第47話 Labyrinth ~歌舞伎町~

さて、舞台を川崎から、新宿歌舞伎町に移そう。

アポロンである。


この野望の美青年は、極めてワーカホリックだった。

自分の全霊をかけて、ホストという泡沫の仕事と向き合っていた。

あるいは、それは、この青年の繊細さを鏡のように映し出していた。

彼の泉のように湧き出る成功願望は、すべて現実の不満に根差していた。

彼は自信ありげに、ともすれば尊大な態度にも見えたが、それは彼の根の臆病さに由来していた。


この青年にとって、世界は脅威だったのだ。

彼は自分が他者を支配しなければ、他者に支配されると思い込んでいた。

この一種、病的な思い込みは、青年に「力」への限りない憧憬を抱かせた。

力を得ることで、彼は初めて安心することができたのだった。

こうした彼の性質は、調和を重んじる一部の人々、とりわけ、日本の伝統的な企業の体質にはそぐわない場合もあるだろう。


しかし、ホスト業界は違った。

この生き馬の目を抜くような、極端な結果至上主義社会は、彼の肌に合っていたのだ。

彼の暴君的な振る舞いは、売上さえ上げれば良いという、ホストクラブ特有の勝てば官軍的な価値観に染まり、助長させられていった。

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