第36話 防衛戦準備

 風の中位精霊フィレイから、ディオール王国の騎士達が迫って来たという報告を受け、村の住人総出で追撃、避難の準備にあたる。

 そしてディオール王国の騎士達の中に元同級生復讐対象の一部が紛れ込んでいると知ったナキは……。


「本当にゴメン! 俺が悪かった、悪かったからキゲン直してくれって!」


《ツーン》


 アミに抱えられたノルンに謝り倒していた。

 元同級生の一部がここに来るとわかった事でこれまで落ち着いていた復讐心が再発し、クルークハイト達が総出で止める羽目になった。


 その拍子にナキはノルンを上空に放り投げるという大失態を犯し、幸いノルンはシャーロットと止めに入っていなかったアミに受け止められて無事だったものの、ノルンは放り投げられた事ですっかり拗ねてしまったのだ。


「本当に、本当にゴメンッてばっ!」


《やだっ! ノルンゆるしてあげないもん》


「そんなぁ〜」


「怒る気持ちはわかるけど、流石に放り出すのは不味いよナキ」


「自分のジュウマに嫌われるの辛い」


 拗ねてしまったノルンは、ナキの元に戻らずアミの腕の中にいたままだった。

 全く許して貰えそうにないため、ナキはかなり落ち込んでいた。


「まぁまぁノルンも機嫌直して。

 ナキ君も自分に酷い事した人達が来るって知って落ち着いていられなかったんだよ」


《ん~、そうかもだけどぉ》


「それじゃあこうしましょう、ディオール王国の騎士達をやっつけたらナキに美味しいお水沢山作って貰えば良いの。

 ノルンはナキ君が作ったお水好きでしょう?」


《うん! ノルン、ナキのお水すき♪

 お水くれたら、ゆるしてあげる》


「っという事だから、ナキ君はノルンの為に魔法の水を作ってあげてね」


「ありがとうアミ〜」


 上手い具合にアミが機転を利かせてくれた事で、ノルンの機嫌が直り安堵したナキは、アミからノルンを受け取った。


「さっきは本当にゴメンな、ノルン」


《いいよ〜。でもでも、お水くれるのわすれないでね》


 ノルンはそう言いながら、ナキに甘える。

 ナキが安心した様子で身を委ねているノルンに安堵していると、村の外を監視していたマオ族の獣人ビーストが慌てた様子で戻って来た。


「ディオール王国の人間達がこちらに向かってるぞ!」


「人数の目安は?」


「報告通り五〇人だ、その内五人は間違いなく子供だった!」


「絶対にケイカイしてくれ!

 ソイツら全員マホウとか何かしらのスキルが使えるはずだ!」


 報告を聞いたナキは、大人達に対し五人の子供には要注意するよう警告した。

 まだ大人達には伝えられていないが、その五人はナキが今いる場所異世界に来る際に同じように召喚された元同級生復讐対象の一部だ。


 自分と違い月の至高神の加護を受けている事とディオール王国の人間から直接魔法の指導を受けているため、人一倍警戒していたのだ。

 経緯はどうあれ、鬼気迫るナキの様子に大人達は思わずたじろいでいた。


「ナキ、一旦落ち着け。父さん達がビックリしてるから」


「ワッワリィ、アイツらがすぐ近くまで来ていると考えたらつい……。

 ところで、この村の戦力ってどうなってるの?

 俺以外にマホウ使える人っている?」


「我々獣人は、基本的にスキルを持っていない。

 いない事もないが、俺のように身体強化ブーストしか使えない者の方が多い」


「隣の村にも二、三人いるけど、それでもナキみたい強い魔法を使える人はいないわ」


「つまり、下級以上のマホウを使えるのはおれだけってこと?」


 村にいる勢力で魔法が使える者が少ない事に加え、下級以上の魔法を使えるのが自分だけだと知ったナキは少々困った様子だった。


 数は限られているが、最上級魔法が使えるとはいえ子供である以上前線に立たせてはもらえない可能性を考えると、付与魔法による後方支援を考えていたのだ。


 だが、実際は攻撃系の魔法やそれらに似たスキルを使えるものの方が少ないというため、当初考えていた方法で戦闘に参加するのは不可能に近しい。


(まいったな、敵は俺達より戦トウ慣れしている騎士に加えてマホウ使い複数にクソッタレ共元同級生が五人。

 対してコッチは人数は多いけど対人センに慣れてないのに加えて、一番の戦力ヴァンダルがいないのとマホウを使える人数が少ない。

 真正面からぶつかるのはフツウにダメだ)


 ヴァンダルがいない状態で真正面から戦えば自分達に勝ち目がないのは目に見えていたナキは、それ以外の方法でディオール王国の騎士団と戦う必要があると考えた。


 そのためには、最上級魔法まで使える自分が本格的に戦闘に参加する必要がある。

 そう考えたナキは、すぐにランドに提案した。


「それだったら、真正面からぶつかるのはダメだ。

 経験差でコッチがすぐにやられちまう。

 変わりに、小細工を使って時間をかせぎながら戦おう」


「小細工?」


「それってつまり、卑怯な手を使うって事?」


「うん、はっきり言って今の戦力で正々堂々ぶつかればディオール王国の騎士達に負けちまう。

 でも地の利ではコッチが有利だから、それを利用して罠を仕掛けるんだ」


「なるほど、相手の進行を妨害しつつ体力を削るのか!」


 ナキがランドに提案したのは、大海たいかいの森周辺を把握しているという強みを使い、ディオール王国の騎士達に罠を仕掛けるというものだった。

 進行方向に罠を仕掛ければ、うまく行けば敵勢力を捕らえる事ができ、逃げられても体力を減らす事で弱体化させられる筈と考えたのだ。


「クルークハイト、確か俺を最初に見つけた時に地図を作ってるって言ったよな?

 今持ってるか?」


「あぁ、まだ作りかけで他の人の確認がまだだけど……」


 そう言うとクルークハイトは自分が作成している村周辺の地図をナキに手渡した。

 ナキは作りかけの地図を広げると、周囲にいる下位の精霊達に指示を出した。


「セイレイ達、ここに書いてある地図の地形があっているか確認してきてくれ。

 それからディオール王国の連中の動きを見張って、ここに来るまでのルート確認を頼む」


《りょうかーい》


《まかされた〜》


 精霊達はそのまま上空へと舞い上がり、ディオール王国の騎士達がいる方向へと飛んでいった。

 そしてナキはこの場にいる者達に向き直る。


「男手は農具でもなんでも良い、武器として使えれそうな物をありったけ集めて。

 それから、女手はタオルや布を集めて、できるだけ長いものを中心に。

 子供は村から出ないはんいでコブシより一回り小さいくらいの石ころを集めろ。

 セントウに参加できない老人幼児けが人は、迷わずひなんだ!」


「何か考えがあるの?」


「気休めになるかもわからないけど、何もしないよりかはマシだ。

 それぞれに花のセイレイをつける、眼の前で赤い花が咲いたら敵が迫ってるキケンシンゴウだから、すぐに戻って来て。

 さぁ行動開始!」


 詳しい説明は無しに、ナキは間髪入れず作戦実行の合図を出した。

 あまりにも急な事だったため、周りは慌てて動き出した。

 そこに作りかけの地図の地形とディオール王国の騎士達の偵察に行っていた精霊達の一部が戻ってきた。


《ただいま〜》


《もどったよ〜》


「おかえり、どうだった?」


《チケイの方は、チズと同じだったよ〜》


《テキセイリョクは、三方向に分かれてセッキン中。

 子供は一グループでまとまってるよ》


「三方向だな、どの方向から来るかわかるか?」


 精霊達の報告を聞いたナキは、作りかけの地図を指しながらどのように攻めてくるかを確認する。

 精霊達は広げられた地図の北、北東、北西を指した。


「クルークハイト、ひなん経路はどの方向か決まってるのか?」


「南東だよ。そこに周りが茂みだらけで、かなり広い洞窟があるんだ。

 いざとなったら逃げ出せるよう茂み側とは別の下り坂になってる出入り口もある。

 でもそっちは周りに何もなくて、崖からむき出し状態になってるな」


「ねんの為そっちもかくしておこう、はさみうちにされたら詰だ。

 地と樹のセイレイはさっき言ったひなん場所のもう一つの出入り口をかくしてくれ、できるだけ自然な形で、にげやすいように頼む!」


《わかった! かいぞうしてくるね!》


《リフォームのタクミのでばんだぜ!》


(なんでそんな元いた世界の言葉が出てくるんだ⁉)


 ナキに脱出しやすい形で出入り口を隠すよう指示された地と樹の精霊達は、すぐさま南東の茂みにある避難壕へと向かった。

 精霊達が口にしていた現代的な元いた世界の言葉に困惑しながらも、ナキは次の行動に出る。


「クルークハイト、一緒に来てくれ!」


「え? どこ行くんだ⁉」


「俺のマホウで、敵の侵攻方向に罠をしかけるんだ!」


「そんな事もできるのか⁉」


 魔法を使いディオール王国の騎士達の進行を妨げると言い出したナキの発言に、魔法の多様性と言うよりナキの発想に驚かさられたクルークハイト。

 クルークハイトが知っているナキの魔法は、ウォール系統の魔法と異常アブノーマル系統のパラライズ麻痺も使えるが、基本的に攻撃系の物が中心。


 罠を作るのに向いているような魔法は心当たりがなかった。

 そのためナキがどのような方法で魔法による罠を仕掛けるのかと考えている内に、最初の進行方向ルートに辿り着いた。


「良し、着いた! 最初のルートはこの辺りだな⁉」


「この辺りは見通しが良いから、他の大人の人達も警戒してたみたいだな。

 丁度フォディオさんもいるみたいだし、話しかけよう」


 最初の進行方向ルートは見晴らしが良いという事で警戒していたらしく、村の外にいた大人達がバリケードを作っていた。

 ナキとクルークハイトは、現場で指揮をしているフォディオの元に駆け寄り話しかけた。


「フォディオさん!」


「ナキ、クルークハイト、どうしてここに?

 早く村に戻るんだ!」


「敵連中は三方向に分かれて進軍してきてる、セイレイ達に確認して貰ったから間ちがいない!」


「なんだって⁉」


 精霊経由で手に入れた情報を聞いたフォディオは、三方向に分かれるとは思っていなかったようで酷く驚いていた。

 周りにいた他の大人達も驚いており、どうすれば良いのかとざわめいている。


「フォディオさん達はそのままバリケードを作って!」


「ナキ、何する気だ⁉」


「マホウを使った罠を使うんだ!

 〝アイス・フロア氷の床〟!」


 詳しい説明はせず、ナキは無詠唱で新たな魔法〝アイス・フロア〟を発動させ、村に繋がる道を全面的に凍らせる。

 あっという間に氷漬けになった道を目の当たりにしたフォディオ達は、思わず呆気にとられた。


 ナキの魔法の威力を知るクルークハイトは、エンシェント・レビン古代の雷を目の当たりにしていた事もあってかさほど驚いてはいなかった。


「ナキ、道を凍らせてどうするんだ?

 足を滑らせて倒すじゃたいした時間稼ぎにはならないぞ?」


「安心しろ、これが本命じゃない。〝バーニング《燃焼》〟!」


「うわっ熱っ⁉ あ、でも、氷が溶けて道がぬかるんでる⁉」


〝アイス・フロア〟と同じ新たな魔法〝バーニング〟を発動させたナキは、〝アイス・フロア〟で凍らせた道を乾燥させないよう慎重に溶かしていく。

 その絶妙な調整で氷を蒸発させることなく、〝フレイム〟と〝アイス〟で飲み水を作る要領で大量の水を作り、あっという間にぬかるんだ道が出来上がった。


《ナキすごーい! ノルンにくれたお水でじめんをどろんこまみれにしちゃった》


「だが、これなら先程の状態の方が効率が良い気が……って今度は何してるんだ?」


 いつの間にかノルンをクルークハイトに預け、投石用に持ってきたと思われる石を手にして何か細工をし、細工を終えるとその石を地面に置いて別の石を手に取り先程と同じように細工を施していく。

 黙々と何かの作業をするナキの姿を目撃したフォディオは、先程とは違う意味で驚いていた。


「マホウ円をかいて二重の所に〝フリーズ凍結〟の詠唱、その合間にウルソーンヤラをまぎれ込ませながら記入、中央に二重三角ダブルアングル、その間に氷のシンボルを描いて……よし次!」


「本当に何やってるんだ??」


「〝フリーズ〟っていう雷の魔法を石に付与してるそうです」


「投石用の石にか? なんでまた?」


「クルークハイト悪い、試しに一つぬかるみの方に投げてみてくれ」


 投石用の石に〝フリーズ〟の魔法陣を刻む作業を進めながら、ナキはクルークハイトにそう頼んだ。

 クルークハイトは試しに出来上がった石を一つ手に取り、言われた通りにぬかるみに放り込んだ。


 石がぬかるみに触れた瞬間、石を中心に凍りだした。

 かなりの広範囲でほぼ逃げ場がないように見え、あっという間にぬかるみを凍らせていた。


「なっなんだ今のはぁ⁉」


「なるほど、水と氷の関連性を利用した捕獲の罠か!

 動けなくすれば一方的に攻撃できるし、よく考えついたな」


「体がぬれた状態で洗濯物を入れようとした時に氷点下だとこごえるから気をつけろってじいちゃんにしかられた事があったんだ。

 石の方はこれだけ作れば足りるはずだ」


「うわぁっ! いつの間にこれだけの量を⁉」


 ナキの横には〝凍結〟の魔法が付与された石が山のように置かれており、それを見たフォディオは酷く驚いていた。


「よし、次のルートに向かうぞ!」


《それなら北の方がちかいよ〜》


《チカミチできるばしょ知ってるからあんないするね》


「ありがとう、助かる!」


「あっ! ちょっと待て!」


 フォディオの静止も聞かず、ナキとクルークハイトはそのまま次の侵攻ルートに向かう。

 精霊達に教えられた近道は獣道らしく、クルークハイトは内心ヒヤヒヤしながらナキの後についていく。


そして茂みから飛び出す形で次の侵攻ルートに辿り着いた。

 そこは少し小さめの広場のようになっており、ティアとプルプル率いるスライム達が作業を行っていた。


「キャアッ! ナキ、クルークハイトにノルン⁉」


「アレ⁈ ティアさんどこにもいないと思ったらなんでここに⁉」


「プルプルが《この道は間違いなく敵が通るだろうから、待ち受けておくべきだ》っていって、スライム達と一緒に迎撃準備していたのよ。

 ナキ達はどうしてここに?」


「プルプルめっちゃユウシュウだな⁉」


 プルプルが今いる場所をディオール王国の騎士達が通る事を見越し、既に待ち構えていたことに驚くナキ。

 するとスライム達に指示を出していたプルプルが、ナキ達の元にやって来た。


「ミュミュミュウ、ミュウ!」


《ノルン達ね、いまみっつのしんこうルートにワナをしかけて回ってるの~》


「ミュミュミュミュウ!」


《ふぇ~いたい~》


「プルプル厳しすぎません?」


 状況から察するに、プルプルが状況方向を求めたためノルンが答えたようだったが、喋る速さが遅かった事と長すぎた事から、プルプルが叱責しノルンが叩かれた。

 雰囲気からやり取りを悟ったクルークハイトは、プルプルの厳し過ぎる様子に思わず顔を引きつらせる。

 だがそこでナキはある疑問をぶつけた。


「スライム達だけでたたかわせるの?」


「そうよ、プルプルが鍛えたおかげで通常のスライムより強いし、武器だって使って戦えるわ。

 それに数匹ほどポイズンスライムやアシッドスライム、ヒールスライムに進化してるから心配ない筈よ」


「スライムって武器使えるのかよ⁉

 っていうかこの短期間で上位種に進化したのか⁈

 それ以前にヒールスライムってかなり希少個体じゃん!」


 自分達が知らない間に、人工湖に集まっていたスライム達が予想以上に強くなっている事に驚きを隠せなかったナキは、思わず声を荒げる。

 クルークハイトもその状況を全く理解する事が出来ず、思わず白目をむいていた。


《ナキー、ここはプルプル達に任せても良いんじゃない?》


《プルプル、とってもつよいよ?》


「そ、そうだな、でも一応しかけられる事はしかけておきたいな……」


「仕掛けるって、もしかして罠を仕掛けようとしてたの?

 でも特に何も持ってないように見えるけど……」


「マホウを使ってワナをしかけるつもりだったんだよ、でもプルプル達がいるならそれほどこった物を作らなくてよさそうだし、できればこのマホウジンだけでもしかけたいんだ。

 出来れば広場一面に」


 そう言いながらナキは持っていたメモ用紙に仕掛ける予定だった魔法陣を知るし、ティアに見せた。

 その魔法陣を見たティアは、その構造に驚いた様子だった。


「これ、本気? フェンス系の魔法で統一してるけどかなり複雑よ。

 しかもこれ、四重の円環クアトロ・トーラスじゃない⁉

 尋常じゃない魔力マナが必要になるわよ⁉」


「でも万が一の事を考えてこれだけでもしかけたいんだ」


 ナキが仕掛けようとしている魔法陣はかなり複雑な物らしく、ティアは思わず顔をしかめた。

 けれどもナキはこの魔法陣をどうしても仕掛けたいというのだ。

 そんな時、クルークハイトと花の契約精霊であるカノンが助け船を出した。


「ナキ、魔法陣を描くだけならスライム達に任せたらどうだ?

 武器を使えるくらい賢いなら、魔法陣だった簡単に掛けると思うんだけど」


《マホウジンをかいてくれたわたし達セイレイでマナをそそげば、マホウがハツドウするはずだよ~》


「本当か?」


《うん! ゾクセイをしていして、そのセイレイ達におねがいしたら良いんだよ!》


 クルークハイトとカノンの提案を聞いたナキは、しばらく考え込んでぷるぷるに先程魔法陣を描いたメモを見せながら訪ねた。


「プルプル、この広場全体にここにかいたマホウジンをかかせられるか?」


「ミュミュウ!」


《できるって~》


 スライム達が魔法陣を描く事が可能だと分かったナキの答えは、すぐに出だ。


「それじゃあ頼む! 炎、風、氷、雷のセイレイ達は二〇人くらいずつここにのこって、敵が来たらプルプルの指示に従ってマホウジンにマナを注いでくれ!」



「ミュミュミュミュウ! ミュウミューミュウ、ミュウミュウ!」


「「「ミュミューッ!」」」


 ナキは精霊達に属性と人数をしていし、プルプルは速攻でスライム達に指示を出し、広場全体に魔法陣を描き始めた。

 そしてナキが最後の侵攻ルートに向かおうとした時、クルークハイトが待ったの声を掛けた。


「ナキ、最後の侵攻ルートだけど、ここ確かちょっとした問題がある場所だぞ?」


「……マジで?」


「マジマジ、この辺は確か雷の実って言う、刺激すると爆発して雷を放電する魔法植物がなってるから、マホウを仕掛けるのは危険すぎると思うぞ?」


「なんだってそんな危険な植物が生えてるんだよ⁉」


《ナキが雷のマホウをたくさん使ったえいきょうだよ?》


「あぁ本当だ⁉ よく見たら俺が野営してた場所に近い場所だった!

 マジでゴメン!」


 自分が原因で危険な魔法植物が自生してしまった事を知ったナキは、やってしまったと頭を抱えてしまった。

 それだけ危険な魔法植物が自生しているのなら、魔法による罠を仕掛けられないと知りどうすれば良いのかと考えていると、それを指摘したカノンがこんな提案を出した。


《いっそ雷の実をバクハツさせちゃったら?》


「そのままバクハツ?」


「ノルン、カノンはなんて言ったんだ?」


《いっそカミナリのミをバクハツさせちゃったら? だって》


「一理あるかも。雷の実をコッチから爆発させちゃえば充分大打撃になる筈。

 ナキ、ここはカノンの提案に乗ってみたらどうだ?」


 カノンの提案から雷の実の実用性を見いだしたクルークハイトは、紙内のみをそのまま罠とつぃてつかって見てはどうかとカノンを指示した。

 その提案を聞いたナキは、しばらく考え込んだ後その提案を受け入れる事にした。


「確かに、そっちの方が実用性としてはありかも。

 ありがとうカノン、お前のおかげでリカバリーが効きそうだよ」


《エッヘン! そんなことないこともないよ♪》


「どっちだよ」


「雷の実を使うのは良いけど、問題はどうやって爆発させるの?」


 最後の侵攻ルートに自生している雷の実を罠として使う事にはなったが、ティアが言った通りどうやって雷の実を爆発させるかが問題だった。

 その問題に関しては、ナキは既に解決策を見いだしているようだ。


「爆発させる方法に関しては手がある。

 一旦村に戻ってシンチョクを確認しよう」


「それにしてもナキは凄いな、短時間でここまでの策を考えつくなんて」


「え? あ、いや、そんなたいした事じゃないと思う……」


「あるある、充分あるから」


 短時間で侵攻を妨害するための罠を考えつき、迅速に実行し仕掛けて見せたナキの行動力と賢さにクルークハイトが感心していると、偵察をしていたセイレイ達が慌てた様子でとんできた。


《テキセイリョクセッキン! テキセイリョクセッキン!》


《あと二五きざみでここまでトウタツヨテイだよ!》


《チュウイされたし! チュウイされたし!》


 精霊達が持ってきたのは、ディオール王国の騎士達がすぐそこまで迫ってきているという知らせだった。


「アイツら、もうそんな近くまで来てたのか!」


「急いで村に戻ろう!」


 それほど時間が残されていないという事がわかったナキ達は、村に残っていたメンバーに頼んでいた事がどれだけ達成されているかを確認するべく村へと急いだ。

 決戦の時は、すぐそこまで迫っている。


ーーーーーーーーーーーーー


 ご覧いただきありがとうございます。

 もしよろしければコメント、いいねお気軽にいただけたら幸いです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る