第24話 Rendezvous

翌日、午前十時に、桜木町駅北口で、水無月青年は柿谷を待っていた。

みなとみらいでは、多くのカップルが散見された。

彼はこの潮の香りがする海辺の地を歩くたびに、苦々しさを感じていた。

『男女、男女、男女!忌々しい異性愛者どもめ!』

この美青年にとって、男女のカップルというのは、即ち自分を否定する存在だった。

神に祝福されたかのような清々しさで往来を歩くカップルは、青年の眼に毒だった。

自らが邪教の徒であるように、彼には考えられたのだ。

『なぜおれがこんな圧力を感じなければならない・・・、ただ、男を愛したというだけなのに・・・』

青空は澄み渡っていた。

澄明な日差しは、彼の心の中で屈折し、歯がゆさとなって彼を蝕んでいた。

すると、驟然と彼の下に光が降り注いだ。

「水無月さん、こんにちは」


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