138 見つけたよ③
『銀河のあんぽんたーん』
ビク丸は楽しそうに口ずさむ。本気ではないが悪口だ。なにかしら反応があってもいいところ、銀河は平然としている。
今度は夜風の肩に軽く触れながらビク丸にもう一度喋れと要求した。
『銀河ちゃんはむっつりスケベでーす』
「おまっ、どこでそんな言葉覚えてきた!? いやその言い方は絶対兄貴だな。あの野郎……!」
つまり、と状況を整理しながら夜風は宝玉を見た。
「〈人魚の涙〉を持っている人に触れていれば、他の人にもビク丸ちゃんたちの声が聞こえるんですね」
夜風の持つ瑠璃色の結晶を不思議そうに見やった銀河に、夜風は宝玉を授かった経緯とその奇跡の力について話す。
精霊が持つ特別な石の存在はエクラ社が集める世界各地の精霊伝承に出てくるそうで、銀河はすんなりと飲み込んだ。
「そっか。玉響さんが夜風を守ってくれたんだな。きっとこれからも、見守っていてくれる」
夜風の手に重ねるようにして銀河は玉響の宝玉を包み込んだ。そしてそっと目を閉じ祈りを捧げるように沈黙する。
しばらくしてまぶたを持ち上げた彼と目が合い自然と微笑み合えたのは、玉響の死をともに背負ってくれたからだ。
命は巡る。きっとまた会える。
玉響の遺した言葉を信じて歩いていける気がした。
その後、銀河が飛ばした赤紙のハヤブサにより、実動部隊が湖へと駆けつけた。
夜の
彼らは気を失っているだけだった。発見者である隊員によると、近寄ったとたん消えてしまった光はまるで彼らを守る泡のように見えた、とのことだ。
男は実動隊により拘束されたのち、港島の拘置所へ移送された。そしてダークウルフとハイウルフのハイブリッド種である四匹の毒狼もまた、実動隊の監視下に置かれることとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます