未承諾の出演依頼を破り捨てる。

 自分の人生は自分が主役だとはよく言うけれど、他人を自分の人生に出演させるときには、許可を取ってくれと本気で思っている。特に、恋愛対象として登場させるときだ。

 僕がめちゃくちゃなことを言っているのはわかっている。だから、これは愚痴だ。


 僕は、誰からも恋愛対象として見られたくない。それなのに、他人は、恋愛対象とか、異性愛者とか、勝手な思いこみのもと、僕を自分の人生にキャスティングし、僕がその通りにふるまわないと、憤慨したり絶望したりする。勝手に巻きこんで、勝手に怒っている。

 そういう人達が、僕は心底面倒くさいし、僕の人生に一切関わるなとしか言いようがない。


 これはXジェンダーやアセクシュアルでなくても同意が得られるかもしれないが、僕は、「ナンパ」が大嫌いだ。歓迎する人は、あまりいないと思う。

 コンビニで、唐突に、「この後暇ですか」と話しかけてきた人。

 「お姉さん綺麗ですね」といきなり話しかけてきた人。

 僕は装いである程度警戒されるので、これでも被害は少ない方だと感じるが、それでも嫌なものは嫌だ。

 そもそも、僕は男性が大嫌いだ。男性には悪いが、どうあっても負ける相手であることや、これまで僕が男性達に不快な思いをさせられた経験から、どうしても男性に見える人とは、距離を取りたくなる。

 そんな僕に、唐突に、許可なく、「消費」するために声をかけてくるのが、「ナンパ」だ。


 性別を規定する。

 「こうあるべき」と理想を押しつける。

 許可なく恋愛や性欲の対象にしていることを表明してくる。


 僕の地雷を踏みぬくのが趣味なのかというくらい、嫌いなことのオンパレードだ。


 仮に僕が綺麗だとしても、それはおまえのための装いでは断じてない。

 僕はおまえの人生にキャスティングされたいなんて、微塵も思っていない。

 僕は恋愛なんて求めていない。


 相手が欲しいなら、最初から恋愛対象を探す目的で存在する場に、つまるところ合コンとかマッチングアプリとか、そういうところに行ってくれ。

 僕は、そういう場にいるわけではなく、恋愛したいと提示しているわけでもないので、巻きこまないでくれ。


 僕に関わるな。

 僕に声かけてくるな。


 未承諾の出演依頼は、片っ端から破り捨ててやる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る