第46話 夢は泡沫
この一件があった後、青年はMとの連携を辞めさせられた。
青年は、新しくYというスタッフと連携を取りながら、作業をすることになった。
Yは40代の女性で、自閉症の子どもを持っていた。
こうしたプロフィールが、あるいは、青年と合うと思われた一因なのかもしれない。
青年はYが育てている自閉症の子どもに思いを馳せた。
青年がそうであるように、この子どもは生きづらいに違いないと思った。
人には、人それぞれに抱えているのものがあり、人には人の地獄があると思えた。
青年はこうした感傷に無感覚でいたかった。
その方が明らかに生きやすいと思えたからだ。
思えば、皆生きづらさを抱えていた。
子どもたちのように、笑顔で人生を送ることはできないのだ。
皆、自分の時間を生活に捧げるしかなかった。
わずかばかりの金が、退屈を紛らわせた。
人生の空虚さを遠ざけた。
束の間の自由を味わえた感じがした。
皆、資本主義の奴隷だった。
人々は、自らを資本主義ナイズさせていた。
哀しかった。
もっと、自由であれば良いのに、と思えた。
鴉の鳴き声が、青年の耳に届いた。
それはあたかも、人々が作り上げたいびつな社会を嗤っているかのようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます