第12話 開幕
人生は小説のようでなければならない。
それが青年の信条だった。
この青年にとって、すべての体験が語られるべきであり、すべての感情は人生という大きな車輪を押し動かすための媒介だった。
青年にとって、人生の成功や失敗はどうでもよかった。
なぜなら成功も失敗も同様に語る事ができ、同様に人生の1ページを形作るものだったからだ。
彼は人生の中で、愛を最も崇高な位置に置いていた。
なぜなら愛とはそれ自体が真善美であり、人生の中で大きな割合を占める感情であるからだ。
『愛するためならば、俺はどんな犠牲も払おう。たとえそれが自らを破滅に向かわせるとしても・・・』
愛のために破滅する事も厭わないこのウェルテルが恋したのは、彼と同じ職業訓練校に通う青年よりも3つ年上のある男だった。
青年は彼の筋肉で引き締まった厚い胸に抱かれたいと思った。
スポーティーで、それでいて完成されきっていない彼の肉体は、青年の理想のそれに近似していた。
『恋とは飛び込むものだ。たとえそれが死への飛び込み台だったとしても・・・』
青年の破滅劇が始まった。
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