第5話
カツーンカツーン
さっきから石の床に靴がなる音しかしない。前を歩いているアリスもさっきの話でそれっきり喋らなくなってしまった。
「なあ、寮に案内してくれるんじゃなかったのか」
「………」
アリスは龍牙の問いかけにまるで応えない。黙々とどんどん前に進んでいってしまう。
「おい、ここどこだよ」
龍牙が小さく溜息をつきながら独り言のようにつぶやくと目の前に巨大な扉が現れた。
「なんだこれ…」
龍牙が思わずそうこぼすと、アリスは何かを詠唱し、扉を開けた。
「中へ」
アリスに言われ、龍牙が少し躊躇いながら中に入るととても広い部屋だった。部屋の中心にはいかにも高級そうな赤いソファが2つ、向かい合って置いてあり、その間には少し低いテーブルが置いてある。
天井にはシャンデリアが吊るされている。ろうそくを立てて使う本格的なもののようだ。
「ここがお前の部屋だ」
「え、こんな広い部屋俺のなのか?」
「ああ。広いといってもここはまだ小さいほうだ」
「えっ、もっと広い部屋があるのか?」
「二階がついている部屋もあるぞ」
「へぇ、すっげ」
龍牙は自分の家よりも広い部屋に圧感されていた。龍牙が圧感されていると、アリスが部屋の扉を閉めた。
「なんで閉めたんだ?」
「これから、この扉の使い方を教える」
「使い方?」
龍牙はアリスが言った意味が分からず、アリスがやることをただ黙って見ていた。
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