第41話 アドニスは激怒した
ある日、青年は作業所の職員と言い争いをした。
その顛末を見ていこう。
根がどこまでもコミュ障にできているこの青年は、社内SNSで、職員とコミュニケーションを取っていた。
この青年は頭の回転が遅く、耳にした言葉を瞬時に理解できなかったのだ。
それは耳だけではなく、目で見る情報もそうだった。
この点、文字は彼に優しかった。
文字なら、何度同じ個所を読んでも構わないからだ。
青年は足りない頭で必死に本を読んでいたが、この方法で人よりも時間をかけながら、少しずつ本の内容を頭に入れていた。
ある人から見れば、彼は知的に見えた。
それは彼がよく本を読んでいたからに相違ないが、しかし、彼は自分を決して知的な人間だとは思っていなかった。
むしろ、彼の自己意識は愚かという語に尽きた。
愚かだから、愚かでなくなるために、あるいは単に人から愚かと思われないようにするために本を読むのだった。
無論、それ自体が愚かであることは言うまでもない。
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