第60話 Mayflower

創作同好会には、杏奈あんなという少女がいた。

杏奈は典型的な文学少女だった。

彼女は言葉の力を信じていた。

この世界には、人々が太刀打ちすることのできない強大な力があり、文学<言葉>だけが、それから身も守るすべだと信じていた。


むろん、こうしたパーソナリティを持つ少女はイジメに遭う。

彼女は存在を無視されていた。

瑠璃もまた同様だった。

この二人が惹かれ合うのは当然だった。


彼女たちは、それぞれ別のクラスに籍を置いていたが、むしろそれが良かったのかもしれない。

彼女たちは、自分のクラスで見せる表情とは別人のように振る舞った。

驚くことに、ここで彼女たちは笑顔を咲かせていたのだ。

そこには、ある種の華々しさと、自然の調和があった。

ここはオアシスだった。

ここには、彼女たちを含めて4人の生徒しかいなかった。

瑠璃と同じ学年の生徒は、杏奈だけだった。

ここは部活ではなく、同好会なのだ。

彼女たちは幼い家族のようだった。


授業が終わり、部活の時間が始まった頃、杏奈は瑠璃にこう話しかけた。


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