第63話 偽論

瑠璃は、この杏奈のファンタジックな夢の内容を、泉のせせらぎのように聴いた。

幻想愛好家ファンタジアンである瑠奈は、この話に胸を躍らせた。

夢とは不思議なもので、こんな荒唐無稽な話を、ひとたび「夢」という言葉で包んでしまうと、興味深く思えてしまうものだ。

ちまたでは、「夢分析」や「夢占い」といった、非科学的で一笑に付してしまうような嘘の学問がある。

人々は夢に対してなんらかの意味付けをしたがる。

しかし、結句、夢に意味はないのだ。


考えてみてほしい。

あなたが空を飛ぶ夢を見たとしよう。

この「空を飛ぶ」という事象は、あなたにとってどんな意味を持つだろうか。

例えばそれは、冒険を意味するかもしれない。

あるいは、恐怖かもしれない。

反対に、心躍る高揚感を感じるかもしれない。

もうお分かりだろうか。

つまり、ある事象が意味するものは、人それぞれなのだ。

この夢には、こういう意味があるなどとは、一概に言えないものなのだ。

世の中にはこうした嘘の学問に莫大な熱意を注いで研究する者がある。

これ自体を筆者は否定するものではないが、大真面目に夢分析や夢占いについての一説をぶつ者は、嘲笑されても致し方ないのである。

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