第7話 裏切り

夢が終わった。


破滅しなければならなかった。

破滅。なんという甘美な言葉だろう。

青年はこの言葉に魅せられていた。


老いが彼の美しさを破壊する前に、自らを破滅させるしかなかった。

ドリアン・グレイのように、自らが十字架を背負い込むかわりに、永遠の若さと美しさを得たかった。

あらゆる美少年から美が失われ、醜い中年となることが許せなかった。

現実は残酷だった。

美しさを保ったまま、破滅するしかなかった。

それは、美に愛された自分の宿命だと思えた。


『どんな美貌を持つ女でも、やがて母になる。老いてゆく。それならなぜ、彼女たちは美を欲する?美とはすべからく劣化してゆく運命にあるのに、なぜ彼女たちは美に拘ろうとする?』


青年は、いっそ美という概念が失われてしまえばいいと思った。

そうすれば、彼を悩ませる不吉な未来が消えるのではないかと思った。


「おれは美を愛しているようで、実は憎んでいるのかもしれない・・・。ハハハ・・・。ハハハハハ!」

哄笑が部屋の中に響き渡った。


明日は、彼が通う職業訓練校の登校日だった。

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