第11話 名(迷)探偵 目黒 瞳の迷走


・・・え〜っと。

こおいうときは、まずききこみからやらなきゃな、っと……。


だけど、ききこみって、なんだっけ、か?



「……ねえ?瞳ちゃん。何で体の動きがロボットみたいになってんの?不自然じゃん」


 そんなこといわれてもあきらくん、こんなこと、やったこたぁねんだ、おれは。



「おねにいちゃんが、かくかく動いてる〜。なんか、おもしろ〜い」

「あ、そうか。おねにいは杏姉ちゃんの役だと女の子の役だからプライドが許さないんだな?」


 琉生がウンウンと頷きながら勝手な解釈をして、納得しているが……そんないいものじゃねえし。



「なるほど☆だからあえてロボットのマネして、新しい路線を模索する方向を選んだんですね?と、なると、おねにいはさしずめ名探偵を補助するロボットアシスタント…なんか、かっこいいじゃないですか」


三英君役にピッタリハマりそうなインテリでちょっと紳士的な小学生、勝彦が面白そうにそんな事を言えば



「でもよぉ…ロボットなのに胸が柔らかくっていい匂いがするんだぜ?おかしくねえか?」


…と、源五郎君役にピッタリ当てはまりそうないい体格の小学生、勇太が頭の後ろに腕を回した状態で俺を見ながら小学生というよりはオヤジ的な意見を言うと



「んもぉ。勇太くんたらいやらしい事ばかり言っちゃって!おねにいちゃんはロボットでも探偵のアシスタントが出来るくらいの特別製なんだから、人間に近い造りになってるに決まってるじゃない」


と、綾音ちゃんみたいにチャーミングでしっかりしている女の子、鮎香ちゃんがなかなか鋭いツッコミを入れてくる。



「……そうね。でも、それを言うなら彼女の場合、ロボットじゃなくてアンドロイドとかサイボーグなんじゃないかしら?それなら人工皮膚とか使っていて、外見は人間と比べても見分けがつかないっていう設定にできるし……」


 前の3人よりは高学年で、あまり感情を表さないがこの施設の中ではトップクラスの頭の良さを誇る彼女は愛菜。

藍ちゃんに比べれば科学者レベルの知能…までには及ばないが、まさに彼女にはハマり役だろう。



「ちょっとちょっと。さっきから何言ってんのアンタたち。

 瞳ちゃんは別にそんな役がしたくってこんな動きをしてるんじゃないの。ただ、慣れないことをしようとして回路が若干焦げ付いちゃっただけ。

 緊張してるだけだからね?変な設定付け足したら、余計に変になっちゃうんだから」

「…流石は志乃子。説得力あるフォロー、サンクス☆」

「誰が志乃子だ、誰が」


 いや、声といい、話し方といい、性格が似ているところといい、実にリアル番志乃子様なんだが、明?(笑)



「・・・と、なると後は江南役なんだが。

頭脳は大人で体は…に当てはまる、スポーツ万能で全体音感を持ってるくせに音痴で探偵バカなやつとなると・・・」


「「「「「いねえよ、そんなやつ」」」」」


子供達が声を揃えてしっかり言い切った。




……そりゃ、そうだわな。



「しゃあねえ!じゃあ、俺が……」


琉生が一歩前に出て江南役を名乗り出ようとした途端。


「え?琉生君は違うでしょう」

「何言ってんだ、お前、お呼びじゃねーぞ」

「そうよ!江南くんは琉生君なんかよりずっと頭がいいんだから」

「…そうね、みんなの言う通りだと、私も思うわ」


 配役が決まったわけでもないのにそれぞれのキャラクターが言うようなツッコミを次々に受けた琉生が、一言出る度に何かに殴られたかのような体の動きを見せ、ふらついた。


「・・・そうねぇ〜。あのくらいの算数の問題は、せめて私に聞かなくても解けるくらいの知識が無いと、江南君役は厳しいかな〜?」


ぐっさあぁっ!


 志乃子そのものに言われたかのような明の放った決定的なダメ押しクリティカル・ヒットが琉生の頭部に直撃し、彼はその場で倒れ込んでしまった。


・・・哀れなやつ(苦笑)



「・・・じゃあ、どーすんだよぉ?!このまんまじゃ、いつまでたっても江南ごっこ、出来ないぜ?」


たしかに江南ごっこは出来ないが・・・俺達の目的はそっちじゃないんだ、琉生。



「ま、主人公がいねえんだから、コレでこの場のみんなが主人公になった…って訳だ。

琉生だって、何ならそこのチビ助3人を助ける謎の転校生って役くらいは出来るんじゃねえか?」


「あ、いいですね、それ。なんかそれっぽいし」「江南ほどじゃないけど、運動神経良いしな〜」「つっけんどうだけど、意外と優しいし」「いいんじゃない?みんなのアシスト役って、案外美味しいかもよ?」「いい役じゃん。お兄ちゃんな琉生君に、ぴったりじゃない」


 みんなにこんな感じに祝福を(?)うけ、照れながら頭を掻く琉生を見て、俺もほっと一息つけた。

こんだけ人数がいれば、何かしらヒントになるような情報が手に入るかもしれない。

「探偵」って言葉が少しだけありがたいワードに思えた俺だったが…本番はここからだ。



「じゃあ、みんな。今から俺が言うことをしっかり聞いてくれ。

 みんなにはこれからここの人全員に色々な話を聞いてきてもらわなくちゃならない。

何が事件の解決につながるか、まだ分かんねえから、とにかく・・・」


「話って、何を聞けばいいんだよ?好きな食べ物とか、か?」


…流石は源五郎役の勇太だ。

お約束どおりの、いい質問だ。


「それじゃあ、話は変な方向へ行っちまう。聞いてきてほしいのは、

『サンタさんにお願いしたいことは、何?』だ。

片っ端から話を聞いてきてくれるか?」



つまり。


……もし、犯人が施設の子供の中の誰かなら、そのために必要だと思ったからそんな金額を盗っちゃったわけだし、職員さんならそのキーワードに答えたその答えが何かしらのヒントになるかもしれない。


 今のところ雲を掴むような話だけど、せめてそれが綿をつかめるくらいの実体を持つ何かに変換できるくらいの情報がほしい。



・・・・・頼んだぜ?

少年探偵団の、みなさんっ!

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