99 朝陽の思い②
「あっ」
と、先に声を上げたのは朝陽のほうだった。
「お前なんか小せえな? さては実動部隊じゃないだろ」
「ええ!? いやあの自分は」
「ほら、声変わりもしてないし。養成学校の訓練生だな。氷人に強引に連れてこられたんだろ!」
「……ハイ」
「やっぱり! あいつはいい加減サプライズと迷惑の区別を理解するべきなんだ。今回はお前がいて助かったけども。連れてくるにしても任務内容を考えろって話だよな」
またしても夜風の乙女心からピシリと亀裂の入る音がした。だがそれよりも聞き流せないものがあり、夜風は朝陽の腕を掴む。
不思議そうな目に見つめられてはじめて隊長格に大胆なことをしてしまったかと気づいたが、引き下がりたくなかった。
「ここへ来ることを決めたのは、自分の意思です。自分の治癒魔法に誇りを持てるようになりたかったから飛び込みました。氷人隊長のことは悪く思っていません」
言い切るや否や夜風はパッと手を離し、上官に対して頭を深く下げようとした。ところが肩を掴んだ朝陽の手が謝罪を止めさせる。おそるおそる見上げた先で朝陽は目に喜色を浮かべ、夜風を通り越してなにかを見つめていた。
「お前、俺の友だちの治癒師に似てる」
胸がドクンと高鳴る。朝陽は男女の隔てなく交友関係の広い人だ。治癒師の知り合いだってきっとたくさんいる。だけど期待に揺れる心を止められない。
「そのご友人は、朝陽隊長にとってどんな人なんですか……?」
気づけばそんな言葉が口をついていた。
朝陽はちょっと考えるように目玉を横へ流して、息を抜くように笑う。
「お前と似てすっげえ真面目。治癒師の仕事を一生懸命やってるんだけど、ちょっと硬いんだわ。俺と真逆って感じ?」
だから恋愛対象として見てもらえなかったのかなあ。
白夜という他人になりすましているお陰か、朝陽の言葉は思ったほど刺々しく聞こえず、夜風はすんなりと相づちを打つ。
「だから心配っつうか、世話焼きたくなるんだよな。お前にもつい同じことしちまった」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます