイサンよりも、アイザックの方が有利だと判断して取り入っていると思い込んでしまった。




 この日は、ワイト商会の番頭であるヘンリーとレイドカラー商会のジェイコブがアイザックを訪ねてきていた。

 今月分の入札で、ブラーク商会が55億リードで落札。

 彼らは40億リード前後の入札だったので負けてしまった。

 落札回数で同じ二回に並ばれてしまった。

 尻に火が付いた彼らは彼らなりに考えるところがあるのだろう。


「それで質問とは?」


 アイザックは単刀直入に聞く。

 貴族なら貴族らしく、最初は雑談で場を温めた方がいいのだろう。

 しかし、そのやり方は前世で急かされて働かされ続けたアイザックにはまどろっこしく、結論を急いでしまう事が癖になっていた。


「まずお聞きしたいのは、例えばワイト商会がお抱え商人となった際、レイドカラー商会をパートナーとして仕事を回しても良いのかという事の確認です」


 ヘンリーが先に口を開いた。


「今でもブラーク商会が取り扱っていない分野。装飾品などはレイドカラー商会や他の商会に発注をしたりしていますが……。ワイト商会が侯爵家から発注される装飾品関係の仕事を全て請け負って、レイドカラー商会に仕事を回す。実質的なお抱え商人にしてもいいのかという事ですか?」

「その通りです」


 お抱え商人の旨味は仕事を優先して請けられるというところだ。

 しかし、ワイト商会は食料品を中心に取り扱っている。

 将来的にはブラーク商会のように取り扱う商品を広げていくだろうが、今すぐにというのは無理だ。

 だから、レイドカラー商会と提携して装飾品の分野を任せても、自分達の利益を失うというわけではない。

 利益相反にならない相手と手を組もうというのだろう。

 その考え方には賛成だ。


「もちろん、構いません。僕が皆さんのように取り扱う分野が異なる商会に声をかけたのは、最多落札者が決定したあとにその事を持ち出すつもりだったからです。入札に参加してくださった時点で、なんらかの見返りを与えるつもりでしたので」


 ――敗者にもおこぼれにあずかるチャンスを与える。


 これは最初から考えていた事だった。

 前もって仕事を分け与える事を約束し協力関係を築こうとする事は、推奨しても反対する理由がない。


「では、金銭の貸し借りは大丈夫でしょうか?」


 今度はジェイコブが質問する。

 おそらく、これがメインの質問なのだろう。


「大丈夫ですよ。ですが、お金を貸すと言っておきながら、入札の直前に貸すのを止めるというのは妨害の範疇に入ると思います。協力し合うのなら協力する。手を切るのなら手を切ると、時間に余裕を持って相手に伝えてください」


 アイザックの返答を聞き、二人はホッとした表情を浮かべた。

 ただ指をくわえてブラーク商会が落札していくのを見ているだけではなくなった。

 別れの挨拶をして、彼らは満足そうに退出していった。

 その姿をアイザックはつまらなさそうに見つめていた。


「アイザック様。何かご不満でも?」


 気になったグレンが質問する。


「……てっきり、自分の落札回数を相手に譲るとでも言うと思ってたから、拍子抜けだなーと思ってさ。商人っていっても、根は真面目なんだね。ちょっとガッカリだよ」


 映画やドラマだと、商人というのは悪巧みに長けた悪人という役割ばかりだった。

 悪辣な手段を自分に向けられるのは気に食わないが、毒気のない人物ばかりではつまらない。

 アイザックは商人の中から、自分の影の参謀として頼れそうな人材を求めていた。

 しかし、真っ当な商人ばかりだったので、少し気落ちしている。


「な、なるほど。そういう型破りな方法もありなんですね……」


 想定外の考えだったのだろう。 

 グレンも度肝を抜かれているようだ。


「そういう抜け道に気付いてほしくて、ルールでの制限を最低限にしたんだよ」


 アイザックは一度溜息を吐く。


(やっぱり、元が乙女ゲームの世界だから、狡猾なキャラはユーザーのヘイトを買うからいないのかな? でも曽爺さんがかなりヤバイ奴だから、いないってわけでもない……。……いや、ほとんどの人物が甘いからこそ、極稀に生まれ出る謀略家が際立って目立つのか? それとも、ゲーム開始前の設定だから存在しているのかな?)


 だが、その答えは出なかった。

 自分の周囲に狡猾な者がいないからといって、この世界にいないと決めつけるのはまだ早い。

 そして、影の参謀として頼れる者がいないのならば、人を陥れる事は自分で考えればいいとも思った。

 少なくとも、周囲にいる者達より、アイザックの方が心が汚れているのだから……。


「そういえばさ、グレンのところにブラーク商会とかから接触はなかった?」


 アイザックは話を変えた。

 答えの出ない事を悩み続けるよりも、疑問の解決を優先したのだ。


「……あります。ですが、何も情報は漏らしていません。秘書官として恥ずべき行為はしておりません」


 グレンは何か疑われたと思ったのだろう。

 隠すところはない、と堂々と否定する。

 そんなグレンに、アイザックは「違う、違う」と身振り手振りでその考えを否定した。


「今回の入札に関しては話してもいいんだよ。そういった事も制限していないんだから。だからさ、一つお願いがあるんだ」


 アイザックがニッと笑う。

 子供らしい可愛い笑顔だが、グレンは嫌な予感しかしなかった。


「今度ブラーク商会の人と会う機会があったら、ワイト商会とレイドカラー商会が揃ってアイザックにお忍びで会いに来ていたと伝えてよ」

「えっ、こちらから教えるんですか!?」


「情報を漏らすな」ではなく、あえて「教えろ」と命じられてグレンは困惑する。

 そのような事に何の利点があるのかわからないからだ。


「そうだよ。それで確かめたいことがわかるからね。あっ、ちゃんと見返りの報酬は受け取ってね。無償の情報提供なんて嘘くさいからさ。その報酬は手間賃として自分の物にしていいから、お願いねっ」

「お願いねっと言われましても……。やってはみますが、失敗しても責任は取れませんよ」

「いいよ、試してくれるだけでいいから」


 グレンは戸惑いながらも引き受けた。

 秘書官という立場からすればいけない事だ

 だが”今度は何を見せてくれるのだろう”と思うと、怖いもの見たさでつい手を貸してしまった。


 次回で十回目の入札となる。

 そこでグレイ商会が落札すれば終了。

 ブラーク商会が落札すれば、十一回目でグレイ商会との決戦。

 それとも、ワイト商会やレイドカラー商会がその存在をアピールするのか。

 彼らの運命の懸かった入札。


 不謹慎ながらも、グレンは来月の入札がどうなるのか楽しみにしていた。

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