(021〜025)

(021)大風が吹いてきて頑張ろうとするが耐えきれず転んでしまう。風が渦巻きになって身体ごと宙に飛ばされ、なんとか教会の鐘楼の窓枠に掴まって難を逃れる。窓の中には小男がメロンを抱えて立っており、私は左半身に激痛を感じながら彼の前に降り立つ。


(022)電車道を歩いていると、真昼なのにとつぜん空が暗くなって、おや、と思うまもなく大きな蝙蝠に肩を掴まれて大空に舞い上がる。家々がマッチ箱みたいな大きさになって、このままどこに行くのかと思うやパッと爪を離され東京タワーのてっぺんに串刺しになる。


(023)会社の忘年会。宴もたけなわのころ受付の女子がつと私の隣に座り、テーブルの下でそっと私の手を握ってくる。おや、と思って顔を見れば頬が軽く染まっている。英雄的な機転を利かせ彼女を連れ座敷を抜け出すと、庭から津波が押し寄せてもろともにすべてが押し流される。


(024)もうすっかり日もくれてしまったというのに、どこに車を停めたのかわからない。山裾のあまりにも広大な駐車場で、もう一時間以上も探し回って歩いているのだ。焚き火を囲んで数人の夜警さんたちが酒を飲んでいる。懐中電灯が火にくべられてクルクル回っている。


(025)四角い部屋。壁も天井も床もすべて白い。出窓には花瓶が置かれているが、花は活けられていない。四隅の対角線から右手中央寄りに木箱がある。いくつもの玩具が入っている。私の息子がそれで遊ぶ予定だが、まだ息子は生まれていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る