第11話 ウェルテルの啓示

青年が通う職業訓練校において、ある出会いがあった。

青年と同じクラスの、青年より3つ年上の男性だった。

名を柿原という。

顔は美形ではなかった。

しかし、柿原の誰に対しても優しくおおらかに接する態度と、癒しの雰囲気に、人との結びつきに飢えていた青年は惚れ込んでいた。


元来、このナルシスは、惚れっぽい気質であった。

どんなものにも美しさを見出すかれの性質が、彼を恋愛体質にさせていた。


なんとかして、この年上の想い人に近づきたかった。

青年はふいにゲーテの『若きウェルテルの悩み』を思い出した。

叶わぬ恋の末に自殺したウェルテルの悲嘆が彼の胸に去来した。


恋の末に破滅するのもいいかもしれない。

青年はそんな直観を抱いた。

青年はこの想い人をシャルロッテとすることに決めた。

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