話を聞いて、考察をする日々 ①

「光、昨日はありがとうございますわ!! はんばーがーしょっぷなるものは初めていきましたが、中々興味深いものでしたわ!! あのはんばーがーなるものはとても美味でしたわ!! それにフォークとナイフを使わずにそのまま手づかみで食べるというのも、忌避感はありましたが、これが光の世界の文化なのですね!!」

「キャエリンはハンバーガーが気に入ったんだね。良かった。色んなハンバーガーショップがあるから、今度、他のお店にも連れて行くね」

「まぁ!! 色々とあるのですね!! 楽しみにしておりますわ!!」




 さて、二度目の二年生が始まって、早二週間ほど経過していた。




 あのはじまりの日は、全く持って夢ではなく、こうして僕にとっての二度目の二年生は穏やかに継続している。杉山たちという意味の分からない存在たちも相変わらず存在していて、僕以外は全く違和感を感じていないらしい。




 ……本当に何で僕だけ、二度目だって認識しているの?

 寧ろ一度目が僕の夢だったりするのだろうか、なんて考えてしまうけれど……僕がこれだけはっきり一度目を覚えているのを見るに、夢ではないと思うんだよなぁ。でも世界全体を巻き戻して、記憶に齟齬がないようにするのなら、お願いだから僕にもちゃんとそれかけてよ!! って、思ってしまう。






 ちなみに現在、フラッパーさんと杉山の会話を聞きながら、僕はへぇーってなっている。

 というか、お姫様をハンバーガーショップに連れて行くのもどうなんだろう? って思うけれど、随分、フラッパーさんは楽しんでいたみたいだ。





 僕もハンバーガーは好きだから好きになる気持ちはわかる。でもフォークとナイフを使わない食事をしたことがなかったって、本当にそういう暮らしをしていたんだなぁとか、そういうことを僕は読書をしながら考えていた。




 ちなみに今、読んでいるのを現代ファンタジーである。普通の暮らしをしていた主人公が、悪の組織の一員になって的な物語だ。ちなみに僕は異世界ファンタジーの方が好きなのであまりこういうのは読んでいなかった。何でわざわざ購入して読んでいるかといえば、今の日常が非日常に変わるという事実の現実逃避である。あとこの状況を踏まえて読みたくなったからだ。










「キャエリン様は、はんばーがーが気に入ったのね。私はそれよりもこんびにに売ってあったサラダがとても美味しかったわ。こんびにはいつでも空いていて、あれだけの種類のものが沢山あって楽しいわ!! こんびににも種類があるのでしょう? 色々見て回りたいわ」

「ヨハネはコンビニが気に入ったのか。コンビニもその地域にしかないものもあるから、見て回るのもきっと楽しいぞ。俺も異世界に行くまではコンビニのありがたみを感じていなかったけど、こうしていざ戻ってくるとコンビニのありがたみを感じるな」

「それは楽しそうだわ。もちろん、連れて行ってくれるのよね。光」

「ああ。もちろんだよ」










 ルードさんは上の名前、ヨハネって言うんだなーっていうのはこの二週間で分かった。そして散々この四人は人前だろうが好き勝手喋っているので、俺には彼らが異世界から来たというのが分かっている。

 ……この四人が全員異世界から来たと勘違いしているとかの方が現実味があるけど、これだけ大声でしゃべっていて周りが何も言わないあたり、やっぱり何か常識改変的なのが動いているのは確かだろう。








 そしてトラジーさんは、やっぱり護衛という立ち位置だからかあまり喋らない。

 まぁ、それはいいんだけどさ、正気を保っている僕としてはやっぱり剣が気になるからどうにかしてくれないかなーって思う。せめてさ、どっかに預けるとかさ、置くとかさ。

 なんか剣を自分の分身とか命とか――マンガとかのキャラクターが思っているような感じで思っているのかもしれないけれど、授業中も傍に剣を置いているってやめない? って思ってしまう。






 ちなみにこういう会話をしていて周りが違和感を感じていない理由も僕はすっかり知っている。

 というのもフラッパーさんが杉山に「大丈夫よ、周りには普通の会話にしか聞こえないから。ひかるは心配症ね」といっていたからである。

 異世界の会話をしていても、周りが気にならないように、普通の会話にしか聞こえないようになんか常識改変が起こっているようなのだ。






 ……何でそれに関しても俺にはそういう常識改変がきいていないのか。なんかこの二週間で、驚くべきことを聞いてもスルー出来るスルー能力が身に付いた気がする。






 それにしても異世界の姫と、異世界のエルフと、異世界の騎士――杉山の周りにはそんな信じられない三人がいる。

 そんな三人に囲まれている杉山が何者かも、話しが聞こえてきて僕は知ってしまっている。







「それにしても光はこの世界でも人気者でわたくしは嫉妬してしまいますわ。もちろん、わたくしの大切な『勇者』である光が人気者であるというのも当然ですが!!」






 ――そう、フラッパーさんが言うには杉山は『勇者』という立ち位置らしい。


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