第5話
私は何の罰を受けているのだろう。
罪を犯した記憶もないのに、もしかしたら私の一挙手一投足が全てを傷つけているのかもしれない。そう、この午後にふんわり思った。
不思議とどうでもよくなってしまった。この感覚は何だろう。最初は違和感を覚えていたのに、だんだんなじんできてもういつもとの違いなど分からくなっていた。
だがその頃からだった。
私がひどく不安定になったのは。馴染むというのは急に難しくなり、溶け込むことができなくなった。でも私はそれでもいい立場だったから、いや、そうするしかない立場だったから、特段複雑に思うこともなかった。
けれど、ここ最近になってきて体がぶるぶると震える。それも無意識の内だから厄介なんだけど。
抑えられなくなって、口から無造作な言葉があふれ出る。気付く。私は今まで抑圧していたんだって。だけどもう手に負えなくて、どうしようも手の打ちどころがない。
そしてまたいつもと同じように理不尽な暴力をうける。
なのに、なのに今まではカンづきもしなかったのに、苦しい。今まで受けてきた暴力とか、扱いとかすべてが悔しくて私は怒りを秘める。
なぜだろう。もしかしたら。
実は最近、私は好意を寄せている。近づくだけでどぎまぎするし、緊張しているとはっきり自覚する。
この店に出入りする男だ。いつも疲れたような顔をしているけれど、私はそこにひどく引かれる。一般的に考えればそんな考えおかしいような感じもするんだけど、私もおかしいからかな、なんていつも通りの思考でやり過ごす。
見た目は整っているというか、でもひょろく力のない様子。
それから私は日常を拒むようになった。いや、受け入れられなくなった。今までと世界を見る目が異なると、はっきり断言しよう。
だから、妹の
あの子が私の代わりに、生贄となったのだから。
ごめんね。ごめんなさい、そう言って自分をごまかす。
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