第2話 拠点の整備(2)
扉の次は外装全般。
所々にある傷の補修をしておこう。
一応雨漏りは無いらしいが念の為だ。
このコンテナはアルミ製のトラック用。
大きさは2200×2080×4400、単位は
だから上に上がるにはハシゴか脚立が必要だ。
地球上ならば。
しかしここは惑星オース。
重力加速度は地球とほぼ同じだが魔法が存在する。
僕はコンテナの真後ろに立つ。
この部分は先程突き固め、更に焼き固めた場所。
だから多少力をかけても問題ない。
『身体強化魔法!』
惑星オースでは一般的だが僕にはアルゴリズム理解不能な魔法を起動。
軽く足を曲げジャンプする。
コンテナの上部より少し高くあがった。
そのまま予想通りの放物線を描いてコンテナの上に無事着地。
思わず両手でガッツポーズ。
僕は運動能力に自信が無い。
それでも此処惑星オース上ではこんなアクションが出来てしまう。
その事が楽しい。
それでは屋根部分の傷んでいる部分を補修するとしよう。
腐食して穴が空いたら大変だから。
僕はアイテムボックスからアルミパテとヘラを出し、作業を開始した。
◇◇◇
屋根および壁面の外側補修はひととおり終わった。
慣れない作業で疲れた。
しかしまだ作業は残っている。
コンテナ内側の作業だ。
扉を開けてコンテナの中へ。
灯火魔法を起動した後、扉を閉める。
まずは内側から鍵をかけられるようにする改造。
扉に大型のゲートラッチ金具を両面テープで貼付。
完成後、念の為ロックした状態で扉を押してみた。
これだけでは強度が不安だなと感じる。
念の為ホットボンドで金具をしっかり固定しておこう。
魔法で簡単に溶けるので作業は簡単だ。
固定後再度確認。
今度は問題ない。
扉の作業が終わった僕はコンテナ内部を見回す。
コンテナの中は全方向ベニア板が貼ってあるだけの殺風景な空間。
アクセントは荷物をぶつけて補修した痕跡くらい。
閉所恐怖症なら秒で逃げ出したくなるだろう。
そうでない僕でさえ圧迫感を感じる。
魔法で壁越しに外を見る事が出来るから問題ない。
窓が無い分頑丈だし外より安全で雨風も完全に防げる。
論理的でない感情の揺れは自分にそう言い聞かせる事で解決する。
さて、それでは次の作業に移ろう。
クッションフロアを床に敷き詰める。
購入時にトラックコンテナの床面サイズにあわせカット済み。
だから隙間なく敷き詰められる。
自分が中にいるので多少やりにくいが、ここは丁寧にしっかり端をあわせる。
敷き詰めたら次はクッションフロアの周囲の固定。
具体的にはホットボンドのグルーを熱魔法で溶かし、隙間がないようにきっちりとクッションフロアと壁の隙間を埋める。
何処からも床面の木材に水が漏れないよう丁寧に。
これで床の簡易防水加工が完成だ。
予定ではこのコンテナボックス内にアイテムボックスから物を出し入れして生活をする。
寝室として使うならベッドを出して。
風呂場にするなら浴槽を出して。
作業場にするなら大型テーブルを。
風呂として使うと湿気が溜まるだろう。
しかし湿気というか空気中の水分は魔法で除去できる。
だから床に水が貯まりさえしなければ問題ない。
防水工事はその為の作業だ。
この工事をしておけば中で水を流した場合、自然な傾斜により出口側から排水される。
そして水は砂地で下に浸み込む仕組みだ。
さて、一連の作業でいい加減疲れた。
少し休憩だ。
僕はベッドを出す。
今朝日本の実家で目覚めた時のまま、布団も枕もセットした状態だ。
とりあえず昼寝といこう。
横になる前に眼鏡をアイテムボックスに収納しておく。
この世界に軽くて高性能な眼鏡があるかは不明。
だから大事に使った方がいい。
一応眼鏡のスペアは6個作ってきた。
それでも念の為だ。
横になってベニア板の天井を見上げる。
眼鏡の無い今では木目までは見えない。
ただ圧迫感はやはりある。
やはり窓が無いのが致命的だ。
しかしこの空間には文句があるが、この環境は悪くない。
少なくともここには自由がある。
行動的なものも、精神的なものも。
ここを教えてくれたちひには感謝しないとなと思う。
奴もここから100km圏内の何処かで元気でやっているだろうか。
僕には元気でやっている姿しか想像できない。
何故なら此処の環境がちひ向きだと感じるから。
旅行研究会サバイバル分派一の過激派であった彼女の。
海が好きだから、今頃は釣りか、いっそ漁業もどきでもやっているのではないだろうか。
それにちひなら準備もしっかりして来ているだろう。
奴は独り暮らしで実家からの悪影響等は無い。
しかも贅沢するタイプでもない。
奨学金を返済してもそこそこ貯金は貯まっていた筈だ。
ついでに奴は秀才型で努力家。
予習だの事前準備だのをしっかりやるタイプ。
だから必要そうなものはほぼ完全に準備していると思われる。
だからちひを探す事を焦る必要は無い。
奴が苦労しているだろうから今すぐ探そうだなんて思う必要は無い。
あのメールから既に1ヶ月ほど過ぎている。
今更数日程度焦る必要性は乏しい筈だ。
それに現在、先立つものがない。
だから僕も今は休憩しよう。
灯火魔法を起動解除。
暗闇の中で僕は目を瞑った。
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