第58話 サドのように優しく、ジュネのように激しく

瑠璃は四葉学院の創作同好会に所属していた。

ここは、主に詩や小説などの創作活動を行う部活である。

瑠璃は父の影響で、幼い頃から小説に親しんだ。

ただ、彼女は文学志向というより、ファンタジー志向だった。

主に、『ハリー・ポッター』や『ダレン・シャン』などの、児童向けのファンタジー小説を愛読した。

幻想は素晴らしい。

幻想は、我々に無限の夢を見せてくれる。

幻想はときに、我々の生きる糧にもなり得るのだ。

聖書などは、世界最古のファンタジー小説と呼べるかもしれない。

しかし、聖書はあまりにも多くの人々の精神の支柱となってきた。

神の救いを享ける、ただそれだけのために生きる者がいる。

この事実を鑑みれば、詩や神話が持つ力を否定することはとてもできない。


小説というものは、すべからくファンタジーだと言えるかもしれない。

あらゆる小説は作り物だからだ。

小説は、読み手はもちろん、書き手もまた救うのだ。

獄中で小説を書き綴ったマルキ・ド・サドや、ジャン・ジュネは、小説を書くことで生きることができた。

日本では、永山則夫などもその例だろう。

物語を書くこと、それ自体が救いだったのだ。


瑠璃には、これが痛いほどよく分かっていた。

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