第55話 それぞれの考え
さて、音楽が人々の心に安らぎをもたらすならば、なぜ音楽を愛する者たちは、不幸で有り得るのか?
ナルシスならば、こう答えただろう。
「音楽を愛する者は、繊細な心を持つからだ」
アポロンならば、こう答えただろう。
「やつらは根本的な問題を解決していないからだ」
アドニスならば、こう答えただろう。
「人間は不幸を感じやすい生き物だからだ」
この三者三様の考え方から、人間にはそれぞれの価値観があり、異なった考えの下に各々が生きているという、奇跡的にも、悲観的にも思える事実が浮き彫りになる。
おそらく、強さとはそれ自体が弱さであり、弱さとはそれ自体が強さなのだ。
全てはコインの裏表に過ぎず、勝ち誇る強者の心の奥底には、怯え切った弱者が息をひそめている。
我々がどのような信念を持つかは、我々一人ひとりがどのような人生を辿ってきたかに左右される。
もちろん持って生まれた気質もあるだろう。
それは天災の災禍であり、選択の落とし子なのだ。
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