第14話 Another

「それでは今月の店売りの目標は1億という事で、よろしくお願いします」

「「「お願いします!!」」」


新宿歌舞伎町にあるホストクラブ「QUALIA」の幹部ミーティングが終了した。

代表取締役を務める風魅颯翔かざみはやとは、煌びやかなシャンデリアを頭上に戴く店内で、一人冷静に計画を立てていた。

『今月の売り上げ目標は2000万、最低でも1日4卓を呼ぶ、店もさらなる大箱へと拡大移転を控える中、できない数字じゃないさ・・・』


この美形ホストには大きな野心があった。

『この資本主義社会では、どう言い繕ったって確実に勝者と敗者が発生する。俺はこんなところで終わる人間じゃねえんだ。俺は頂点に立たなければならない。俺は俺を嗤った奴らを許さねえ、あの屈辱を忘れたことはねえ。だが、それもこれも全て俺が金を持っていなかったせいさ・・・貧乏ってのは本当にみじめだ、貧乏は、人間から最低限の尊厳さえ奪っちまう・・・俺は金を稼がなければならない・・・もっと、もっと金が必要だ・・・』

彼は、彼に魅せられた女たちに携帯でメッセージを送りながら、野望の情熱を熱く燃え滾らせていた。


「颯翔さん、チームミーティングの時間です、お願いします」

後輩のホストが彼の熱くも冷たい思考を中断させた。

「ああ、今行くよ」

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