ファイルNo.18

「止めろ!何をするんだ!」


「なに!キャァァァ」


アルメイル南部の小さな街でその地域では名の知れた豪族

【ジョンソン家当主カーク・ジョンソン】


ジョンソン氏は妻と共に遺体で発見され

お互いの体をパーツを個々で交換し縫い合わされており、ラベンダーの花が置いてあった

devotion(献身的な愛)と近くの壁には書いてあった為に通報を受けたフレインは

到着した後に捜査を開始した


捜査を進め遺体の記憶は破壊され犯人に繋がる物は何も得られなかった

フレインはいつもの事だと諦め同行してきていた地元警察に屋内の鑑識を任せ

周辺の住民に聞き込みを始めた


始めに1番近い家に向かって歩き始めた

少し離れた家に向かうさなか

集まって来ていた地元住民の中から声が聞こえて来た


「ジョンソンさん亡くなったみたいね?いい気味だわ!」


「そうね!あの人のせいで私達がどれだけ辛い思いをしてきたか」

「あそこの夫婦は殺されても同情も出来ないわね」


周りから聞こえてくる恨みがただ事では無いと思わせる異様な雰囲気が漂う

なにが原因で被害者夫婦は恨みを買っているのか

フレインは少し不安を抱えながら家に向かった


「すみません!警察なんですがジョンソン氏の事でお話し聞かせて下さい」


「なんだお前は?」


「突然すみません!警察の者です、お話を聞きたいと思いまして?」


「あぁジョンソンさん死んだんだっけ?」


「えぇそうなんです、何か詳しい事を知っていればと聞きたいんですが?」


「良いよ、入りな」


老父はフレインを家に入れると客間に案内し飲み物を持ってきた


老父は杖をつきながらゆっくりと歩き

イスに座ると話し始めた


「ジョンソンさんはこの地域の住民には

嫌われていてな、あの人が死んでも悲しむ人がどれだけ居るか?」


「なぜ嫌われているんですか?」


「若い時のジョンソンさんは住民にも親しく接してくれる優しい人だったんだ。

お祭りの時は誰よりも楽しんで

災害で苦しい時は自分の資産を削ってでも住民に寄り添って

誰かが亡くなれば悲しんでくれる

そんな時もあったんだがな

あの人が変わったのは結婚してからなんだ」


「なにがあったんですか?」


「結婚した相手が我が儘な人でな!

ジョンソンさんは今まで住民と親しくしてくれていたのに関係を完全に断つ様に

なったのだよ

住民は徐々に奥様を悪く言うようになるが

直接的に言うと仕打ちが酷かった事から

花の名前からとってデンドロビウムと

呼ぶようになったのだ」

※【デンドロビウム・花言葉はわがままな美人】


「それから住民から恨みを買う様になったって事ですか?」


「そうだね?私達との距離が離れた事で

デンドロビウムは税金を国に納めるよりも多く払わせる様になったんだよ

ジョンソン氏の家は見る見るうちに豪華になり客人を招いて開くパーティーも多くなったのう?

それに比べて私達は生活が貧しくなり

他の地域に引っ越す者も多かったが、タイミングを逃した者は金銭的に他の地域に逃げる事も出来なくなったのじゃよ」


「では今回の事件は住民の中に犯人がいると思いますか?」


「いや?自分の手でそんな事をする住民は私が知っている限りでは居ないと思うぞ、

殺したいならもっと早くやっているだろう?」


「そうですね!では最近不審な事はありませんでしたか?」


「そうじゃのう?最近は見ての通り足が悪くなってから外にも出る事が減ったから

不審者は知らないのう」


「そうですか?お話をありがとうございました!他の方にも聞いてみます」


「若いの!気を付けろよ」


「ありがとうございます!」


フレインは老父宅を後にすると次々と家を回って歩くがこれと言った情報は得られず

ジョンソン夫妻が憎まれている事しか分からなかった

人に憎まれる事の恐ろしさ、

憎しみ、恨み、忿怒、過去に仲の良い間柄だとしても1度信頼を失えば、関係の再建は知り合った時よりも困難な道になる



「課長?フレインです」


「おう!今回もやっぱり猟奇殺人で間違いないか?」


「えぇ!間違いないと思いますが!」


「が?どうした?」


「今回の被害者は周辺の住民にかなり嫌われています!

正直いつ殺されても不思議では無かったぐらいに恨みを買ってました」


「そうか?だとしても犯行が猟奇殺人犯と同じなら同一犯で間違いないだろ?」


「そうですね?じゃ自分も終わらせたらそっちに帰りますから」


「気を付けて」


「了解です。」



「おい!あんちゃん!」


通信を終えたフレインに声を掛ける男性の声がした

フレインが振り返ると最初に話を聞きに言った家の老父と男性が立っていた

老父は何かを伝えたそうにしているが

焦っているのか上手く言葉が出ない

それを見た男性が話し出した


「アナタが警察の方なんですね?」


「はい?どうしました?」


「ジョンソンさんの件で話を聞いて欲しいんですが良いですか?」


「大丈夫ですけど?」


「ジョンソンさんが遺体で見つかる前の夜

怪しい男を見たんです!

その男は1人だったんですけど、夜遅くにジョンソンさんの家に入っていくのが見えて」


「ちょっ!ちょっと待って下さい!貴方は何をしていて見たんですか?」


「私は最近夜になると畑を害獣が荒らすので見回りをしてその帰りだったんです」


「なるほど!」


「それで帰っている時に近くを通りかかった時に男が何度もジョンソンさんの家に出入りしていて、一番奥の部屋の灯りが付いたと思ったら窓に人影らしい姿が見えたんですが、直ぐに倒れる様に見えなくなって

私はてっきり起きた時に転けたものだと

思っていて」


「大丈夫です!貴方には何も落ち度はありませんから」


「はい、ありがとうございます。

それで一旦帰ったんです、食事も済ませてまた畑を観に行った時に鼻歌を歌いながら出て来る男を見て直ぐに木の陰に隠せたんです。

すると鼻歌が聞こえなくなったので

顔を出すともうそこには姿が無かったんです

もしかしたら私は犯人を見逃したんでしょうか?」


「大丈夫ですよ?まずは貴方が無事だったそれが大切なんですから?

少し捜査に協力して頂けませんか?」


「あぁ!なんだって協力する!」


「分かりました!そうしましたら貴方の記憶を見させて頂きたいので私と警視庁まで

お願い出来ますか?」 


「分かった」


「安心しろ!畑はワシが見といてやる!」


「ありがとうロンド爺さん」


「そうしましたら直ぐに戻りたいので

着替えなどの準備だけして来て下さい

宿は私達で用意はしますので」


「分かった!」


老父と男性は家に帰って行き

フレインは直ぐに課長に連絡を入れ直した


「課長!目撃者が居ました!本庁に一緒に連れて行きますので準備をお願いします!」


「分かった!気を付けて帰ってこい!

もしかしたら狙われるかも知れないから用心しろよ!」

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ラベンダー愛のカタチ ネムネムZzz @nemunemu0326

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