第13話
・・・。
・・・・・。
・・・え〜っと……。
あの怪しい三人組はとりあえずそっちにおいといて。
まずは集まった情報を整理整頓しておこう。
…とはいえ。
「アキナちゃんはぐうたらくまさんのおおきなぬいぐるみ…セイコちゃんはちびウサギのお家セット、でしょ〜?」
「ゴローとヒューマは野球のグローブに、ツバサと翔はサッカーの新しいボール、渉は大きな粘土でハヤトはレーシングカーのプラモデルが欲しいんだってさ〜」
「丹治君と善一君と祷竜君は3人仲良くチャンバラが出来る模擬刀で、ヒロ君と出雄君と雄平君と登呂和君と薫君はガ●ダムのプラモデルでした」
「竜馬君と国見くんと英治君はテニスのラケット、流火君は大きな船を手に入れて仲間と大海原に出たいか言ってたし、ナル君と佐助君は忍者セットが欲しいって言ってたわ」
・・・・・。
名前と欲しがっているものに奇妙な一貫性があるよ〜な気がしないでもないが(君はいくつ、分かったかな?(笑))
さしあたってうん十万するような物を欲しがっているのは流火くんだけ……か。
つーか、それはそもそも現実的じゃねーし。
「……そ〜いえば、お前は何か情報は手に入れてないのか?
さっきからなんにも言わないなんて、珍しくないか?」
「いや〜…オレはオブザーバーって言われてたからさぁ……コイツラの聞いたことをメモったり、言い渋る相手をなだめて話ししやすくしたりしてたからさ〜…」
頭の後ろで腕を組み、苦笑いしている琉生をフォローするように綾音役の鮎香ちゃんが
「アキナちゃんって、お歌歌う時は上手で大きい声なのに、喋る時の声がすっごく小さいの。だけど琉生君はちゃんと聞き取れて、凄く耳がいいんだよ」
と言うと
「普段あまり話さないし、話しても声の小さいヒロ君と登呂和君ともちゃんとコミュニケーションを取ってくれましたよ」
と三英役の勝彦も、琉生をしっかりフォローした。
「出過ぎたマネはせず、かゆいところに手が届く……オブザーバーとして、彼はちゃんと仕事していたわ。私も佐助くんを探すの手伝ってもらったから」
……と、藍役の愛菜にまでしっかりお墨付き を頂いちゃって、琉生は少し照れながら頭を掻いた。
「そ〜言えばお前らはどうなんだ?ちゃんと姉ちゃんに伝えといてやっから、お前らも欲しいもの言っときな?」
……あくまで犯人を探すために聞き込みを頼んだが、クリスマスプレゼントを配る姉ちゃんサンタのためにもなる聞き込みでもあるので、当然この少年探偵団の皆さんにも聞いておく必要がある。
「僕達も、ですか?」
「そりゃ、そうだろ。なんたって姉ちゃんサンタさんに伝える話だからな?
…でなけりゃ、誰が何が欲しいだなんて普通聞いたりしないだろ?」
……本当はそれがメインではないが、姉ちゃんに伝えるのも事実ではある。
いつもは欲しいものを紙に書いてもらっているんだが、今回は犯人を探すための資料として先に手元に情報が欲しかったからこの方式を取っただけなんだ。
「そーですねぇ…僕は小型のタブレットが欲しいかも」「オレは美味いローストチキンを腹いっぱい食えればそれでいいや♪」「私は新しいお洋服がいいなぁ…かわいいワンピースとか欲しいかも」「…そうね……私は特には無いけど……」「じゃあ、愛菜ちゃんも新しいお洋服にしてもらえば?私とおそろいなんてどお?!」「良いですね〜…女子が可愛い洋服をお揃いで来てるのを見てみたいです」「え〜?勝彦くん、なんかいやらしい目で私達を見てなあい?」「え?ち、違いますよぉ〜…僕はそんな…」
……まるでTVアニメからそのまんま引っ張り出してきたかのような会話が流れる中、琉生だけはその様子を見て微笑んでいる…一番上のお兄さんのような顔をしていた。
「琉生、お前はどうなんだ?!何か欲しいものは無いのか?遠慮しなくていいんだぜ」
「・・・え?オレ?!オレは…コイツら…みんなの嬉しそうな顔が見れたらそれが1番良いんだ」
この施設の年少組では最年長にあたる琉生は、兄弟のお兄ちゃんのごとく自分を後回しにして仲間に譲る事がよくある。
ちゃんと曲がらずに成長してくれている……のは嬉しいんだけど、いくら小学六年生とはいえ、欲しい物くらいはあるだろうに。
「遠慮すんなって。お金を出すのは天下の格闘世界チャンピオンだ。必要なら施設の建て替えにだって簡単にお金を出せる姉ちゃんに、遠慮は無用だろ?!」
「おねにいが金を出すんじゃないんだろ?じぶんがお金を出すみたいに言ってたら、強姉にまた投げられちまうぜ?」
・・・こんにゃろ。
なまじ賢く正しく育った分、痛いトコロを突いてきやがんなぁ(汗)
「……ねえ?華羅ちゃんのお願い事は聞いたの?メモにも書いてなかったんだけど……」
明はテーブルの上に散らかるように広がっているメモ達を手に取りながらこちらに聞いてきた。
…そういえば、あの子の欲しいものは聞いてなかったな……っていうか、今ここで聞けば良いんだけどさ。
「・・・ねえ、華羅ちゃん?貴女の欲しいものは、なあに?」
すると、待ってましたとばかりに俺にひしっ!と抱きついて華羅ちゃんは即答した。
「おねにいちゃん♡
華羅は、おねにいちゃんがいればそれでいいのっ☆」
ふぎゅんっ☆
母性なんてものは持ち合わせちゃいないはずなのに、俺の胸の中の何かがそんな音を立てて何かをアピールしてくる。
一方で、そんな華羅ちゃんを見た明の眉が、一瞬 “ぴくん!” と跳ね上がった。
「・・・あのね、華羅ちゃん?おねにいちゃんは華羅ちゃんの “もの” じゃないんだよ?だから、瞳ちゃん意外の、欲しい “もの” を教えてくれないかな?」
笑顔でそう言っているものの…明の笑顔が、なんだか怖いものに見えているのは多分俺だけじゃないはずだ。
実際、防衛本能を示すように抱きついていた華羅ちゃんの腕の力がぎゅうっ!と強くなる。
「華羅は、おねにいちゃんが、いいのっ!おねにいちゃんが、華羅の、お母さんに、なるのっ!」
か・・・かわいい……んだけど・・・。
困った…。そのお願いは、多分、叶わない。
だって、俺は即席女子だ。
多分…一生このまんま女の体のまま……という訳にはいかないだろう。
……いや、なんだか分からない状態にしか無い俺に、彼女の母親役なんて務まるはずがないし、第一そもそも俺にそんな資格は無い。
・・・が、今はそんな事を討論している場合では無い。
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