第3話
平然とした顔で悪意を振りまく。
それは幼いころから僕が見てきたものなのだ。そんな人は周りに多くいて、いつも刺すように存在する。
重い扉の先に待つ、得体の知れないことを探しに行くのだ。
それはひどく不安だしどうしようかと思う。でも。
「キャー!!」響き渡る嬌声のような叫び声。だがはっきりと何かにおびえたような声だった。
立ちゆく人々に見つからない様にひっそりと物陰に隠れながら様子をうかがう。
「え?」僕は声をあげる。
ラリアが死んでいるじゃないか。いや、死んでいるのか?正確には死んだように動かず床に向かって臥せっている。
しばらくすると男が幾人か来て、ラリアを運び出す。
僕にはラリアが生きているのかどうかも分からないし、どこへ連れていかれるのかも全く見当がつかなかった。
だが僕は今この店に忍び込んでいるのだ。こんな身分だからこそ今はラリアがどこへ行くのかを調べようと思った。
しばらく歩き回ると、なんだか薄暗い廊下の先にある暗い部屋に行きついた。
不思議なことにその部屋からは、この店でよく演奏されている楽器の音が幾重も、歪に響き渡る。
本当に不気味だ、肌でそう感じるほどである。
そしてなぜこんな場所に生きているか死んでいるかも分からないラリアを連れていくのか、到底理解には至らない。それは僕の理解力の問題じゃなくて、ただ単純に不自然なのだ。
「ラリア!ラリア!」
そう声が聞こえたと思ったら、激しく何かをたたく音が聞こえる。声の主は女主人であり、ラリアの母。
何かをぶつような音。まさか、ラリアを?
しばらくすると、「お母さん。」という声が聞こえた。ああ、あれはラリアの声だ、良かった、生きていたのか。
そして安堵もつかの間、部屋からはぼろぼろに砕け散ったようなラリアが現れる。だが、顔には何ら傷はなく、はだけた胸元からあざが見え隠れするのだ。
僕は何か、いけないものを見たような心地になる。うまくは言えないけれど、何だかくぐもったような現実の存在することを嫌うような、いやな感じ。
そしてラリアは一人、自室へと戻っていったみたいだ。
僕は今潜んでいる身として、面識もないラリアに声をかける勇気はなかった。
それに、あの、僕のすそを引っ張っていた彼女については何も分かっていないから。
この店に潜む闇をずるずるとかいま見る。きっと断片的であるが、衝撃的なこの事柄がどのような全体像を持つのかと、今漠然と思考する。
そうだ、この店には何かがあるのだろう。もしかしたら、あのすその彼女はそれを僕に伝えようとしたのではないか、なんて思うのだ。
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