第6話 綾瀬晴一郎
「遊善様が少しお礼をさせてほしいとのことです。お待ちいただけますでしょうか」
「ええ、待つのは構いませんが、あまりお気を使わぬようお伝えください」
遊善の悪縁を鼓太郎が切り、少し状況が落ち着いてきた頃。女中に声をかけられる。
「ありがとうございます。……かしこまりました。すぐにお茶を用意いたします」
先ほどの宴会場で、また3人は同じ場所に座っていた。しばらくの沈黙が続く。時枝は既に泣き止んでおり、落ち着いていた。
「…………」
鼓太郎はなんと言ったらいいか言葉を見つけられなかった。ちらりと2人を見ると目が合い、慌てて逸らす。
「話すよ、ちゃあんと」
「時枝さん……」
「……そうだねぇ、改めて糸を切れる人間について話をしようか」
鼓太郎の表情を察したのか、時枝はすぐに話を始めた。鼓太郎も雪も、黙って聞いている。
「縁切りができる条件はねぇ、まず綾瀬家の血筋であること、次に特別な縁切り鋏を持っていること。そして、特別な魂の生まれ変わりであることだ」
「特別な……たましい?」
「ウチも雪も、ある方々の生まれ変わりだ。当時そのお方が使われていた鋏を使って縁を切っている」
いきなりまた不思議な世界観を見聞きし、鼓太郎は目を丸くした。
「最初はたくさんあった縁切りの魂も今は9つとなった。ウチら2人もその9つに含まれているのさ」
「ではあと7人、綾瀬家で縁を入れる人がいるんですね」
「全員が今を生きていたらそうだけど、後の7つは生まれ変わりの最中だからねぇ。今この世にいるのはウチらだけだよ。全員が一度に生きるときは滅多にないのさ」
「なるほど……。それでその9つの一つが、その……まさかの俺だったってことですか?」
鼓太郎は縁を切れた。雪の鋏を使用し、そして血筋のことは帰って聞いてみなければわからないがそれも揃っていたとして。魂の生まれ変わりである、という条件すら整っていたというのか。時枝はゆっくりと首を横に振る。
「9つのひとつじゃないよ。アンタは10つ目だ。突然いなくなった晴一郎様というお方の魂だよ」
「え、いなくなった?」
「もう100年以上前の話だが、その頃は10つの魂が綾瀬家にあった。生きていた縁切りは2人。その時の当主が晴一郎様だった。」
「……」
「魂をまた生まれ変わらせるのは簡単なことじゃなくてねぇ。その人が死んだ時、弔いに特別な儀式が必要になるんだ。晴一郎様はそれが正しく行えなかったから、綾瀬家から生まれなくなったと聞いてるよ」
確かに、生きている人の意思、魂を次の生に渡すのは人間の業ではない。縁を切るという力と合わせると相当な力が綾瀬家には宿っているということになる。
「ある依頼を終えたすぐ後だったらしい。帰り道に銀糸を切ってしまったんだろうねぇ。もう1人の縁切りは未熟なまま次期当主となった。彼はすごく努力してなんとか代を繋いだ。次の魂が生まれて育つまで、なんとか頑張っていたのさ。そのおかげで今の裁ち屋がある」
そこでようやく、雪が口を開いた。雪も魂についてはよく勉強したらしい。
「晴一郎様が姿を消した時、今の鼓太郎さんのように綾瀬家、和郷家とゆかりのない人間に縁が見える人物がいたと記されておりました。きっとそのお方も意味を持った方だったのでしょう」
「縁を切れたんだ。アンタの血を辿れば、綾瀬家に繋がっているのかもしれないねぇ」
時枝がそう言った時に、トントン、と戸を叩く音がした。3人が扉を見ると、引き戸がそっと開かれる。
「みなさん。先程は助かりました」
「高原さん、お加減はいかがです」
扉の前には遊善が立っていた。先ほどとは違う着物を着ており、顔色は幾分か良くなったように見える。
「苦しさが嘘のように良くなりました。本当にありがとうございます」
「それは良かった。鼓太郎がやってくれたんですよ」
「ほう、君が助けてくれたのか。礼を言うよ。本当にありがとう」
「いえ、俺はそんな……!」
「では、これは君に渡そうかな。」
遊善は小さな欠片を鼓太郎に手渡した。白に青緑がかかった不思議な色をしている、陶器のかけらのようだった。
「この欠片は特別な器の一部でね。お守りになるんだ。肌身離さず持っておくといい」
礼を言って鼓太郎はそれを受け取った。部屋の明かりに照らされてそれは金色に光る。
「正直、気休めになればと思っていたから、何が起こったのかはわからない。けれど他でもなく、みなさんの施しが私を救ったとわかります。未知なる力だが、あなた方は本物のようだ」
「そりゃあどうも」
「今後何かあったときは私に頼ることも選択の一つに入れてほしい。手伝えることならなんでもさせてもらうよ」
そう言って彼は微笑んだ。それを聞いて3人はお礼を言い、屋敷を後にすることになった。
「あいつ……もう出てきませんよね」
「気をつけて帰ろう。警戒しないとねぇ……」
夜の街は明かりがあってもどこか不気味だった。今日はやけに静かでなんだか不安になってくる。
「そういえば、一つ解せないことがありまして」
「なんだ?」
「今日俺が店に行く前に会った人物ですが、その……紡ぎ屋の彼ではなかったんです」
「「え」」
「えええええっ!!! ……て、てっきり先ほどの和郷家の人だと思っていました……」
「なんと……じゃあ誰だったんだい、その男は」
「ううん……本当にただの妙な男だったのか……」
3人は足を動かしながらも戸惑い、首を傾げた。相手は確実に鼓太郎のことを知っていたのだから、鼓太郎自身に関する人間の可能性も出てくる。
「な、なんだ?」
突然時枝があたりを見渡した。耳を澄ますと地面を駆ける音がする。こちらに近づいてくるようだ。
「誰か来ます」
「すみません、それ僕のこと…ですねぇ」
その言葉と同時に暗がりから男が出てきた。それは紛れもなく、鼓太郎に話しかけてきた怪しげな青年だった。彼は申し訳なさそうに頭を掻いている。
「ああああ!!こ、この人です!このっ怪しい感じの!!」
鼓太郎は咄嗟に青年を指差し、開いている手をぶんぶんと振った。時枝と雪は一瞬目をぱちくりと動かし、青年に向かってため息をつく。
「なんだぁ、アンタか」
「脅かさないでください……」
「面目無い……」
「ええ、知り合いなんですか!?」
青年は申し訳なさそうにペコリと頭を下げる。最初会った時の印象とはまるで違っていた。
「芦屋と言います。僕は綾瀬家……裁ち屋の記録官をしておりまして。鼓太郎さんに変な男が付き纏っていたのでつい手を加えてしまいました…」
「は、はあ……」
「男に不信がられても困ると思って知り合いのふりをしたんですが、当然面識がないですから……変な感じになってしまって」
「じゃあ、さっきのはアンタか」
「ええ。すみません、ほっとけない性格なもので」
「いえ。大変助かりました」
「さっきって…?」
「先ほど、僕が紡ぎ屋に捕まった時に隙を作ってくれたのです」
鼓太郎はつい先ほどの出来事を脳裏に思い浮かべた。
“っ誰だ!!”
那央真が気を取られ、時枝が雪を助け出したことを思い出す。そうか、と鼓太郎は少し感心してしまった。
「和郷那央真に雪様が囚われてしまったのを見て、どうにかしなければと」
「しかしアンタ大丈夫か? こんなに関わってしまえば……」
「ええ、記録官はクビになりますねぇ」
「え!?そうなんですかっ!?」
「記録官が縁切りと関わるのは禁忌なんですよ。記録官が変わる時の最初の挨拶だけの面識なんです。僕らはただ、出来事を記録しなければいけないので。明日からはもう僕は記録官ではないかもしれないですね」
仕方がないです、と青年は肩を落とした。しかしどこかスッキリしたような顔にも見える。
「何か、悪いことをしてしまったようです」
「気になさらず。もともと記録官の器ではないのです。……しかしこれからは誰も干渉できません。他の記録官は助けなどはしないでしょう」
「大丈夫だよ。あとはなんとかするさ」
時枝はひらりと手を振り、青年はお辞儀をしてその場を去る。その前にそっと一言呟いて。
「とてもいい当主様でした。もっと貴方を書いていたかったです」
青年が見えなくなってから3人は歩き始める。
「……なんだか、不思議な人でしたね」
「ずっと見守ってくれていたからねぇ。情でも湧いたんじゃないのかい?」
「……助けていただいたのに、何も返せませんでした」
「仕方ないさ。……感謝だけして、ウチらも帰ろう。あまりこちらにも余裕がないからねぇ」
その言葉は現れている紡ぎ屋についてだろう。出てくるたびに誰かが糸で構想されればこちらは撃つ手がない。
「そうだ鼓太郎。明日の夕方店においで。渡したいものがあるんだ」
「渡したいもの?」
「晴一郎様の鋏だ。壊れていて使えないが、アンタが持ってる方がいいと思ってね」
「……! ……わかりました。では、今日はこのまま帰ります」
「気をつけてねぇ。誰にも会わないように」
「お気をつけて」
2人と別れ、鼓太郎はすぐに家に帰った。祖母を探せば珍しく起きていて、家系図の場所を訪ねる。もうしかしたら綾瀬の名前がどこかにあるかもしれないからだ。自分に流れる綾瀬の血を辿ることができるかもしれない。
「左の棚の…あった!っげほっ、すごい埃だな」
埃を払い、そっと開くと一番新しい部分に祖母の父、つまり鼓太郎の曽祖父の代まで記入されていた。
「ばあちゃん、旧姓も載るんだよね?」
「多分ねぇ」
巻物を開くと、上から順に先祖の名前が並んでいる。最新の曽祖父の代から上へと遡る形で名前を見ていった。
「え……」
それは曽祖父のすぐ上にあった。案外すぐに見つかってしまったあっけらかんとした気分すら抱く余裕すらない。
「せ、晴一郎……?」
綾瀬家の誰かではなく、そこには晴一郎そのものの名前があった。旧姓までは書かれていないが、曽祖父の上の代であれば失踪した100年前という時期も大きく外れない。
「ばあちゃん……ばあちゃんのおじいちゃんって晴一郎っていうの?」
「ええ。そうだよぉ、物知りで落ち着いた人だったねぇ。なんだか不思議だったよ」
「そ、そっか……」
しかし、祖母の旧姓は綾瀬ではなかったはずだ。それに、綾瀬晴一郎という人物がいなくなったのは死後の儀式がうまくいかなかったから。
「……どういうことだ?」
この家系図に載っている晴一郎という人物も全く無関係とはどうしても思えない。念のためさらに上まで辿ったが、綾瀬の名は見つからなかった。
ーーー
「あ」
「どうも、鼓太郎さん」
次の日。夕方に鼓太郎が布屋を訪れると、店の近くに昨日の芦屋という青年がいた。やけに荷物が多い。どこかへ夜逃げでもするのかと鼓太郎は一度、かける言葉に迷った。
「結構な荷物ですね、どちらまで?」
「行き先は決めておりません。どこか遠くへ旅に出てみようと思いまして」
「その、……やはり?」
「ええ。昨日付けでクビとなりました。」
重大なことだと思うが、彼はあっけらかんとした表情でそう言った。
「そうだ、貴方には話しておくべきですかね」
「?」
「綾瀬家の知らない、綾瀬の記録についてです。」
「えっ」
「……もちろんこれは、貴方が晴一郎様の魂を引くものと言うのが前提ですが、聞き流しにでも聞いてやってください。少し長くなりますから、そちらの椅子にでも」
「ありがとうございます……」
芦屋の提案で2人で街道にある椅子に腰掛けた。彼はそのまま何も見ずに続ける。
「綾瀬家の人間が亡くなったとき、儀式が必要なのは覚えておりますか?」
「ええ、それをしないと綾瀬家との縁が切れて、ご先祖の魂が綾瀬家から生まれないとか」
「さすがです。よく覚えておられますね。東演生はやはり出来がいい。」
「えっと……?」
「すみません、東演はそれほど憧れの学校なのですよ。……話を戻しましょう。綾瀬家の儀式について。……今後もし必要になったことも考えて覚えていた方が良いかと思いますしね」
その表情を見て、鼓太郎はすぐに時枝のことだと悟った。もし儀式をする必要が出るなら、もう後がない時枝しかいない。
「寿命を迎えた綾瀬家の人間は、半日以内に亡くなります。その命が途絶えるより前に、綾瀬家の敷地にある終焉の間へ、その御身を運ばなければなりません。儀式の第一歩として、こちらを間に合わせる必要があります」
「……」
「間に合わなければ、その魂は綾瀬家とは疎遠になります。これが、綾瀬家に生まれなくなるということです。またこれは一説ですが、綾瀬家と疎遠になった縁切りの魂は邪悪な魂として生まれ変わり、この世を惑わすとも伝えられます」
「えっ」
鼓太郎は思わず自分の体を弄った。自分がそれにあたるならばどうしようと不安が押し寄せる。
「あはは、あくまで一説ですよ。大丈夫、貴方は邪悪ではありません。」
ホッと息を吐いて鼓太郎は話を聞く姿勢に戻る。
「……晴一郎様は、これに間に合わなかったと言われています」
「半日の間に、終焉の間へ運ばれなかった……?」
「そうです。しかしその頃は記録官が多くいて、さまざまな記録が残されています。例えば……寿命を迎えた瞬間に既に即死で、運んでも意味がなかった、……その場にいた人間が全員子供で運ぶことができなかった、……死んだ瞬間にその場に誰もいなかった、……間に合ったが、綾瀬家として生まれられない何らかの理由があった……本当に、さまざまな説があります。」
「なるほど……」
「ここまでが、綾瀬家に伝えられました。しかしこの他にただひとつ、とある有力な説がありました。ですが誰にも、口にはできなかったのです。」
「……口にできない?」
「ええ。それは、……」
「………」
「晴一郎様ご本人が、その手で綾瀬家との縁を切った、というものでした。」
「えっ」
「これは綾瀬家の結束を大きく揺るがす内容です。綾瀬家の方へは誰も漏らさず、100年守られてきました。ただ、……貴方が昨日、晴一郎様の情報を自宅で手に入れてしまった。」
「なっ!? なんで知ってるんですか!?」
「昨日までは記録官でしたから。貴方のことも書かせていただいていたのです。」
「ほ、ほう……」
「家系図に晴一郎様のお名前があったとなれば、隠されている説がさらに濃厚となります。壊れた鋏だけが見つかったのも、もう縁を切る必要がないからとも取れますよね。縁切りとして誠一郎様は生まれ変わるつもりがないから、次代で鋏が使われることもない、と。」
鼓太郎は顔をこわばらせる。自分が晴一郎の生まれ変わりであると知った時枝と雪はとても救われたような顔をしていた。そんなに頼られる存在がなぜそのような行動を取ったのか見当もつかない。
「綾瀬家と綾瀬家の人間とを繋ぐ縁は、とても複雑に絡み合っています。銀糸を巻き込んでおり、簡単に切ることはできません。失敗すれば累数が上がり最悪死んでしまう危険もあります。ですが、晴一郎様はとても縁切りの腕が良かった。いなくなったのが彼だったからこそ、この説が有力なんです」
「本当に自分から、切ったのか……?」
自発的に縁を切り、綾瀬晴一郎は何をしようとしていたのか?いくら生まれ変わりと言われても記憶などは持っていない。自分の手を鼓太郎はただ見つめていた。
「さて、僕が出せる情報はこのくらいでしょうか。そろそろ行きませんと、日が暮れてしまいますね」
「あ、そうですね、……どうかお気をつけて。」
スッキリとした顔をして、芦屋が立ち上がり軽くお辞儀をする。鼓太郎も同じように頭を下げた。
「ありがとうございました。今日の話を必ず覚えておきます。…絶対に」
「ええ。綾瀬家がまた次代に続きますように」
彼は一度振り返り、笑顔を向けてきた。鼓太郎は真剣な表情で頭を下げる。
「あ……」
彼が去る間際、少しだけ糸が見えた気がした。しかしそれは一瞬で、何と何をつないでいるかまではわからない。
縁が見えるほど暗くなりかけていることに気がつき、鼓太郎は慌てて布屋へ向かった。
ーーー
「こんにちは」
「こんにちは、鼓太郎さん」
「随分とかかったねぇ」
店に入ると、2人がすぐそこにいて鼓太郎は少しだけ気を抜いた。なんだか難しい話ばかりで気疲れしてしまったようだ。
「すみません、知り合いにあったもので」
「ふうん……」
時枝はなんだか複雑な顔をしていたが、ここで話すような軽い話でもないだろうと鼓太郎ははぐらかす。雪が嬉しそうに箱を持ってきたのでそれでその話は終わった。
「これですよ、晴一郎様の鋏です!」
「おお、これは……」
木箱を開けると、黄金のハサミが半分だけ収められていた。支点を固定するネジはなく、これでは一本のナイフのようだ。
「見つかった時からこの状態らしいねぇ。もう片方の刃は見つからなかったって」
「だから壊れていて使えないって昨日言っていたんですね」
「そうだねぇ、これはお守り代わりだよ。アンタが持つべきだ。」
鼓太郎はそれを大事に両手で持った。時枝や雪の持つ鋏と同じように装飾が施されている。色は黄金に橙がかかったような明るい色をしていた。
「綺麗ですね……」
「こんなにひどい有様だけれど、傷はないよねぇ、ほんと不思議な鋏だよ」
確かに、真ん中を支えるネジが取れるほどのことがあったはずなのに、鋏に傷はなかった。もう半分もどこかで綺麗に眠っているのだろうかと思いを馳せる。
「さて、雪、鼓太郎。これからの話をしよう」
「はい。時枝様」
突然、時枝が真面目な顔をした。鼓太郎もつられて真剣な表情になる。
「これからしばらくは、雪と鼓太郎の2人で依頼をこなしてもらう。雪が糸の色を見て、鼓太郎が切るんだ」
「えっ」
「バレてしまったからはっきりと言うが、あまり時間に猶予はないよ。ウチにもしものことがあるまでに、2人には次代の裁ち屋として一人前になってもらわないといけないからねぇ」
「そう……ですよね」
雪は黙っている。襲いかかるプレッシャーは計り知れない。時枝の表情も厳しかった。
「まずは身内の依頼からこなしてもらう。今から綾瀬家へ向かってほしい」
「わかりました」
「雪、依頼人の情報はさっき伝えたね?鼓太郎にも話しておくように」
「はい。鼓太郎様、説明は行きながらしますね」
「ちょ、雪。……様って、」
「夜だけ、このお名前で呼ぶことをお許しください。それほど貴方が僕にとって敬いたいと思う存在なんです」
「そ、そうか……」
その気迫に圧倒され、鼓太郎は受け入れる。なんとなく慣れない感覚のまま、雪と共に布屋を出た。
綾瀬晴一郎の最後の一説は一切口に出すことなく。
続く
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