第46話 夢は泡沫

この一件があった後、青年はMとの連携を辞めさせられた。

青年は、新しくYというスタッフと連携を取りながら、作業をすることになった。


Yは40代の女性で、自閉症の子どもを持っていた。

こうしたプロフィールが、あるいは、青年と合うと思われた一因なのかもしれない。

青年はYが育てている自閉症の子どもに思いを馳せた。

青年がそうであるように、この子どもは生きづらいに違いないと思った。

人には、人それぞれに抱えているのものがあり、人には人の地獄があると思えた。

青年はこうした感傷に無感覚でいたかった。

その方が明らかに生きやすいと思えたからだ。


思えば、皆生きづらさを抱えていた。

子どもたちのように、笑顔で人生を送ることはできないのだ。

皆、自分の時間を生活に捧げるしかなかった。

わずかばかりの金が、退屈を紛らわせた。

人生の空虚さを遠ざけた。

束の間の自由を味わえた感じがした。


皆、資本主義の奴隷だった。

人々は、自らを資本主義ナイズさせていた。

哀しかった。

もっと、自由であれば良いのに、と思えた。

鴉の鳴き声が、青年の耳に届いた。

それはあたかも、人々が作り上げたいびつな社会を嗤っているかのようだった。

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