第3話 最初の調査?
蒸し暑さを感じて目が覚めた。
魔法で気温を下げるが、それでも赤外線輻射による熱を感じる。
アルミの外装が木漏れ日に当たって熱くなっているのだろう。
外装部分をやはり魔法で温度を下げる。
やっと快適になった。
ベットから身を起こす。
魔法で外を見るとまだ明るい。
母恒星の位置から見ると午後3時くらいだろうか。
いずれ日時計を作って時間あわせをしよう。
ただオースは1日22時間だから毎日2時間巻き戻す必要がある。
それに1年も267日。
ならカレンダーや時計を購入した方がいいだろうか。
そんな事を考えつつベッドから出て、靴をはいて外へ。
拠点を外から見てふと思う。
外で作業できる場所が欲しいかなと。
思うだけでは何にもならない。
ならばさっそく作るとしよう。
広さはある程度あった方がいい。
将来的にどんな作業をしてもある程度余裕があるように。
差し当たって奥行きをコンテナ用地とあわせて、幅をコンテナ5~6個分くらいでいいだろうか。
つまり奥行きが5m程度、幅が10mちょっと位で。
大きさが決まったので作業開始だ。
方法論は先程拠点用地を作ったのと同じ。
ただし今度は草木のうち使えそうなものはアイテムボックスに収納する。
コンテナを出した事で容量の余裕が出来たから。
剪断魔法を使った後、収納する物を選別する。
たとえば食べられるとされるでかいゼンマイ。
これは収納しておくべきだろう。
常食できるか確認しておきたい。
樹木も木材として使える可能性がある。
それにこのヘイゴ、幹の芯部分も食べられるそうだ。
煮ると大根のような味らしい。
そうでなくとも焚火用には使えるだろう。
だからこれもまるごと収納。
残りの草は焼いて灰にした上でこれも収納。
あく抜き用に使えるだろう。
山菜等でよく使う方法論だ。
あとは先程と同じ、砂を持ってきて魔法で混ぜた後、地面を熱で固めるだけ。
赤熱するくらい熱した後冷やせば、平らで固くてそこそこ綺麗な作業場が無事完成だ。
しかしその時、知らない疲労感に似た何かが僕を襲った。
頭痛の前兆のような重さにも似た感覚だ。
これが何か僕はすぐに理解する。
魔力が減ったという感覚だ。
この世界の魔法にはステータス閲覧やスカウターなんていった便利なものは無い。
体力と同じように消耗は疲れとして感じるだけ。
魔力が無くなると最悪昏睡状態になるらしい。
限界に達する前に休憩する必要がある。
ただもう少しは大丈夫と感じる。
この後この辺で軽く作業をする分には問題ないだろう。
さて次は海に行こうか。
歩きながら道も作ろう。
何度も通る事になるだろうから。
こっちは樹木はなくあの昆布のような草だけ。
ほぼ砂地で水はけも悪くなさそうに感じる。
草を焼き払い、ベクトル操作魔法で土を固めるだけでいいだろう。
この程度ならそれほど魔力を消費しない模様だ。
先程のような疲労を感じない。
草地から砂浜に出る。
それでは海の様子を魔法で確認しよう。
偵察魔法の視点を動かす。
上空から、海中1mから、2mからと位置を変えながら近辺の海の様子を確認。
この付近の海底を含む地形及び態様をほぼ把握。
砂浜から海に入ると10m先位まで徐々に深くなる。
10m位先からは深さおよそ3m程度で、そのまま先に向かって更にゆるい傾斜で深くなっていく。
海底は主に砂で所々に小さな岩もあるという地形。
魚もそこそこいるようだ。
それでは魚を捕まえよう。
今回は大規模に獲るつもりはない。
魔力の残りが心配なのでお遊び程度。
僕が用意してきた魚を捕れそうな道具は釣りセット2式、たも網大小、投網大中小、カニ籠。
とりあえず釣りを試してみよう。
理由は簡単、やりたいから。
アイテムボックスから中型スピニングリール付き長さ5m弱の投げ竿を出す。
まずは一番簡単に釣れそうな仕掛けを出す。
ウキ、
いわゆる投げサビキと呼ばれる仕掛けだ。
魚が多いのは水深およそ1.5m位。
だから針の位置がその前後になるようにウキの位置を調整。
餌は本当は現地調達がベスト。
しかし今回は時間と手間を省く為、日本で購入してきた冷凍オキアミブロックを使う。
魔法が使えると冷凍品も自由に解凍出来て便利だ。
解凍したオキアミを
これくらい隙間をあけないと撒き餌が海中で広がりにくい。
ここの地形なら砂浜上の濡れない場所から仕掛けを投げても届くだろう。
そう判断して僕は竿を持ち、リールをセットして投げる。
悲しい位に仕掛けは飛ばず方向もかなり左にズレた。
投げ釣りが久しぶりだったし仕方ない。
それでも一応ウキ下の深さは3m位あるし魚の気配もある。
だからこのままで様子見だ。
少し待つだけで魚が寄ってきた。
偵察魔法は視力以上に状況が確認できる。
ただ寄ってきた魚はあまり大きくはない。
まあ初回だしこれでいいだろう。
ウキが沈んだので竿先を上げる。
明らかに生物が引く手応えを感じた。
一気にリールを巻こうとしたが予想外に抵抗。
この仕掛けに使っている糸は結構細い。
力ずくで引いたら切れてしまいそうだ。
波にあわせて少しずつ巻いて、近くまで来てから陸地へ引き抜く。
5本針の仕掛けの3本に魚がついていて、砂地で派手に跳ねている。
この手の仕掛けで釣ってしまった割には結構大きい。
3匹とも全長およそ300mm程度、銀色のいかにも魚らしい形をしている。
さっと魔法で温度を0℃近くに冷やすと跳ねるのを止めた。
知識魔法で食べられるかどうか調べてみよう。
『シプリン:全長最大80cmになる硬骨魚。幼生時は木の葉状の形をしている。沿岸部および汽水域に生息。サルダルバ島ではつみれ状にして鍋に入れて食する。毒や寄生虫等の心配は無い』
3匹とも同じ魚だった。
とりあえず夕食用にアイテムボックスに入れておこう。
まだ
勿体ないからもう一投しよう。
今度はさっきよりかなり遠くまで投げられた。
ざっと倍、40m位の飛距離だ。
今度も見ている間に魚が集まってくる。
今度は先ほどよりやや大きな反応も混じっている。
この仕掛けで大丈夫だろうか。
ウキが消えた。
さっと竿先を上げて針をかける。
大きい、間違いなくさっきより大きい。
仕掛けが切られそうだ。
仕方ない。
場所を絞って魔法で温度低下をかける。
魔力が減ったあの疲れに似た感覚。
だがもう少しは大丈夫そうだ。
抵抗がなくなったのを見計らって一気に魚を引っ張り上げる。
押し寄せてきた波にあわせて砂浜へ。
先ほどと明らかに違う魚が1匹だけついていた。
大きい。
500mm近くありそうだ。
『スコンバ:全長最大80cmになる硬骨魚。沿岸域および大洋浅海に生息。フライにして食するが生でも可。毒は無い』
今度は先ほどより少し美味しそうな気がする。
これもアイテムボックスへ収納。
とりあえず釣りはこれでいいだろう。
コマセ籠を全開にして一度海に入れて洗い、更に手元に引き寄せる。
魔法で真水を出して仕掛けと竿を洗った後、仕掛けを最初に巻いてあった紙にまきつけ、竿を短くしてアイテムボックスへ。
アイテムボックス収納ならこんな仕舞い方をしても他にひっかかったりしない。
さて、魚2種4匹。
食べられる草としてでっかいゼンマイ。
これだけ採れれば初日は十分だろう。
それにかなり魔力を使ってしまった。
あの疲れに似た感覚が残ったままだ。
拠点でも料理や水、照明に魔力が必要。
この辺で屋外活動は終わりにしておこう。
それでは拠点に戻るか。
砂浜部分は少し体力を使うが、その先は道をつけてある。
それに距離そのものがかなり近い。
およそ100m程度。
あっさり拠点に到着。
またアルミ製の外板が熱せられていたのを確認。
これくらいなら魔法を使ってもまだ大丈夫だろう。
軽く冷却してから中へ。
風魔法で空気を入れ換え、照明魔法を起動してから扉を閉めて鍵をかける。
さて、それでは料理をしながら今後の計画を練るとしよう。
事前に一応は構築済みだけれども。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます