第50話 天才の苦悩

こんな家庭に育った瑠璃は、幼少期から不安定な気質にあった。

いったいに、人の性格というものは、生まれ持った気質と、育った環境の掛け合わせで構成されると言う。


筆者はこの点に関して、環境の重大さについて語りたい。

例えば、イギリスの経済学者、ジョン・スチュアート・ミルを見てみよう。

彼は、同じく経済学者であった父、ジェームズ・ミルに、スパルタ的英才教育を施された人工の天才である。

ミルは3歳のときに、ギリシャ語を憶え、8歳のときに、ラテン語、ユークリッド幾何学、代数学を学んだ。

12歳頃から、論理学、政治経済学を学び、かくして稀代の功利主義者、ジョン・スチュアート・ミルが完成したのである。


また、別の例として、アメリカの数学者、ノーバート・ウィーナーが挙げられる。

このサイバネティクスの創始者は、ハーバード大学の教授であった父、レオ・ウィーナーから英才教育を受け、11歳のときに、タフツ・カレッジに入学、14歳のときに、ハーバード大学の大学院に進学した神童である。


そして、ミルもウィーナーも神経症的症状に苦しんでいた。

ミルはうつ病を抱え、ウィーナーは躁うつ病だった。

これは恐らく、彼らが幼少期に親から受けた教育の反動ではないだろうか。

不自然な環境で育てられた子どもは、大人になって問題を抱えるのである。

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