第15話



「現金が、無くなってる?!

なに、それじゃあ、本当に探偵呼んだほうがいいじゃないの!探偵ごっこしてる場合じゃないじゃないの!」


 事の重大さにようやくたどり着いた明が大声を上げて俺を叱咤する。

でも、そこで垣見さんとのやり取りを説明してようやく彼女は納得してくれた。


「私はてっきり悪いイタズラをして黙っているいたずらっ子を炙り出す作戦だとばかり思ってたから…

そうよね…そうなると、『犯人は、お前だッ!』なんて決め台詞喜んで言えないわよね〜……」


「…あの、ちょっと、いいか?」


 明の妙案で協力するつもりになっていたらしい不良部の部長殿が、小さく手を上げて意見を発言する許可をもらおうとした。



「お前ら、何の話をしてるんだ?俺には話の内容が全く分からないんだが??」


そりゃ、そうだ。

あんたにゃまだなんにも話していないからな。




・・・・・。


「なるほど。その現金を持ち逃げ、もしくは隠しているやつを炙り出したいと、そういう訳か……それと、美和さんと話が出来るようになるのと、どんな関係があるんだよ?」


不良部部長の話も最もだ。


「ごめん、不良さん。私、あなたにその悪戯を子供達の前で貴女に実演してもらって、美和お姉さんに投げ飛ばされてもらう役をお願いしようとしてたのよ。

そうやって貴方が投げ飛ばされるのを見たら、子供達も悪戯しなくなるんじゃないかな〜って、思ったから……」


・・・なるほど。

たしかにそんなモノ見せられたら子供達は悪さをするのを止めるかも知れない。

だが、それでは犯人を見つけることは出来ないだろうと俺は思うんだが……。



・・・・・いや。


その作戦、改良すれば使えそうじゃないか?!



「明、その作戦、使えるぜ?」


 あるはずの現金が無い状態で…そのお金を犯人から出させる方法・・・。


つまり、そいつを心理的に追い詰めるなら、強面の不良部の方々を使って小芝居を打つ。

つまり、だ。



「あんたには憎まれ役をやってもらうことになるけど、それでもいいか?」


不良部の部長は、すぐに首を縦に振って快諾した。



「美和さんと話せて、美和さんに投げられるなら俺は構わん。つーか、あの人に俺は投げ飛ばされてみたい♡」



・・・あんた。実は見かけによらずマゾっ気があるんじゃないか?(汗)



「じゃあ、簡単に説明するぜ?」


 ポイントはいくつかあるんだが、まずは不良部の、特に部長殿には押しかけ強盗の大役を演じてもらう。

そこで不良部の部長……。



「俺の名前は武田剛たけだ ごうだ。で、コイツは骨臑若生ほねすねわかお、アイツは来杉出俊秀きすぎでとしひで

あのメガネは日野伸太ひのしんたそっちの小太りなやつは羅道得文らどうとくふみ

よろしくたのむぜ☆」


 にかあっ☆と、白い歯を豪快に見せながら簡単な自己紹介を不良部の部長殿が行った。



・・・・・。


 その・・・名前、色々並び替えたらマズイ名前が浮かんできそうな連中なんだが……(汗)

この際そんな事は何処かに置いて、今は忘れましょうか、うん。



…とにかく、この方々に押しかけ強盗役をしてもらい、お金を要求してもらう。

で、お金を出さなきゃいけない状況になれば、犯人がもし、施設の子供達の中の誰かなら…多分出してくれるんじゃないか?と考えた訳なんだが……。



「・・・もし、犯人が子供じゃなかったらどうするのよ?あの何処かで見たような三人組が犯人なら、名乗り出ないでしょうし、それ以外の職員さんのうちの誰かだったら……」



「あのよぉ?悪役やるのは構わねえけどさ、もし通報されちまったら俺達が美和さんに投げ飛ばされるどころの騒ぎじゃ済まなくなっちまうぜ?大丈夫なのかよ?」


 武田の言うことももっともだし、明が言う通りもし職員の中に犯人がいたらたしかに探し出すのは難しくなる。

だけど…。



「まず、通報させないように携帯やスマホは回収する必要があるけど、あんた達は5人いるんだから武田以外の4人で手分けして素早く回収すればそれほど問題はないと思う。

問題は犯人が職員だった場合だけど……」


「それなら、携帯を集めた後に職員さん達をすぐに拘束してしまって、『お金を出せば開放してやる』って条件をつけてみたらどうかな?私利私欲でお金を盗むような人なら案外あっさりお金をだしてくれると思うけど?」



 来杉出はそう言いながら俺を見て言った。

……5人の中では1番インテリっぽい彼がそう言うと妙な説得力がある。


 

「後は、全員がいる日に行わないと意味がない。と、なるとあそこで行われる行事…イベントの日は・・・」


 2日後…クリスマスパーティが施設で行われる予定なのは知っているが……。

施設の子たちが楽しみにしているイベントなだけに、そこでこんな事しちゃうのは気が引ける。

でも、それを言ったら他の行事も似たようなものだし……。



「クリスマスのイベントの日?…そりゃ、いくらなんでも子供達に悪くねえか?

いい思い出が台無しになりかねねんだぞ?」

「…あら?意外ね。不良なんだからそういうの、気にしないかと思ってたわ」


うん。俺もそう思ってたよ、明(苦笑)

ほんと、この人…不良にしておくの、勿体ないよな〜…。



「人を何だと思ってたんだ?これでも節度ある行動を心がけてんだぞ?」


・・・・・普通の不良さんはそういうの、無視するんですよ?

まあ、この人はそういう意味でも信用はできそうだな…。



「とにかくやるなら綿密に計画を練って、子供達にも嫌な思い出にならないように配慮してやるしかないだろうね。姉ちゃんが施設に来るのはその日しか無いわけだし、武田の願いも叶えるのにはその日しか無いだろうからな」


 年末年始になると姉ちゃんは忙しくなってほとんど東京とか海外に遠征するから会う機会はなくなってしまうし。




 その後も俺達は色々話し合い、クリスマスの作戦を練りあったのだった・・・。





・・・そして、運命(?)の日はやって来る・・・。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る