第16話 決戦!?クリスマスで苦しみます・・・
翌日の朝になっても、俺の体は元には戻らず・・・。
学校だって休むわけにもいかなくて。
仕方無く登校してみれば、もはや俺の話は全校生徒に知れ渡っていて……。
だが、意外なことに昨日のような騒ぎにはならなかった。
まあ、考えてみればたしかに珍しい『奇跡』は起きたものの、それ以外は特になにかが変わるわけではない。
元々学校では有名人の部類に入っている事もあったからか、視線はたしかに感じるものの、それ以外は特に気になることはあまりなくて・・・。
何処かの誰かがテレビ局にでもこの情報を流したら、リポーターやらカメラやらが怒涛のように押し寄せてきていただろうがそれもないところを見る限り、校内はほぼ日常を取り戻しているようだった。
・・・まあ、クラスメイトの一部のヤロー達(特に大木の奴がしつこい)や、写真部のエースである鳥間久利須、にはマークされまくっているが、それ以外はさしたる問題はないような…。
「な〜に呑気なこと言ってるのかなぁ?お前さんわ!」
どことなく妖しい色眼鏡で俺を見ている保健医に、自分の身体をさらけ出すのは気が引けるのだが病院へ行くわけにはいかず……。
明と優希に同行してもらい、保健室で簡単な身体検査をしてもらっていた俺はその色ボケ保健医に軽く頭を小突かれていた。
「お前さんの男だった時の身体データと比べても理屈に合う感じでしっかり女体化しとるんだぞ?こりゃあ本当にこのまま女性としてこの後生活をする事を視野に入れなきゃならんかもしれんのだ。呑気なこと言ってる場合じゃないだろう?」
「……理屈に合う…って、どういうことだよ?」
「質量保存の法則って、知っとるか?」
俺は大きく首を横に振る。
元々理数系は苦手な俺はにそんな難しそうな話題は振らないでいただきたい!
「・・・確か中学で習うような…そんな簡単な法則だよ?瞳ちゃん」
流石に裸を見せるわけにはいかないとカーテンの向こう側に追いやられ姿は見えないが、他の生徒が入ってこないよう見張りをしている優希が声だけで分かるくらい呆れ気味に会話に飛び込んできた。
「あのね、エイチ・ツー・オー・・・つまりお水で説明するとね、水は氷になっても水蒸気になっても、形や大きさが変わっても実質の質量は変わらないっていうやつよ 」
「あ、ああ。なるほど、それならだいたい解る……けど、それと俺の身体とどんな関係があるんだ?」
俺のそのセリフに、この場にいる三人から大きなため息が漏れた。
「・・・つまり、だ。お前さんの体は理不尽な変身を遂げちゃあいるが、その変身は理屈にちゃんと適った変身なんだってこと。
身長は縮んじゃいるが、体重は変わらずに胸が大きくなり、お尻も大きくなり、髪の毛が伸びた。レントゲンは流石にうちでは撮れないが、触診した感じだと紛れもなく骨盤は女性と同じように大きくなっているし、臭いまで男性じゃなく女性のものになっている、という事だ」
「・・・それって……どういうこと?」
「簡単に言えば、以前の瞳ちゃんが初めから女の子でした、と言われても、何も知らない人からしてみればそりゃあそうでしょう?っていう話になる…つまり、男の子でした、という話が嘘になっちゃうかもしれないってことだよ?」
・・・・・。
何言ってる?俺は男だった。それは紛れもない事実だぜ?
「うちの校内での騒ぎや反応が昨日に比べて薄くなっている事に疑問を持たないのがおかしいぞ?変だと思わないのか?」
・・・っまあ、確かに昨日は蜂の巣を突っ突いたように大騒ぎになっていたけど……今日、そうじゃないのは皆がそれに飽きているから……じゃないのか?
「もっと事が大きくなるような言い方をすれば、この世界がお前さんを女性として受け入れ始めている…つまり、始めっから目黒瞳は女の子でした、って世界に変わってきているって、事だ」
・・・。
・・・・・。
・・・・・・・。
な?!
「なにいいいいいぃっ?!そんなバカなっ!話があるか?!何だよ、それっ!」
「SFっぽくなってきたけど、大きく言えば世界は瞳ちゃんを初めから女の子だったかのように書き換えはじめた、って言えば良いのかな?
いわゆる時空の歪とかを自然修復する働きが、瞳ちゃんの周りで起きているんだってことだよ」
「・・・で、それがどんなデメリットになるんだ?!?!話が急に大きくなりすぎて、俺はついていけてないんだが(汗)」
正直、俺が人以外の物になっちゃうっていうんなら大変なんだろうが……
男から女に変わったくらいで世界は終わらないだろ?
「瞳ちゃんはそれで……良いの?このままずっと女の子のままでも」
明が急に距離を詰めて、半分裸のままベッドに座る俺に迫る。
「そりゃあ・・・出来れば男に戻りたいさ。けど、元に戻る方法が分からないんじゃお手上げだろ?」
「私は…やだな……瞳ちゃんが女の子のままになっちゃったら、困る…」
「ん?それってどういう・・・」
明は自分で言ったことに気がついて顔を真赤にすると、ぼふっ!と俺の服を俺に投げつけてきた。
「・・・・・私はね、瞳ちゃんが生理用品で悩んだり、お化粧したりするところなんて見たくないの!ただ、それだけよっ!」
・・・。
そっか……明、お前……。
「うん。確かにそりゃ見られたくないな。なんか、キャラ変わっちまうし」
「…瞳ちゃんって……」
「ほんっとうに……」
「なんというか、だな……」
「…?なんだ?」
「「「鈍くて、おバカ」」」
三人が声を揃えてそう宣った。
「なんだよ〜…そんなに変なこと言ってねえだろお?」
「お前さんは今まで男として生きてきたから知らない事だが……。
女性の生理を、ナメるなよ?ありゃあ、初めて体験したら……地獄の苦しみなんだからな?」
え?生理って……
いわゆる、女性の『あの日』ってやつ、だよな?
「女性の生理って……そんなに…」
「苦しいぞぉ?体がだる〜くなって、おも〜くなるんだぞぉ??」
「下っ腹に常に釘が刺さっているみたいな痛みが、駐在し続けるんだよぉ?人によっては常に剣山が子宮の中で転がり回っているような感覚を感じるんだよぉ??」
「男で言えば、気を抜く暇もないほど金的を蹴り上げられているくらいの痛みだそうですよぉ?それが昼夜問わず、寝ている間まで続くんだそうですよぉ〜??」
うわあぁ・・・なんか、いやだな、それ。
「じ…女子って……毎回月一回、そんなことになってんの??」
俺がしどろもどろになりながら聞くと、三人は揃って大きく首を縦に振った。
「その分、性行為で得られる快感は男性の十倍くらいだって言われているけどな。だが、それに溺れて男性とヤりまくると妊娠して、出産する羽目になる。
その、出産の苦しみは生理のそれとは比べ物にならないくらいハードでな……」
「分かりやすく言うと、鼻の穴からスイカを取り出すほどの苦しみなんだそうよ?
瞳ちゃん、それに耐える生活、送りたあい??」
・・・嫌です。
そんなん、絶対に経験したくありません。
俺はブンブンと大きく首を横に振った。
そんな苦しみ、ノーサンキューだ。
「だから、極力性行為は、するな?お前さんがそれを受け入れた途端、生理が始まる可能性が高い。
私達は多分もう少ししたら生理が来る頃だし……だいたい始まるのは似ている周期になっているからな?クリスマスの後あたりは要注意だ」
・・・男に戻るために、そういう事はいたしませんともっ!
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