44 隠された素顔④
そうか、と笑う朝陽の声に誘われて、夜風はタオルの下からこっそり彼の顔をうかがい見た。浅瀬の海のその奥に暗く切ない過去を秘めながらも堂々とする朝陽のように、ローレライの制服を着こなせる日が来るだろうか。
今はみっともなく濡れそぼった制服をぎゅうと掴んで、夜風は切望する。
この人のことをもっと知りたい。
朝陽は鏡花を呼ぼうかと気遣ってくれたが、夜風は悩みながらも断った。朝陽の用意してくれた社名のロゴが入っただけの真っ白な替えのシャツが、まずはここからだと言っている気がした。
夜風は残りの本社勤務も、会社のロゴ入りシャツと飾り気のないポニーテールで奮闘した。鏡花はなにかあったのかと尋ねてきたが、笑みで濁した。そして、それ以上心配をかけまいといっそう仕事に精を出す夜風を、鏡花はやわらかな目で見守ってくれた。
地味な格好が功を奏したのか、ガチ勢からの目立った嫌がらせもなく、夜風はついに十五連勤を乗り切った。
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