第14狐 「出席」
今年の一年生は何かがおかしい……。
私はこの高校に勤務し始めて二十年になる。
学園長からの信頼も厚く、教諭の中では中堅と言ったところだ。
毎年クラスを受持ち、難しい三年生も何度も受け持った事がある。
もう、少々の事では動じなくなった。
そんな私が、今年の一年生に
理由は分からないが、何かが変なのだ。
特定のクラスだけ、授業をした記憶が無いのだ……。
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今日は保健体育の教科書を使っての授業だ。
男女別々のクラスに移動して貰ったが、何だか雰囲気が悪い。
気にしていても仕方が無いので、出席を取る事にした。
先ずは十一組の女子からだ。
「
「はい、何でございましょう」
「いや、出席を取っているだけだ」
「そうですか。ほほほ」
「
「何か用か?」
「いや、出席を取っているだけだ。うん? お前ちょっとシャツのボタンが開き過ぎだぞ」
「どこを見ておるか!」
「……」
何だこのクラスは……。
いやいや、このぐらいで動揺してはいけない。
「
「はーーーーーーい♥ 桃子でーーーす♥ キュッ♥」
よく見たら、この生徒だけチェックのスカートにフリフリのリボンが付いたブレザーだ。学校指定の制服じゃ無いぞ……。
「ちょっと待て。お前だけ制服が違うのは何でだ? 転校生か?」
「アイドルの桃子には、これが似合うからでーーーす♥ キュッ♥」
こ、ここは、そのままスルーだ。
まだだ、まだ大丈夫だ……。
「
「はい」
ほら、普通に答えてくれる生徒もいるじゃないか……。
――――
うんうん。何とか問題ない生徒が続いているぞ。
「
「何じゃ!」
しばらく素直な生徒が続いていたが、ここでまた変な生徒になったな……。
「死ねよ! ばーか」
「何が天狐だ!」
「ぶーーーーす!」
急に隣のクラスの女生徒が暴言を吐きだしたぞ。
もしかして、この天狐と言う子は
いかん。女生徒が何人も起ち上がって、喧嘩が始まりそうな雰囲気だ。
「あーこらこら。静かに!」
どうしよう、誰も言う事を聞かない。
今にも
どうする……。
「捨ておけ。授業中じゃ」
天狐という生徒の一言で
何だこの生徒の威圧感は……。
まあ良い、続けよう。
「
「はあ~い! 元気よ~!」
何だこの生徒の南国リゾート女子な雰囲気は。
ハイビスカスの花を髪留めにして、腕にジャラジャラと色々ついているぞ。
別に校則違反では無いが、ちょっと派手過ぎるな……。
まあ良い。早く終わらせたい。
「
「ニャン!」
「……」
――――
何とか十一組は終わった。次は十二組だ。
一番最初は……。
なっ……『な行』からだと? 何だこのクラスは。
「
「はい」
「はい!」
「はーい」
「はいは~い」
「はい」
「は~い」
「はいはい!」
な、何だ? いま全員返事しなかったか?
「ちょ、ちょっと待て。全員『如呂田』なのか?」
「「「「「「そうでーす!」」」」」」
「わたし蛇蛇美!」
「蛇子!」
「蛇由実!」
「蛇蛇子!」
「蛇蛇……」
「下の名前呼ばれるまで待ってろ! バーカ! ニョロニョロ~」
「ニョロニョロ~」
「じゃじゃじゃじゃじゃ~」
どうした……今度は十一組の女生徒が
いかん。隠神刑部とかいう生徒が何かを……。
視界が光に包まれた……。
――――
不意に目が覚めると、職員室にいた。
窓から入る暖かな陽射しで、少し居眠りでもしていた様だ。
いかんいかん、私としたことが……。
今日も良い日だ。
可愛い生徒たちの為に頑張ろう。
――――
「全く。こんなに狭い教室に、馬鹿共と一緒に集めおって」
「美狐様。ニョロニョロ達は全員廊下に叩き出しましたわよ」
「左様か。されど、先生が居らぬな」
「ほほほ。妖術合戦をお見せする訳には参りませんから、ちょっとだけ術を……」
「また今日も自習じゃな……」
私達と
今宵のお話しはここまでに致しとうございます。
今日も見目麗しき、おひい様でございました。
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