第69話 俺たちの時代
過去、勤勉性は称賛されていた。
働けば働くほど成果が生まれる社会だったからだ。
今から150年以上前に書かれた自己啓発書の古典である、サミュエル・スマイルズの『自助論』などは、まさにこの世界観の下に書かれている。
努力すればするほど、豊かになれた時代だった。
額に汗する姿は美しかった。
そこでは「真面目」は美徳だった。
「真面目」など、鼻で笑われる。
1987年にプログラミング言語「Perl」を開発したラリー・ウォールが説いた、プログラマーの三大美徳とは、「怠惰」、「短気」、「傲慢」である。
旧時代では、こうした性質を持った人々は「クズ」だと言われた。
社会不適合者であり、鼻つまみ者だった。
だが、IT化が進んだ私たちの社会では、こうした性質を持った人々こそが、「成功者」であり、称賛される人々なのだ。
「真面目」は、もはや悪徳なのだ。
私たちは認識を改めなけなればならない。
あらゆる既存の価値観や慣習に疑いの眼差しを向けなければならない。
すべては継続的に再評価されなければならない。
さもなければ、あなたが世間から冷たい眼を向けられることになるだろう。
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