第3話 第1章 ピアノ姫は森で惑う①
「ねえ、カムロって人知ってる?」
「逆に聞くけど何で知らないの?あんたほんともう少し周りに興味もちなさいよ」
数少ない私の友人である
「えーそんな有名なの?私が知らないってことはそうでもないんじゃない?」
「とりあえずこれを見な!」
ルナは一枚の紙を取り出した。うげ、これは見たくもないというか私は見る必要がないものであった。
「この間の中間テストの順位表じゃない。こんなのTOP50しか載ってないんだから・・・あ、ルナ国語30位じゃんすごい」
「ありがとう!ってそこじゃないし!よく見なさいよ」
「はいはい。どれ、何位にあいつはいるのかなっと。」
・・・は?全教科あいつが一番上に書いてあるような気がするんですか、印刷ミス?
「ルナ、これ印刷ミスってるよ。カムロが全教科1位にいるじゃない。」
「事実よ。当校始まって以来の怪物くんらしいわ」
「ほえーすごっ。半分分けてほしいわその点数」
「あんたはもう少し勉強したほうがいいわよ。まあしかもそれだけじゃないのよ」
「チート野郎じゃん。これ以上なにができちゃうわけよ」
「彼はサッカー部のエースよ」
「サッカー部というのは、昨年当校始まって以来の全国大会に出場したあのサッカー部かい?」
「そのサッカー部よ。まあしかもそれだけじゃないのよ。」
「四暗刻、字一色、大三元を同時に食らったときみたいな気分になるわね」
「中身おっさんのコメントは聞いてないし。去年の文化祭で、ヒムロックならぬカムロックのボーカルでめっちゃ盛り上げたのよ!走攻守何でもありって感じね!」
「ルナもおっさんだよ中身・・・」
「さらにさらにあのルックスでしょー?もうねなんていうかモッテモテよ。他校だけじゃなくて芸能事務所からもスカウトきてるらしいしもうこれ以上ないわ」
「ほえー。ヤバい人じゃん。なんでそんな人が私の耳には入らないのかしらね。陽の気が強すぎるのかしら。」
「あんたの陰の気が強すぎるのよ。まったくもう少しコミュ力あったらモテるのに。」
「ルナに言われると嫌味にしか聞こえないわ。」
ルナはそのきれいな名前を体現したようなきれいな外見をしていた。すらっとした体、きれいな明るい茶色の髪、ちょっとキツイ感じのきれいな双眼。しかも性格もざっくばらんで明るく男女平等に好かれている。うむ、私はルナと結婚しよう。
「というかセーラこそ急にどうしたの?あんたが男ってか他人のこと気にするなんて珍しいじゃん」
「んーまあ、ちょっと腐れ縁が生まれたのよカムロと」
「マジ?モテキ来てんじゃん」
「これがモテキなのか・・・私はルナと結婚するからごめん被るけど」
「かわいいやつめーーー!!!」
私とルナがじゃれついていると、教室の入り口がざわつき始めたのがわかった。
「おっ、噂をすれば。セーラめっちゃ好かれてるんじゃない?」
教室の入り口には噂の人物、カムロが立っていた。もうすでに男子女子いろんな人に囲まれている。
「つかこれで私に用があったらあれじゃん。呼ばれるじゃん。目立つじゃん。」
と不意に目が合ってしまった。ああ、危惧していたことが起きる気がする。
「あっいたいた!おーい渡名さーーん」
バカが・・・名前を呼ぶんじゃあない。目立つだろうが。勉強はできるのにそんなこともわからないのか?
クラス中がこちらを向く。とりあえず助けを求めてみよう。
「ルナ、助けてヘルプ」
「渡名はここにいまーーす!へーいへーい!ヒューヒュー!」
裏切者!ヒューヒューってなんだよ!
仕方がないので、とぼとぼそちらの方向に歩いて行こうしたら向こうから来た。幸せは歩いてこないっていうのは本当のようだ。
「よっ。昨日はありがとうございました。これお礼です。」
無糖の紅茶が手渡された。なんだこいつ私の好みまで熟知しているてことか?なんかこちらばかり責められているようで嫌だな。こちらも余裕のある態度でいよう。せめてもの抵抗だ。
「あ、あ、ありがとう」
「あんたホントあれねダメな奴ね」
ルナがひどい。助けてくれないし、その場所から移動する気配もない。多分面白いものを特等席で見れることを喜んでいるに違いない。
「里見さんもどうぞー」
「あらあら気が利くじゃない。さっすができる男は違うわね。ありがたくいただくわ」
「なにあんたら知り合いなわけ?」
「去年同じクラスだったのよ。心配しなくてもいいわよ。別にとったりしないから」
「ななななにを言ってんだいこの女は!?」
にしても、この2人が同じクラスってなんかすごいな。私じゃ1年間持たないかもしれない。
「ところでカムロくんは何しに来たの?なんのお礼かわからないけどそれだけじゃないんでしょ?」
「ああ。実は・・・ん?ちょっと失礼」
カムロが耳元で囁く。なんなんだこいつは!周りの目を気にしろよ!笑うなルナ!
『あの才能が見えるってこと言っちゃダメな感じ?ていうかもしかして教室はまずかった?』
ようやくわかったのか。教室は目立つだろ?な?周りを見てみてくれよ。
「いや大丈夫。ルナは知っているから。全然信じてないけどね」
「ああそっかよかった。それなら安心だ」
「ああなに?才能が見えるってやつ?カムロくん意外とファンタジー脳してるのね」
「いやそれだと私が頭ファンタジー女ってことにならない?」
「そう言っているんだけど?」
「ひどい!親友のくせに!」
「まあまあ。その才能のことで実はお願いしたいことがあるんだ。」
カムロくんが真剣な顔をして言ってきた。なんだろう、なににこの【ギフト】を使う気なのかしら。
キーンコーンカーンコーン
「あら、間が悪かったなあ。また後程お願いしますね渡名さん。」
カムロくんはそういうと、足早に自分の教室へと戻っていった。
「随分とわが校の高嶺の花と仲良しじゃない?」
「そんなんじゃないよまったく・・・次会ったときはしっかりとしつけないといけないね」
しかし、実はわが校が誇る有名人を2人も引き連れているセーラが一番目立っていたということは、後々にわかることであった。
放課後、セーラは迷っていた。
『屋上に行くとなあ・・・いるかもしれないんだよなあ。なんで私が私の場所に行くのに気を使わなければならんのかまったく。』
『ひとまずルナのところに避難するか?でも部活中のルナは厳しいからなあ』
一通り悩んだ挙句行くことにした。やつはサッカー部のエースで忙しいだろうからそうそう来られるはずもない。
「なぜいる?」
「さっき後程って言ったじゃないか。後程ってことはここしかないでしょ」
まあそうなんだけども。彼の背景を知ってから改めて見ると少し意識してしまう。できる限り平静を装いながら話す。
「カムロくん、だいぶ有名人らしいじゃないですか。サッカー部の練習は大丈夫なのですか?」
「里見さんから聞いたのかな。まあ有名かどうかはわからないけどね。サッカー部のことは大丈夫、うちのサッカー部は自主性を重んじているから。練習は強制じゃないのさ」
「ふーん。まあいいですけど。あ、1つ言っておきますね。次、教室に来たら私が考えられる限り最大の苦痛を与えます。わかりました?」
「はっはい、わかりました。ちょっと怖くないです?」
「怖くないです。さてさて、ではさっそく本題に入りましょうかね。先ほど言い損ねていた内容をお聞きしますよ。まあ聞くだけかもしれないですけどね。」
私のこの【ギフト】が生かせるようなことはあるのだろうか。私は何年もこの【ギフト】と向き合ってきた。でもなんだろう、才能がないのに超人的な能力を持つ超特殊なこの人なら何か変えてくれそうなそんな気がしないでもない。
「ある女の子の才能を見てもらいたいんだ。」
さあ、私の【ギフト】を生かす物語が始まる。
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