第34話 変わってからの悩み事

 ナキの騒動から三刻さんこく目、一刻ひとときの作業を終え、両親と自宅に戻り食事をし自室で休んでいたクルークハイト。

 ベッドに入りいざ就寝しようとした時、窓の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「クルークハイト、クルークハイト」


「この声、ナキ?」


 自分を呼ぶ声を聞いたクルークハイトは、ベッドから出て窓を開けた。

 そこには頭にフォディオの家にいる筈のナキの姿があった。

 しかも頭にノルンを乗せ、寝間着を着た状態でだ。


「どうしたんだナキ、こんな夜中に?」


「とりあえず中に入れてくれ、詳しい事は中で話す」


《入れてくれ〜》


《くれ〜》


 ノルンや精霊達の間の抜けた喋り方のせいで気が抜けそうになるが、真剣な様子のナキの顔を見たクルークハイトは、窓からナキを自室に迎え入れた。


「サンキュー、助かった」


「どういたしまして。それでどうしたんだよ?」


「ちょっと相談したい事があるんだ。

 一昨日作業小屋で話してた内容、覚えてるか?」


「オフィーリア帝国の事だよな?

 それがどうかしたのか?」


 ナキが相談事をしに来た事に対し珍しいと思ったクルークハイトだったが、作業小屋の話と聞いてルオとレーヴォチカが向かったオフィーリアの話の事かと確認を取った。

 だがナキは内容を一部肯定したが否定もした。


「確かにそうなんだけど、正確には俺自身の事で相談したいんだ」


「どういう事だ?」


《ナキがみんなに、自分のシュツジについてどうごまかしたらいいか、そうだんしたいんだって》


 ノルンの口からナキの相談内容が、自分の出自についてだと聞かされたクルークハイトはどういう事かとナキの方を見た。

 相談事を持ってきたナキは、困った表情で話し始めた。


「俺がイセカイ出身っていうのは前にも話したよな?

 その時に俺がこっちこの世界に来た経緯も話したはずだけど……」


「お前のに巻き込まれる形でディオール王国に召喚されたって話だったよな?

 それとオフィーリア帝国とどう関係があるんだ?」


「ルオさん達が帰ってくる際にオフィーリアの連中を連れて帰ってきて、ソイツらが原因で俺が村の人達からディオール王国のスパイ、間者と間ちがえられるんじゃないかって心配なんだ」


 ナキの相談内容が、ヴァンダルによりオフィーリア帝国に送り出されたルオとレーヴォチカがオフィーリア帝国の誰かを連れ帰り、その人物が自分を知っている事で不利な状況になるのではないかというものだった。


「どういう事だ?

 そもそも、どうしてそんな事考えたんだ?」


「ほったんとしては、一昨日紅藍花サフラワーの花壇でのバンソウコウの話を聞かれてたのが原因なんだ」


「バンソウコウの話?

 あそっか、バンソウコウはナキが元いた場所にしかない物だから珍しがられたのか」


《そこからが大変だったの~》


 発端としてはナキが言った通り、絆創膏の話を聞いていた村の住人が原因だった。



*****



 話を聞いていた村の住人がその事をミンに話し、バンソウコウに興味を示したミンがナキに詳しい話を聞きに来たのだ。


『ナキ、ちょっと良い?』


『別に良いけど、もしかしてシュウカクした紅藍花に何か問題があった?』


『違う違う、バンソウコウについてよ。

 あると便利らしいから詳しく聞きたくて』


『バッバンソウコウ⁉ 一体なんの事?』


 ミンの口から絆創膏という言葉が出てきたため、動揺しながらもなんとか誤魔化そうととぼけてみせるが、上手く誤魔化す事はできずミンに追求された。


『昨日他の人から聞いたんだけど、紅花コウカの花壇でクルークハイトとバンソウコウの事を話してるのを聞いたのよ。

 聞いた内容によると、持ち運べてすぐに傷の手当ができるそうじゃない』


⦅しまった、話にむちゅうで周りに聞かれないようにするのを忘れてた!⦆


 ミンから絆創膏を知った経緯を聞いたナキは、自分の出自について知らない村人達に聞かれないようにする事をし忘れ、クルークハイトとの話を聞かれてしまった事に焦っていた。


『ほら、細かい作業とかしているとどうしても指先を怪我する人が出てくるのよ。

 もし良かったら作り方を教えてほしいの』


『ごめん、バンソウコウはせんもんの人が作れる道具だから、俺も詳しい作り方は知らないんだ』


『あらそうなの? それは残念ね……』


『また何か役立ちそうな事思いだしたら伝えるよ』


 絆創膏はそう簡単に作れないと伝え、なんとか話を終わらせる事ができたナキだったが、

それだけでは終わらなかった。

 その翌刻よくこく、クルークハイトと別行動を取り、氷室の手入れの手伝いをしていた。


『ふぅ、今日使う分の肉はこれだけアレば十分だろう』


『アレ? フォディオさんこっちに分けてある肉は使わないの?』


 そう言いながらナキは使う分と保存しておく分とは別ぶ置かれたコールドリーフで包まれた獣肉を指さした。


『あぁ、それは大分前に保存してたせいで傷んでしまったんだ。

 傷んだものは食べれないから、肥料にするか焼却処分するしかないんだよな』


『もったいない。

 どうせならクンセイにしたら良いのに……』


『クンセイ?』


『塩づけにして煙でいぶす保存食だよ。

 干し肉と同じで管理方法に気をつければ、長い間保存できるんだ』


『ヴァンダルから聞いた事ある、確か肉以外にも魚も燻製にできるんだよな?

 おまけに酒のつまみにもなるとか』


 ヴァンダルから燻製の話を聞いた事がある獣人ビーストは、まだ見ぬ燻製の味を想像し口から涎を垂らしていた。

 話を聞いても作り方までは聞いていないらしく、誰も作ってはいないようだ。


『ヨダレ汚ねぇからふけよ。

 作る手間はかかるけど、うまく行けば冬の間とか狩りをする必要がなくなったり、他の場所で売れるかも。

 チップは大海の森で手に入りそうだけど、問題は道具だな。

 やっぱりクンセイキがあったほうが良いかな?』


『燻製器って、名前からして燻製作りに使う道具の事か?』


『うん、煙をみっぺいできる入れ物みたいなものかな?

 煙でいぶすから常に煙が出てる状態だから、周りの人に迷惑かかるし』


『もしかしてこれの事か?』


『そうそうそういう感じ……ってなんで昔見たヤツがここに⁉』


 燻製器の説明の最中、フォディオが燻製器を抱えている事に驚いたナキ。

 だが驚いたのはフォディオが燻製器を抱えている事よりも、そのデザインだった。


 そののデザインはナキが元いた世界で見た事がある、アルミ製で鍋の形に似た丸型の燻製器だった。

 問題は何故フォディオが元いた世界の燻製器を抱えているのかという事だ。


『あの、フォディオさん?

 そのクンセイキはどこから持ってきたんでしょう⁉』


『いや、いつの間にか置いてあったんんだ。

 多分だがナキの話を聞いていた精霊達が作ってくれた物じゃないか?』


《その通りだよ〜》


《これがあれば作れる?》


 どうやらナキが燻製器の話を出した直後、炎と地の精霊達が協力して作り出したようだ。

 精霊達なりに気を利かせてくれたのだろうが、デザインが元いた世界で見たままだったため頭を抱えた。


『なんでこっち異世界のデザインじゃないかな〜』


『こっちのデザイン? なんの事だ?』


『いや、ひとり言だから気にしないで……』


 思わず思った事が口に出てきてしまうほど、ナキにとって燻製器のデザインは問題になっていた。


⦅おっさんやこっちのクンセイキを見た事ある連中からしたら、俺の地元元いた世界のデザインはどう見てもイシツだよ⦆


 もしヴァンダルや異世界の燻製器を見た事がある者達が見れば、ひと目で異世界のものかもしれないと恐れたのだ。

 そして極めつけは、本刻ほんこくの アミ、ローロ、クライムの三人と一緒に大人達に混ざって人参の収穫作業に参加した時の事だ。


『それじゃあ早速人参キャロットを収穫していくわよ!』


『沢山育ったねぇ〜』


『これだけあるなら、今日は人参づくしになりそうだな』


⦅もう緑季りょくきの時期だから桜季おうき頃にまいたのかな……⦆


《ナキ〜、私達も手伝う?》


『いや、カノン達セイレイはそのままたいき。

 ノルン、悪いけどシュウカクした人参を入れるカゴを持って着いてきてくれ』


 そんな事を考えながら精霊達には手を出さないよう指示を出し、ノルンに籠を持たせて人参の収穫を開始した。

 最初こそ順調に収穫していたものの、十本目に差し掛かった時に異変が起こった。


 十本目の人参を引き抜こうを手を伸ばした瞬間、人参の葉部分が小刻みに動いたように見えたため思わず動きを止めた。


⦅え、人参が動いた?

 いくらファンタジーとはいえそんな訳ないか……⦆


 自分の思い違いだと思ったナキはもう一度手を伸ばして葉部分を掴み、思いっきり人参を引っこ抜いた。

 だが引っこ抜いた直後に目に入ったのは、左右に蝙蝠の羽のような突起物とジャック・オ・ランタンのような顔がついた人参だった。


『……えぇ?』


『ピキーッ!』


『ちょっえぇーっ! 逃げた⁉』


 最初こそ呆気にとられたナキだったが、その隙に人参がナキの手から逃げ出してしまった。

 人参が逃げ出すという予想外の展開に思わず声を上げる。

 だがそれだけではとどまらなかった。


『ピギーッ!』


『ピギャーッ!』


『ピギャギャッ!』


『ギャーッ! ひとりでに動き出した⁉』


 人参畑の畝から次々と人参達が飛び出して走り回るという超常現象を目の当たりにし、悲鳴を上げるナキ。

 一体何が起きているのかと困惑していると、懐に入っているカノンが話しかけてきた。


《ナキ〜、ここで育ててる人参、皆デビルキャロットだよ〜》


『デビルキャロット? なんだそれ?』


《ショクブツ型のマモノだよ〜》


《マナがほうふな場所で育てると、おいしいの~》


『人参ってマモノだっけ⁉』


 カノンや精霊達から人参が動き回っている理由が、デビルキャロットという植物型の魔物だと聞かされたナキは、自分の知る人参とかけ離れすぎていたためかなり困惑していた。


 それ以前に、植物型の魔物を見るのは今回が初めてだったためこんな形で遭遇するとは思っても見なかったのだ。

 ナキが困惑している間にも、村人達とデビルキャロット達による攻防は続いていた。


『そっちに一体逃げたぞ! 追え、追え!』


『やった捕まえた! 誰か袋持ってきて!』


『せーのっ! ……あぁ〜逃げられた〜』


『この、この、あぁもうすばしっこい!』


『……もしかして、他の畑でも毎回こんな感じでシュウカクすんの?』


 周りが当たり前のようにデビルキャロットを追いかけましている光景を目の当たりにし、他の野菜を収穫する時もこうなるのだろうかと思ったナキ。

 一人困惑したまま見ていると、アミが声を掛けた。


『ナキ君後ろからくるよ!』


『後ろ? うわぁっ!』


 背後からデビルキャロットがナキめがけて飛んできたため、驚いたナキは思わず炎の単体魔法〝フレイム〟を無詠唱で発動し消し炭にしてしまった。


『ちょっと! 今日のご飯のおかずになる材料を消し炭にしちゃダメじゃない!』


『仕方ないだろう⁉

 急に飛びかかってきて条件ハンシャで発動しちまったんだから!』


『イヤイヤイヤイヤ、デビルキャロットを捕まえる時は魔法は使わないのが常識だぞ!』


『そんな常識今始めて知ったよ⁉』


《ナキ〜見て見て〜、ノルンこんなにつかまえたの〜》


『なじむの早いな⁉』


 デビルキャロットを捕まえる際は魔法は使わないのが常識であり、いつの間にかノルンが触手を数本出してデビルキャロットを数体捕獲している事に更に困惑するナキ。


 ナキからすれば動き回る人参を素手で捕獲するという光景は、あまりにも非日常過ぎて納得がいかないというより受け入れがたいのだ。

 その間にもデビルキャロット達がナキの周囲を飛び回るため、条件反射で魔法を発動してしまう。


『だから魔法使っちゃダメだってば!』


『氷漬けも禁止よ!』


『ムチャ言うなよ!

 さっきみたく消し炭じゃないだけマシだろう⁉』


『ナキ君、これ使ったら捕まえやすいよ』


『虫取りあみ⁉ 本当にコレでつかまえんの⁉』


 アミから手渡された虫取り網を受け取ったナキは、デビルキャロットを虫取り網で捕獲する事になるとは思ってみず、更に困惑する。

 そしてナキが困惑している間に、懐から出てきたカノンや精霊達が率先してデビルキャロットを捕獲していた。


《まてまて~》


《つかまえた~》


《ナキ~ほめてほめて~》


《いっしょにヒトカリ行こうぜ!》


《ノルンもまたつかまえた~》


 ノルンやカノン達もなんの疑いもなくデビルキャロット達を捕獲していくため、ナキの中にある収穫作業のイメージが簡単に崩れ去り、冷静ではいられなかった。


『こ、こんなヒジョウシキ的なシュウカク作業があってたまるかーっ!』



*****



「……って事なんだ」


「かなりボロが出てるな」


 話を聞いていたクルークハイトは、自分に隠していた事を打ち明けて以降、ナキが大分ボロが出ていると思った。

 だがそれだけでナキがスパイを思われる理由が分からなかった。


「でも今の話だけじゃなんで間者と間違えられる事に繋がるんだ?」


「実は、オフィーリアはスターリットと交流があるみたいなんだ。

 それでこの辺りはオフィーリアのカンカツにあるカノウセイが高くて、きっとスターリットから俺のソウサク願いが出されてると思うんだよ」


「まぁ、子供一人が行方不明な訳だからな」


「それも町中でマホウを発動させてあばれるような、しかもショウカンされたイセカイ出身の問題児だ。

 はっきり言って一般の冒険者に依頼クエストできる事じゃない。

 なら、ダレが来ると思う?」


 冒険者以外で行方不明になった自分を誰が探しに来るのか、そんなナキの問いに対しクルークハイトは今までの会話内容を思い返し、一つの答えに辿り着いた。


「もしかして、オフィーリア帝国の騎士?」


「だと思う」


「それはちょっと、いやかなりマズいぞ。

 オフィーリアの騎士がナキを捕まえに来たとなったらディオール王国が異世界から召喚したのが皆にバレるのは勿論、この村に来る事にもなるから大騒動だぞ」


「そうなんだよ!

 そうなったら結果的に俺が原因になるから絶対間者と間ちがえられてせめられるかもしれないんだよ!」


 そう言うとナキは村の住人達に責め立てられるのを恐れるように頭を抱えた。

 元いた世界で理不尽な目に遭って来たナキにとって、やっと親しくなれた相手から責め立てられるのはとてつもない苦痛だ。


 なおかつ村の住民達がかつての故郷を追われる原因となったディオール王国に召喚された事を知られれば、弁解の余地もないかもしれないと恐怖していた。

 唯一事情を知るクルークハイトは、いたたまれない気持ちになった。


 ナキにとって疑われるという事がトラウマになっている事は理解していた。

 だが、このままナキの出自を隠し通せるとも思っていなかった。


「ナキ、あれから俺以外の誰かにも自分の事は話したのか?」


「してない。

 前にも言ったけど、イセカイの人間が来る事自体かなりめずらしい事らしいから、話したとしても信じてもらえないと思って……」


「一つ提案だけど、コレを機に村の皆にナキ自身の事を話すべきだと思うんだ」


 クルークハイトからの提案、それはナキが異世界から来た事を村の住人達に話してはどうかというものだった。


「話すって俺の出自の事を⁉

 ムリだよ、ダレも信じてくれないに決まってる!」


「でも、ずっと黙っててもルオさんとレーヴォチカが戻ってきたらきっとナキの出自についてバレると思う。

 だったら、そうなる前に自分から話した方が良いと思うんだ」


 村の住人達に自分の事を話す事を拒否するナキに対し、このまま黙っていてもいずれは知られるのがオチなのだから、いっその事全て話すべきだと進言するクルークハイト。


 話した方が良いのはわかっていたが、元いた世界の経験から、本当の事を話したとしても信じてくれないと思いこむナキ。

 そんな時、ナキの膝に乗っていたノルンが話しかけてきた。


《ナキ、ナキは何がこわいの?》


「え? 何って、そりゃあ信じてもらえない事だけど……」


《ノルン、ちゃんとおはなしたらいいとおもうの。

 村のひとたち、ノルンのおはなしちゃんときいてくれるよ?》


「ノルンの言う通りだよ。

 全員に話すのが無理なら人数を限定して話したら良いんだよ、ヴァンダルさんに話すのは?

 ヴァンダルさんは冒険者だし、異世界について何か知ってる筈だから信じれくれる筈だ」


 ノルンとクルークハイトからアドバイスを受けたナキは、確かにその通りだとは思った。

 だが、本当の事を話した所で信じてもらえるのかという不安の方が大きかった。

 そんな時、部屋の扉が不意に開き、部屋の外からランドが入ってきた。


「「あっ……」」


「……どうしてここにナキがいる?」


《ナキのソウダンゴト~。マドから入れてもらったの~》


 ランドが入ってきた事により硬直するナキとクルークハイト。

 ランドもまた、何故クルークハイトの部屋にナキとノルンがいるのかと困惑していると、代わりにノルンが理由を説明した。


「……窓から入ってくるほどの相談内容なのか?」


「え⁉ えっと、それは……」


 深刻な問題でも抱えているのかと遠回しにランドに聞かれたナキは、思わず顔をそらした。

 未だに自分の出自について話す事を躊躇うナキを見たクルークハイトは、軽く小突いてナキを急かした。


「ナキ、ほら」


「えぇ? 今言うのか?」


「今チャンスを逃したら、また先送りになっちゃうだろう?」


《ナキがんばれ〜》


《ファイト~》


《おーっ!》


 クルークハイトに急かされ、ノルンやカノン達精霊に励まされたナキは、意を決してランドの方に向き直った。


「実は、俺の事で話さないといけない事があるんだ。

 信じてもらえないかもだけど、きっと、この村の人達とも無関係じゃないはずだから」


 そこからナキは、ランドに自分が異世界から来た事からここに至るまでの経緯を事細かく説明した。

 ナキから話を聞かされたランドは、クルークハイトの方に目をやった。


「……クルークハイトは知っていたのか?」


「うん、ナキの容姿が変わる前の晩に全部聞いた。

 きっかけとしては、ナキが魔法の特訓をしていた時かな?」


「初めて大海たいかいの森でとなりの村の人達とクルークハイト達にコウゲキした事や、ショウカンされた経緯もあるから、いうに言えなかったんだ。

 ……ごめんなさい」


 そう言いながらナキは自分の事について黙っていた事を謝罪した。

 ナキの話を聞いて少々驚いてはいたものの、ランドは何処か納得したような様子だった。


「正直信じがたい、だが納得がいった。

 本来幼子でも知っている事を知らなかったのは、生まれた世界そのものが違ったからか」


「こっちの世界でのじょうしきは、俺にとってはひじょうしきな事だからどうしてもおどろいちゃうんだよ」


《ナキにとってはおどろきのれんぞくだったんだね〜》


《 《 《ね〜》 》 》


《でもでも、そのおかげで私たち、こうして出会えたよ》


 落ち込むナキに対しカノンはナキと出会えた事に対し素直な気持ちを伝えた。

 自分の顔に頬ずりをするカノンの言葉に励まされたのか、ナキは少しだけ元気が出たのか、そっと手を添えて御礼の言葉を伝えた。


「これから、どうするつもりだ?」


「とりあえず、少しずつでも良いから皆に話そうと思ってる。

 一方的に疑われたり、責められるのはもう嫌だから」


「流れで父さんに話す事にはなったけど、一番最初にヴァンダルさんに話すつもりだよ。

 きっと異世界について知ってると思うし、信じてくれる筈」


「とりあえず、今日はもう遅いからナキ君を帰した方が良いんじゃないかしら?」


「「いつの間に⁉」」


 ひとまずヴァンダルに話すという事が決まったため、ナキは一度フォディオの家に戻る事になった。

 その結果、いつの間にかクルークハイトの母親が部屋にいた事に驚く事になった。


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