第15話 歌舞伎町のアポロン

追憶 ~風魅颯翔かざみはやとの場合~


俺の母親はホステスだった。

大層なもんじゃない。雇われの、場末のホステスさ。

八王子の小せえアパートに、女一人と、ガキが三人。

父親はロクでもない男だった。

毎日酒を浴びるように飲んでは、家族に当たり散らすクズだった。

父親の怒鳴り声と、母親の泣き叫ぶ声。

馬鹿のくせに、ガキを三人もこしらえて、挙句の果てが離婚して絶縁さ。

典型的な崩壊家庭だった。

人生に希望なんか持てなかった。

希望なんか、ある程度裕福で、余裕のあるやつだけが持てる特権みたいなものさ。

日々を生きる事で精一杯だった。

妹が二人。長男の俺。

物心ついた時から、自分の人生と未来に対して、強い責任を感じていた。

このくそったれた人生を生き延びなければならなかった。

誰にも助けは求められなかった。

人と人との関係なんか、みんな所詮利害関係なんだよ。

俺を助けるメリットなんかない。

だから俺は自分の力で生きなければならなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る