15 再来・赤髪男⑤

 気づくと夜風は赤髪男の腕に保護されていた。地面にはゴミ投棄男がひっくり返り、かたわらには折れたナイフの刃先と柄が転がっている。身ひとつで鉄の刃を折ったというのか。驚きと称賛、そして安堵からあふれた笑みを湛えて夜風は恩人を見上げる。


「あの、助けて頂きありが、え?」


 男の首がカクンッと落ちて傾いてくると思った時には遅かった。ちゃっかり腰に回った腕に退路を絶たれ、夜風は男の体に押し潰される。

 その時むわりと舞い上がった酒のにおいだけでこっちまで酔いそうだった。アルコール漬けの暑苦しい体をひっぺ剥がし、なんとかできた隙間から這い出る。距離を取りつつそろりとうかがい見ると、男はよだれを垂らして寝入っていた。


「うそでしょ」


 信じられない寝つきのよさに夜風は思わず頭を抱える。途方に暮れてあたりを見回すと、気絶した男たちと空き缶が散らばる惨状が広がっていた。橋の上を渡る夏風に吹かれてカラコロと虚しい音が転がっていく。

 普段あまり乱暴なことは口にしない夜風も、この時ばかりは我慢ならなかった。


「どいつもこいつも!」



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