第16話
「なんだかなぁ……」
自室で一人、ぼんやりと呟く。空は暗くどんよりとして、湿気がベタベタして気持ち悪い。
外から聞こえる雨の音は眠気を誘い、椅子に寄りかかってうとうとしてしまう。
「転生なんてしない……か。うん、まったくわからん」
あのときはただ問い詰めるようなことしかできなかった。どういう意味なのか理解しようともせず、ただ湧いてきた疑問をぶつけただけの行動だ。
それはマノンに逃げられても文句はいえない。
……それにしても、転生しないとはどういうことなのだろうか。
転生に対して拒否感があるのか、なにか嫌な記憶でもあるのか……。
ああだめだ、これじゃあマノンの気持ちを考えずに個人の事情に首を突っ込んでいるだけじゃないか。俺とマノンはただの昔馴染みというだけであって、トラウマや思い出を勝手に推測したり調べたりなんてしてはいけない。
コーネリアの件で会話をするようになった、それだけなのだ。
ニセモノの視線については聞くのを完全に忘れていたが、初っ端から何も言わなかった時点で大きな進展はなかったと考えられる。
俺はヒロインに関わっている現在、既に多くの人から色々な視線を受けている。その多くが悪意のある、よくない感情のものだとは分かっていた。
それだけで人通りの多い道を歩けなかったりら目立つことを一切できなかったりと大変なこともあるのだが、それに加えてこの国の王女であるマノンとも縁があるなんて知られればどうなるかわかったものではない。
会うなら中庭で。
きっと暗黙の了解になっているのだろう。マノンも俺と公の場で関わると大事になるのを理解しているはずだから。
「あー……なんなんだよ、ほんとに……」
分からない。マノンもコーネリアもニセモノも、今になってやっと向かい合った課題が大きすぎる。
頭がボーッとする。雨が降ると頭が痛くなる人は多くいるらしいが、俺は違ったはずなのに。
なにもかもが面倒くさくなってくる。
本当ならシャワーを浴びて明後日までの課題を終わらせて、予習復習を行わないといけないのに。
転移魔法を使ったから、というのもあるのか、身体がだるくて思うように動かない。動く気力もわかない。
……このまま寝てしまおう。その考えが頭に浮かんだ途端、それ以外の思考が停止したように足がベッドへ向かっていく。
直前で足がもつれて、ボスンとその勢いのまま倒れ込む。
ゆっくりと瞼を閉じようとしたその時。
ドンドンドン。
誰かが扉を叩く、部屋に響いた大きな音。
……あれ、デジャブ?
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